第1話 吸収合併
これよりシリアス度が下がります。ご注意ください。
ラウ村に戻ってからアキたちは2グループに分かれ行動した。
1つ目のグループは移住準備組。ほとんど引っ越しの準備は終わっていたのだが、バサラの言う海の民たちのいる場所までの所要時間が正確には分からなかった。
そこで安全を期すため、ナディアやバサラを伴って工作隊が森に簡単なセーフハウスを造りに出かけた。
2つ目のグループは食糧配布組である。子爵の屋敷から食糧を奪取したアキたちで「あったが、やはりその量はとてつもなく今回合流した奴隷解放組とラウ村の皆を合わせても100人を少し超える程度の人数では消費する前に腐らせてしまう恐れが高かった。
そこでコウらが把握している限りの近隣の2つの獣人族の村に食糧を配布に回っていったのだ。
だがそこで厄介ごとというのは舞い込むものだ。
「あの子らを引き取っていただくわけにはいかないでしょうか?」
1つ目のラウ村の南の村の村長からのお願いだった。
税が高く設定されていたことで、村で餓死するものもおり、身内がいない子がいたのである。アキらの援助でしばらくは暮らせるが、村として孤児をいつまでも食べさせていける保障も無かったのだ。
「2つ条件があります。」
コウに同行していたアキがおもむろに口を開き、ずっと被っていたフードをとる。
「人族!?」
村長は腰を抜かす。村人にとって人族とは税を取り立てに来るだけの生き物である。アキの姿を見た村長は理解が追いつかなかったのだ。そんな村長を無視して、
「1つ目は人族である俺を含めた多民族の村であることを了承すること。2つ目は子供らが本心から行きたいと思うこと。以上です。あの子らを連れてきてもらえますか?」
腰を抜かしたままの村長は遠くからこちらを窺っていた子供たちに手招きする。7人の子供が恐る恐る近づいてくる。
「なんだ!おまえひとぞくか!?」
茶色の熊耳を生やした小学生ほどの男の子がアキに食って掛かる。恐らく子供グループのリーダーであろう。コウも苦笑いを浮かべて見学している。
「ああ。人族だ。でも俺はいい人族だ。」
「なんだそれ?ひとぞくのせいでおれのままはしんだんだぞ!」
「そうか…。残念だね。俺も人族にばあちゃんを殺された。」
アキがそう告げると村長を含めて子供が言葉を失くす。ほんとう?といった視線をとどもたちがコウに向けるとコウは黙って頷いた。
「それに俺の母さんはネコ人族だし、妹は白虎人族だ!」
「「「「「白虎人族!!!!」」」」」
皆のハモリにコウらが軽くのけ反る。
「それは本当ですか!?」
食いついてきたのは村長だった。アキに掴みかかって体を揺らしてくる村長。感情の起伏にアキは付いていけない。
村長によると一部の獣人族の間で白虎人族はヒーローのように語られる伝説の存在で、語り部などは救世主と謡う語り部もいるとか。
「はい、本当ですよ。この間も村の子と鬼ごっこしてましたし。」
頭を揺らされ続けているアキに助け船をだしたのはコウだった。
「「「「「「白虎人族と鬼ごっこ!?」」」」」」
「そんちょー、おれこのひとぞくについていくわ。」
「じいちゃんばいばい。」
子供らは食糧を積んできた荷車にすでに乗り込んでいた。
「えっ!?チョロ!!」
コウである。
「待て!!儂も行くわ!!」
「おい!村長!!お前もかよ!?」
コウである。
こんなやり取りを繰り返し、結局南の村全員がラウ村に合流して新天地へ赴くこととなった。
大量の食糧が北から南へ往復しただけである。
いや、帰りは子供らと村長が荷車に乗っていたので、少し違うが。
「おい!村長!!お前もかよ!?」
コウである。
アキの身体強化魔法がフル活用させたのは言うまでもない。
一度ラウ村に戻ったアキらはとんでもない光景を目にする。
「「「「ありがたや~。ありがたや~。」」」」
「はっはっは。みなイズモにひれふすがいいのです。」
岩の上に立ち木の棒を掲げ腰に手を当てるイズモとそれを拝める南の村の一同だった。
「コウさん、なんとかして下さい。」
「いや、アキ。いくらなんでも無理だ。むしろ嫌だな。」
「コウさん、なんとかして下さい。」
「無視か!?」
コウの立ち位置が何となく決まった瞬間だった。
「あっ!にいに!みてみて~。わたしこぶんがたくさんできたのです。」
駆け寄ってくるイズモ。
「コウさん!!」
アゴをくいっと信者に振り、なんとかしろとアピールするアキ。
「いや、むりだ。そもそも君は俺を一体どうい「アキ殿!!我々南の村一同はイズモ様の兄上であられるあなた様についていく所存!!」」
「邪魔すんなや!!」
コウのツッコミをカットし、割り込んできた信者たちにコウは声を張り上げ抵抗する。
「邪魔すんなや…と。コウさん欲しがりますね…」
ニヤッとするアキ。それに遅れて信者一同もニヤッとする。
「そういうことじゃねぇよ。それに信者ども!!おまえらの{ついていく}はそういうことじゃねえだろ!!」
おお~と一同から拍手が上がる。
「えっ!?いやっ、そ、そんなにか!?」
コウもまんざらでもない様子だった。
「ねえ。にいに。どういうこと?」
一通り場が盛り下がったところでイズモが疑問をぶつけてくる。
「イズモちゃん。南の村の皆がアキに村長になって欲しいんだと。」
「ほんとう?」
首を傾げて聞いてくるイズモ。
「でもコウさん。ジンさんの息子はあなたじゃないですか。」
「そうだな。でも俺じゃこんなにもの人数を守り切れる自信がねえ。だからアキ。お前がやれ!お前だってリリさんの自慢の孫だろ?」
「…そうですね。わかりました。」
「わぁい!にいにがそんちょーだ!」
十字架を背負って進む。自分で誓ったことだ。奪った命の分まで命を守る。アキは決意を新たにし、イズモの髪を撫で続けるのだった。




