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恋はみためじゃないよ  作者: 夢遥
8/9

恋はみためじゃないよ

桐斗の暴行事件が週刊誌に載ってからというものの、学校周辺に記者がうろつくようになってしまった。

でも、運悪くその記者に捕まってしまい、桐斗に助けられるけど………!?

翌日、学校へ行くと教室に入ろうとしていたあたしを、渡部君が呼び止めた。


「千都ちゃん、おはよー!」


「渡部君……………」


「いや~、昨日は参ったよ。あの記者がしつっこくてさー」


「…………まさか、正体バラしたりしてないよね?」


渡部君を残して来ちゃったのが気がかりだったんたよね……。


「安心して、何とか誤魔化したからー。でも、あの記者、倉本のこと根掘り葉掘り訊いてきたから、バレるのも時間の問題だなーー」


「ーーーーーー!!」


やっぱり、そうだよね。あの時、助けてくれなかったら、バレなくてすんだかもしれないのに…………。



「それよりさーー」


何か言いたそうな顔で、あたしの腕を掴むと廊下を通り抜け、誰もいない視聴覚室へ連れて行かれた。


「な、何………。急にこんな所に連れてきて」


あたしは、渡部君の手を振りほどいた。


「あーあ、昨日はさすがに傷ついたな~。倉本と一緒に逃げちゃうんだもん」


「ご、ごめん………。あの時は、倉本君が無理矢理………」


「無理矢理ねー。で?その後はどうしたの」


「その後って………べ……別に………若菜ちゃんが来て倉本君達は先に帰ったけど……」


急に倉本君に抱き締められたことを思い出して、赤くなる頬を隠すように俯いた。


「へー、婚約者が来たんだ?」


「う、うん」


昨日、仲良く歩いて帰る倉本君達を思い出すと、胸の奥がチクンと痛む。


「千都ちゃんさー。俺の彼女なんだから、婚約者がいる男のこと考えてると、妬いちゃうなー」


「…………………………」


「他の男のことを考えるなら、お仕置きしないと」


そう言って、渡部君はあたしの顎を掴むと軽く唇を奪った。


「ーーーーーー!!」


キ キ キ キスされた!!!


倉本君に意思がないのにキスするんだ?なんて、あんなこと言っておいて、こんな状況有り得ないんだけどー!!


「お、お仕置きって、キ、キスとか有り得ないよ!」


「は?大体、俺達付き合っているんだし、キスだって普通だろ?」


「な、何いってるの?まだ、付き合い始めたばかりなのにこんな……」



渡部君は、戸惑うあたしの顔を覗き込むと、ぎゅっと抱き締めた



「や、やだ、離して!」


あたしは、渡部君の胸元を押し返そうとしたけど、力では勝てるわけもなく、結局は渡部君の腕の中に身体を預ける形になってしまった。


「………俺と付き合ってくれないと、アイツの正体をバラすなんて言ったけど、本当はそんなの口実で真剣に千都ちゃんのこと好きなんだ。だから、絶対にアイツには渡さない!」


「や、やだなぁー。な、何言ってるの……?倉本君には若菜ちゃんがいるのに」


渡部君の真剣な告白に、あたしの心臓が激しく波打つ。


「…………そ、そうだよな………。俺から、千都ちゃんを奪うなんて有り得ないかー」


身体を離すと、渡部君は苦笑いする。


「あ、あたし………そろそろ、教室に戻らないと………」


視聴覚室から出ようと、ドアに手を伸ばした時、渡部君があたしの腕を掴んだ。


「帰り、迎えに行くから」


「え?う、うん………」


躊躇しながらも頷いくと、視聴覚室を出た。





「櫻井、これを先生に渡しといて」


「え?今日、日直じゃないんだけどー」


教室へ戻ると、倉本君からノートを渡されて、あたしは返そうとしたけど、メモが挟まっていることに気づいた。



何だろう?このメモ………。



そっと、メモを覗くと、


『今日、一緒に帰れるか?』


と、書いてあって、あたしは驚いて倉本君の顔をみた。



「ご、ごめん……。今日も渡部君と………」


誰にも気づかれずに、あたしは小声で倉本君に言う。


「………分かった」


何か言いたそうな顔で、倉本君はあたしから目を逸らした。


「…………?」


昨日から、倉本君の様子がおかしいことに、あたしは戸惑いを隠せないでいた。




放課後ー。

渡部君のクラスに顔を出すと、渡部君が申し訳なさそうな顔で

廊下に出てきた。


「ごめん、千都ちゃん!日誌を先生の所に置いてくるから、昇降口で待ってて」


急いで職員室に向かう渡部君を見送りながら、あたしは先に昇降口で待っていることにした。


本当は、倉本君の誘いを断ってまで、渡部君と帰るなんて心苦しい。


でも、教室を出る時は倉本君いなかったし、もう帰ったのかも知れない。


そう思っていたのに、誰もいなくなった靴箱の陰で、いないはずの倉本君の姿が瞳に映った。


「ーーーーーー!!」


気まずさと嬉しさが交わる気持ちのまま、その場に立ち尽くしていると、倉本君があたしに気がついて振り向いた。


「………………」


倉本君は、あしの手をを掴むと昇降口を出て行こうとした。


「ちょ、ちょっと待ってよ!渡部君と帰る約束が……………」


慌てて倉本君を止めたけど、


「やっぱり、アイツと一緒には帰らせたくない」


あたしの腕を掴む手に力がこめた。


「………………………」


それって、どういう意味??

でも、これ以上、一緒にいると若菜ちゃんに罪悪感でいっぱいで、胸が張り裂けそうなくらい辛くなる。



そんなあたしの気持ちを知るよしもなく、倉本君は手を引いたまま、校舎の裏口へ連れ出した。



「今日は、裏から帰ったほうがいい」


道路の方をキョロキョロ見渡してから、ホッと安心したように一息つくと、倉本君はあたしの手を引いて裏口から出た。


「………………………」


もしかして、記者からあたしを守ろうとして、一緒に帰ろうと言ってくれたの?



あたしの心臓が、ドキドキと跳ね上がる。



しばらく、倉本君は何も言わずに手を引いたまま歩いていた。


「……あ、あの。倉本君……………」


あたしの呼びかけに、倉本君はハッとして振り向くと、


「あ………、悪い。手、痛かったか?」


慌てて、あたしから手を離した。


「ううん。そうじゃなくて、倉本君仕事あるなら、ここから独りで帰れるから……」


「あるけど、仕事の時間は、まだ大丈夫だから。家の近くまで、送る……………」


「で、でも……これ以上、倉本君と一緒にいたら若菜ちゃんに悪いし……………」



この前も、若菜ちゃんに睨まれたような気がする。


「俺が櫻井を送って行きたいのに、若菜には関係ない」


「……………!!で、でも、そういう問題じゃ……………」


いちいち倉本君の言葉に反応してしまう。


昨日から、倉本君の様子が変だよーー。




すると、倉本君があたしの手を引き、建物の陰に連れて行くと腕の中に抱き締めた。


「ーーーーーー!!く、倉本君………………?」


ドキドキと響き渡る鼓動を落ち着かせながら、倉本君の胸元を押し返そうとした。


「櫻井のこと心配なんだ!また、昨日の記者に着けられて怖い思いをするんじゃないかって………」


「だ、大丈夫だよ。倉本君の助けを貰わなくても、何とか逃げるから………それより、若菜ちゃんが、婚約者だってバレたら報道陣に追いかけられたりしてないの?守ってあげたほうが…………」


まだ、バレてはいないみたいだけど、そのうちバレるのも時間の問題だろう。


「だから、若菜はもう関係ない」


「どうして?婚約者なのに、そんな言い方…………………」


ムッとしながら、倉本君の顔を見ようとした時、いきなり唇を塞がれて、突然のことにあたしの頭の中は真っ白になってしまった。


「んっ…………っ……………」


キスをされて訳が分からずにいると、やっと倉本君が唇をを離した。


「ど、どうしてこんなこと……………」


最初は正体がバレて、隠す為の口封じのキスだった。

でも、今のは…………?



「櫻井のことが、好きだからキスしたに決まってるだろー!それに、若菜若菜って……もう、婚約解消したんだから、それ以上言うなよ」


「えっ………………」


あたしは驚いて、呆然と倉本君を見つめる。


婚約解消したーー!?


「前にも言ったけど、勝手に親が決めたことだし…………」


「で、でも………………………」


あんなに、倉本君のこと好きなのに、そう簡単に諦めるとは思えない。


「………親も若菜にも、何とか説得してわかってもらえた」


「どうして、急に……………」


訳が分からず、言葉に詰まっていると倉本君は真剣な瞳で、あたしの肩をを掴んだ。


「仕方ないだろ!若菜より、櫻井のほうが大切なんだからーーー!」


「ーーーーーー!!」



「櫻井を誰にも渡したくない」


そう言って、あたしを抱き締める倉本君の腕には力がこもっていた。


「倉本君……………………」


嬉しさのあまり、倉本君の背中に手を回した時だった。



カシャッー!!


カメラのシャッター音に、あたしと倉本君はハッとして慌てて身体を離すと音がした方へ目をやった。



すると、そこには、篠崎さんがカメラを構えて立っていた。


「おっと、見つかったかー」


バツ悪そうに、こっちに近づいてくる篠崎さんから、あたしを背中にかばいながら、倉本君はキッと睨み返した。


「そんな怖い顔しなくても」


苦笑いする篠崎さんは、素早く倉本君の眼鏡を顔から外した。


慌てて顔を背けたものの、倉本君の顔を覗き込む篠崎さんはビンゴ!と言う顔で口笛を鳴らした。


「やっぱり、Kiritoだったか」


「ーーーーーー!!」


とうとうバレてしまった。


あたしが、慌てふためいていると、倉本君は開き直ったように顔を上げた。


「やっぱり、ばれてたかーー」


「俺の目を誤魔化そうとしても、無駄なことだな」


篠崎さんは、嘲笑いするように倉本君をみる。


「そんなことより、今、撮ったフイルムをこっちに渡してくれませんか?」


倉本君は、篠崎さんをキッと睨みつけるとカメラを奪い取ろうとした。


「おっと!それは、無理な願いだなー」


倉本君から、ヒョイっと身体を躱した。


「俺はいいけど、この子は何も関係ないんだ。だから、そのネタは好評しないでくれませんか?」


必死に頼み込む倉本君に、胸がキュンとしてしまう。



篠崎さんは顎に手をやった後、口を開いた。


「彼女は関係なくはないでしょ?こんな所であんなこと、してたんだから」


「ーーーーーーー!!」


まさか、キスしてた所も見られてた!?


恥ずかしさのあまり、顔から火が出そうになる。



「ーーーもしかして、暴行事件を起こしたのも彼女の為じゃないのか?いや、違いな……彼女を守ろうとして、一方的に相手に殴られたのが正解かな?」


「えっ………………」


どうして、篠崎さんがそんなこと知ってるんだろうーー。


最初は倉本君も驚いていたけど、気を取り直して口を開いた。


「あんた、いったい…………………」



「俺は、あの記事は何か不審な点があるような気がして、調べていたんたよねー。そうしたら、目撃者の証言と記事の内容に食い違いが出てきたわけ」


篠崎さんは小さな溜息をつくと、話を続けた。


「だから、真実を追求する為に直接本人に取材しようと思ってたら、わざわざそっちから現れるし、手間が省けたよ」


「…………………………」



じゃあ、篠崎さんは味方?なのかな……………。


「で、目撃者の証言通りで、いいのかな?」


「ああ…………。彼女が、柄の悪そうなヤツらに絡まれて助けようとしたら、一方的に殴られたんだ」


倉本君は、真剣な表情で篠崎さんに証言した。



篠崎さんは納得したように、手帳を鞄から取り出すとメモし始めた。



倉本君の話が終わると、篠崎さんは静かに手帳を閉じる。


「じゃあ、このことは記事にするから、楽しみに待っててくれ」


そう言って、立ち去ろうとした時、


「あ、あの………。彼女のことは秘密にしておいてもらえますか?また、怖い想いをさせたくないんで!」


「ああーー」


倉本君の言葉に篠崎さんは、手をヒラヒラさせながら、さっさと行ってしまった。



「本当に、大丈夫かよ……」


倉本君は、心配そうに溜息をつく。


「で、でも、よかったね。これで、倉本君が暴行事件を起こしてないって証明されるんだから」


あたしは、安心してへなへなと地面に座りそうになったのを、倉本君は優しく身体を支えてくれた。


「大丈夫か!?」


「う、うん…………」


倉本君の腕に支えられながら、体勢を整えようとした時、


「櫻井………………」


また、倉本君の腕の中にあたしは抱き締められていた。


「く、倉本君………もう、大丈夫だから…………」


戸惑いながら、倉本君の腕からすり抜けようとした。


「また、櫻井が怖い思いをしなくて、よかった~~~~~」


「…………………倉本君…………」


その言葉に手の力が緩んで、いつの間にか倉本君の背中を摩っていた。


「ごめん。櫻井のことになると、冷静じゃいられなくなる」


「え………………」


「あ~~~、何言ってるんだ俺は………櫻井には彼氏がいるのに」


あたしから身体を離すと、恥ずかしそうに手で顔を覆った。


「………渡部君は別に……秘密を守る為に、付き合ってる…………」


途中まで言いかけて、あたしはハッとして口を抑えた。


「秘密……… ?秘密を守る為に付き合ってるって…………どういうことだよ!?」


倉本君に肩を掴まれてつい、たじろいてしまう。


「く、倉本君……痛いっ……………………」


「ごめん…………でも、本当にどういうことだよ?」


気持ちを落ち着せると、真剣な瞳であたしの顔を覗き込んだ。


「…………わ、渡部君に倉本君の正体がバレてから…………………」


あたしは、倉本君の秘密守る代わりに、渡部君と付き合うことになったことを説明した。




「はぁ~~~。何だ………全部、俺の為かよ…………」


あたしの説明が終わると、倉本君は安心したように大きな溜息をつく。


「てっきり、あいつのことが好きで、付き合ってるのかと思ったーー」


「えっ、違う違う!好きとかじゃないから」


「ーーーじゃあ、俺のことは?」



さっき、倉本君に告白されたことを想い出して、心臓がドキドキと高鳴る。


「最初は、賭けで櫻井に告ったこともあったけど、今度は本気だから。櫻井の返事が欲しい」


真剣な眼差しで見つめられて、あたしは胸が熱くなった。






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