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天気予報

「黒咲 猫架」ですお題小説お久しぶりです

ゴメンナサイ、第一号です……

「寒い!!」

家に出た第一声がこれ。仕方ないですよ寒いんですもん。

まだ暦的には秋であるはずで、紅葉が終わり葉が散るのを楽しむ季節…で、あるはずなのに

紅葉始まったばっかりで、おまけにもう葉が散り始めている。

…葉桜もなにもないなと思った瞬間だよ。

いや葉桜て緑の葉のことだけど、桜の葉の紅葉模様も私葉桜であると言えると思うの。

緑色だけが綺麗だと思うなよ。

私は真ん前にそびえたつ桜の木をじっと見つめた後、大きく第一歩を踏み出した。

もう北風が冷たくて、日が出てようと関係ない。誰に対してもデレを見せてくれない北風さんは嫌いだ。

「…学校行きたく無ーい…」

口角を若干上げ、眉を下げるという、所謂苦笑いを浮かべながら、スクールバックを肩にかけ直し、駅までの長い長い一本道を進んでいく。

急いでいるのか、時計とにらめっこしながら走っていくサラリーマンや、電話をかけながらあたりを見渡している女性さん。…お仕事って大変だ。

みんなせわしなく動いている時間が、私はあまり好きでない。時間に余裕をもって出てきているけど、急がなければいけないという錯覚を起こしてしまい、予定時間より10分ほどいつも早くついてしまうからだ。

なんでそんなに急ぐのだろうか。余裕をもって準備を進めていけばそんなこと無いんだろうなとか思っていても、結局そう思えるのは今の時期だけなんだろうなとも思う。

「…もう11月だもんなぁ」

高校二年生の季節ももう終わってしまう。次に来るのは受験という壁だ。

正直進学したくない。勉強なんてもうしたくないっていうのが本音だから。

でも、そう言ってられないのが世の中だという事も分かってる。本当世の中って理不尽だよ。好きなように行かせてくれるけど、好きな場所に就職させてくれないんだもん。できたとしても進学の違いで給与変わるとかね、おかしいよ。頭の良さで決まらないこともあるっていうのにね。

もう周りの子たちは一般試験に向けて予備校に通い始めたりしてる。将来の夢に向かって走っているというか、そんな感じがして、羨ましい。

口元を覆っていたマフラーをどかして、息を吐いてみる。

自分の真っ白な息がはかれ、消えていくのが見えて、小さく口角を上げた。

自分の進路について考えてると、心から冷たくなってく感じがする。実際はそんなこと無いんだろうけど、一本道の最下位が私で、ほかの皆は私より前に行っているような感覚。

「…さむ」

開けていたマフラーの隙間から風が入り込んで、おもわず身震いをする。

全てなんとなくで決めてきた私にとって、選択ってものすごく面倒だし、ものすごくしたくない。

未来に囚われたくないっていく考え方はおかしいのかな、周りに合わせない生き方だってあると思う。

でも、その言葉は絶対に先代の人には届かない。

それで成功しなくて苦しんできた人を見てきているから、だと思う。

思わず、せわしなく動いている人々をかき分けるように駆け出す。

頬に風が当たって冷たいし、足の感覚もなくなってきた。

「…だからっ、てさぁ…!」

スクールバックをまた肩にかけ直し、上がった息を整えるように声を出す。

「自分たちの生き方、…を、…強制、すんなよ…」

足がもつれそうになり、慌てて右足を出して踏ん張る。

上がった息を整えるように前を見据える。もう校舎は真ん前だ。このまま踏み出せばいつも通りの生活がいつも通りに始まるだろう。

いつもの春のような陽気の暖かさに。でも、何故だかもうしたくなかった。

「それがお前の答えなら良いんじゃね、卯月きさらぎ

「…仲田、先輩…」

不意に聞こえた凛々しい声に隣を向けば、たれ目が印象的な、私のあこがれる先輩が立っていた。

自分の夢に突っ切っていって、親の反対を押し切り、自分だけで自分の夢をかなえに行った人。

それが私にとっては、ものすごく主人公っぽく見えて、いつもスポットライトが当たってるんじゃないかって思うほどに、先輩の顔はいつも輝いていた。

「…泉州。」

「……えっ」

先輩はこちらを見ないまま、校舎を見据えたまま、先輩の今行っている大学の名前を口にした。

先輩の夢をかなえた大学の名前だったから、私はちゃんと名前を憶えていた。

泉州大学専門文学専攻学科。有名な人がたくさんでて、道を積むならまずそこから、なんて言われている学校。

私には喉から手が出るほどには欲しい名前。行きたい学校。

「来いよ、泉州。卯月が頑張るなら推薦書、俺の名前を書く」

「仲田先輩!?」

「…お前1年の頃言ってたろ、”大学行けて、終わったら先輩のアシスタントになるんです”って」

確かにそんなこと言った記憶が隅のほうにあるけど、まさか先輩に覚えられているとは…。

あの時は結構真剣に言って周りに笑われたことは覚えている。

「だったらこい、泉州」

「…せんぱっ」

「だから今ここに俺がいる。今日までだろ進路希望」

……さすが先輩、先輩なだけあった。

そう、今日までの進路希望、私はまだ白紙。それを知っていたのかまでは分からないけど、きっとわかっていたんだろうなとなとは思う。

私の学校ではボールペン厳守であるから。

先輩に手をつかまれ、ずるずると引きずられるように校舎内へと連れていかれる。

先輩の手は暖かかった。まるで冬じゃないみたいに


【本日の天気は晴れ。お昼頃からは気温が上がる為、寒暖差が激しくなると予想されますので、コートなど防寒具の持ち運びは必要でないかと思われます……】

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