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恋はみためじゃないよ  作者: 夢遥
9/9

恋はみためじゃないよ

ついに、今度は正真正銘の桐斗から告白に、すぐに返事が欲しいと言われて、千都の正直な気持ちをぶつけることに!!



返事が欲しいと言われて、あたしは心を落ち着かせ倉本君を真っ直ぐ見つめた。


「あ……あたしも、倉本君が好き」


やっと、自分の気持ちを伝えることができて、ホッとしたのか目頭が熱くなる。


「よかった~~~~~。本当は婚約解消してから、櫻井にいつ告ろうか迷ってたんだ。渡部の彼女だし、ためらってたのもあるけど………」


倉本君はあたしを抱き締めると、コツンと肩に頭を預けた。



倉本君の重みに、ドキンと心臓が飛び跳ねる。


「あいつと別れて、俺と付き合って。櫻井を誰にも渡したくない」


「ーーーーーー!!」


真剣に見つめられて、ますます心臓がドキドキと速い鼓動で高鳴った。


「正体をバラしたければバレせばいい。櫻井のこと失うほうが、俺にとっては重大だから」


倉本君はあたしの髪に手をやると、唇にキスをした。


そして、渡部君と別れる約束をしたのだった。





翌日、 さっそく休み時間に渡部君と話をしようと、クラスに顔を出したものの、姿が見当たらなかった。


「あの………渡部君は?」


渡部君と同じクラスの男子に訊いてみることに。


「あー、あいつなら体育の時間、怪我して保健室に行ったけど」


「え…………」


「体育の時間バスケやったんだけどー。何か、ぼんやりとしていてボールにまともに当たって。いつもの渡部君らしくないんだよな」


「…………………………」


確かに、渡部君らしくない。


とりあえず、保健室に行ってみよう。



急いで保健室に行ってみると、意外と渡部君は元気だった。


「千都ちゃんー!どうして、ここにいるってわかったの?」


「教室に行ったら、保健室にいるって訊いて………それより、怪我したって……大丈夫なの?」


「脳しんとうを起こしただけだから。少し休めば大丈夫だから!」


笑って見せたものの、少し頭が痛むのか顔をしかめた。


「それで、俺に逢いたくて来てくれたのかな?」


「………ちょっと、渡部君に話があって………でも、また今度にするね」



怪我して保健室で休んでいる時に、話すようなことじゃないよね……。




「話って、もしかして……昨日、先に帰ったこと?」


「…………う、うんーー」


急な問いかけに、とっさに嘘をついてしまう。


「先に帰ったのって、倉本が原因?」


「………………!!」


「昨日、千都ちゃんと倉本が一緒にいる所を見たっていう子がいるんだよね」


「ご、ごめんなさい。昨日は、先に帰って……この前の記者に後をつけられて、倉本君が助けてくれたの」


一応、つけられてたのは嘘じゃない。篠崎さんは味方?みたいだったけど……。


「なんだよ……また、あいつにいい所取られたのかよー」


がっくりと肩を落とす渡部君に、とても別れを切り出すことなん てできない。




教室へ戻ると、倉本君があたしの方を見ながら何か言いたそうにしていた。


「…………………………」


多分、渡部君と話はできたのかって言ってるんだよね?


あたしは、小さく首を振ると自分の席に座った。


あたしは、倉本君が好きなんだから、早く渡部君に言わなくちゃ………………。




でも、なかなか言うタイミングができず気がつけば、言おうとしてから3日が経っていた。


朝、あたしは重い足取りで学校へ向かう。


学校へ行くと、教室の前には沢山の人の群れができていた。


「ーーーー?」


何だろう?何かあったのかな……………。



あたしは、不思議に思いながら人の群れに近づいて行くと、群れの最後に涼香がウロウロしているのが目に止まった。


「おはよー、何の騒ぎ?」


あたしが涼香に声をかけると、うわずった声で返事が返ってきた。


「千都~、ビックニュースだよ!実は、倉本君はKiritoだったの…………!!」


「ーーーーーー!!」


どどどうして、バレてるのーー!?

まさか、渡部君がバラした!?


ハラハラしていると、呑気に倉本君が登校してきた。


いっきに、倉本君にみんなの視線が釘ずけに。


「だからか~~!メガネと前髪で隠してたの」


隣で、涼香が納得しながら呟く。


「倉本く~ん!おはよう。今日、よかったら一緒にお昼でも食べない?」


今まで接点がない子が、倉本君に話しかける。


「ずるーい!あたしも!」


周りにいた子や男子も、次々に倉本君のことを誘い始めた。


今まで、根暗とか散々、悪口言ってたのにコロッと変わるんだから!!


モヤモヤした気持ちを抑えながら、教室に入ろうとすると、


「ごめん!今日はお昼で帰るから!」


「あっ、Kirito!!」


倉本君はみんなから逃れるように、こっちに早足で来ると、あたしの手を掴むと廊下を走り出した。


「え……………っ、ちょっとーーーーーー!!」


あたしの声も届きもせず、倉本君に引っかれたまま、屋上へ上がって行った。



「はあはあ……………」


屋上につくと、あたしは息を切らせながら地面にへなへなと座り込んでしまった。


「大丈夫か?」


倉本君は心配そうに、あたしの顔を覗き込んだ。


「ど、どうしてバレてるわけ…………?渡部君がバラしたとか?」


でも、昨日はみんな普通だった……。渡部君がバラしたとしても、そんなにいっきに噂が広まるかな?


「……………多分、これが原因」


倉本君があたしの前に、雑誌を広げて見せてくれた。



そこには、この前の暴行事件の真実を示す記事が書かれていた。


あ、篠崎さん。ちゃんと本当のこと書いてくれたんだ…………。

でも、どうして、これと正体がバレるのが関係あるわけ?


あたしがキョトンとしていると、次を見てみろよと倉本君が1ページを捲る。


次のページは、学校での姿のメガネをかけた倉本君が写っていた。


「こ、これ……………!!」


驚いて倉本君を見ると、倉本君は静かに頷いた。


「多分、これが原因だな。でも、櫻井のことは載ってないし、ひとまず安心だけど」


「何が、安心なんだよ」


倉本君が、ふっーと溜息をついた時、何処からか声が聞こえてきた。



あたしと倉本君は、声をする方へ振り向くと、屋上の入り口のドアに寄り掛かりながら、渡部君が腕を組んで立っていた。


「みんな騒いでるぞ。お前と千都ちゃんのこと」


「…………………!!」


そうだ、さっきいきなり倉本君に手を掴まれて一緒に逃げてきちゃったんだ!!


「お陰で、こっちはいい迷惑なんだけど。そろそろ、千都ちゃんを俺に返してくれないか?」


渡部君の言葉に、倉本君はくっと笑うと口を開いた。


「俺の正体をバラさない代わりに、櫻井と付き合ってるんだってな。でも、正体がバレた以上、もう櫻井と付き合わなくてもいいんじゃないのかな?」


「ふっ……そんなの口実に決まっているだろ?」


嘲笑いするように、渡部君は挑発的な目で倉本君を見る。


「いくら、口実でも好きな子を困らせるようなこと、俺は許せない」


「何だよ………お前には婚約者がいるのに、千都ちゃんが好きだって………」


「婚約は解消した」


「はっ!?何だよそれ…………!!」


渡部君が倉本君の胸ぐらいを掴みかかった、その手には怒りが込められていた。


「わ、渡部君!」


ケンカになると思い、あたしは慌てて止めに入ろうとした。


「そんな簡単に、解消して千都ちゃんの気持ち考えたことあるのかよ!?」


「………………………………」



倉本君は若菜ちゃんも両親も説得したって言っていたけど、こんな簡単に婚約解消したことに自分を責める気持ちもある。



「考えたよ………でも、どうしても自分の気持ちには嘘はついて婚約するなんてできない」


辛そうに倉本君は、唇を噛み締めた。


「何だよ…………バカバカしい!」


乱暴に倉本君の胸ぐらを離すと、渡部君は空を見上げる。


「あ~あ、まだ千都ちゃんもお前のこと好きみたいだしな………仕方ないから、別れてやるよ。その代わり、千都ちゃんのこと泣かせるようなことがあったら、遠慮なく奪うからな!」


「渡部君…………………」


あたしがまだ、倉本君のこと好きだって知って

たんだ………。


「渡部………………」


申し訳なさそうに、倉本君は目を瞑る。


「おじゃま虫は退散しますかーー」


そう言うと、しょんぼりと手をひらひらさせながら、渡部君は階段を降りて行った。


渡部君がいなくなると、倉本君はあたしの顔を覗き込む。


「まだ、櫻井が俺のこと好きみたいとか、さっき、あいつが言ってたけどー、いつから俺のこと好きだったのかな~?」


「……………っ………」


突然、訊かれて恥ずかしさのあまり、頬が赤くなっていった。


「いいのいいの~、わかってるって!だから、正体がバレないように自分と引き換えに、俺のこと守ってくれたんだ~?」


「ベ……別に……そういう訳じゃ………」


つい、可愛くないことを言ってしまうあたしを、倉本君は優しく抱き締めた。


「俺は……櫻井に逢った時から君のことが好きになってたのかも知れない。だから、あいつと付き合い始めたって知った時、嫉妬もした……」


「ーーーーーー!!」


「でも、今はもっと好きになってる。誰に渡したくない。だから、俺の彼女になって………」


倉本君の真剣な声に、あたしはこくりと頷くと、背中に手を回した。


「よろしくお願いします」


そして、あたし達は熱いキスを交わした。


「今日から大変だけど、絶対に君のこと守るから」


長いキスの後、倉本君はあたしの耳元で囁いた。


あ………そうだった。


さっき、渡部君が下で騒ぎになってるって言っていたことを思い出す。


絶対、学校中 大騒ぎになってるよね………。


あたし達は、覚悟を決めてみんなの所へ戻るのだった。











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