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週間 魔法少女  作者: 美作美琴
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第2話 第2号 特別付録『マジカルカードリーダー』


「ぬいぐるみよ!浮きなさい!」


ベッドの上に乗っていたクマのぬいぐるみがツバサの振るう魔法のタクトに操られ宙に浮く。

一週間前、創刊号を買った直後に実践した時は小さな消しゴムや鉛筆が僅かに震える程度だったのを考えると差は歴然だ。


「随分上達したでありんすね」


白リスのユッキーが手を叩く、だが小さい掌なのでほとんど音はしないが…


「もちろん!一生懸命頑張ったもん!」


少し興奮気味に話すツバサ、満面の笑みだ。


「よ~し!次はもっと大きいあのクッションを浮かせちゃおう!」


調子に乗ってタクトをクッションに向ける。


「クッションよ!浮きなさい!」


………クッションは微動だにしない。


「あれ?浮きなさい!浮きなさい!…浮いて~~」


ツバサがタクトをいくらブンブン振り回しても結局クッションは浮かなかった。


「おっかしいな~電池でも切れた?」


おもちゃではないからそれは無いだろう…

小首を傾げタクトを眺めてみるが特に変わった所は無い様だ。


「タクトの使用期限が来たでありんすよ」


「え?これ使用期限なんてあったの?」


ユッキーの方を振り返る。


「そもそもそのタクトは初心者練習用の物でありんすから」


「ふ~ん…そうなんだ…」


ベッドに腰掛け、とても残念そうに俯くツバサ。


「ツバサはもっと魔法を使いたいでありんすか?」


ユッキーがツバサの膝にちょこんと乗っかり聞いて来る。


「うん!もっと使いたい!もっと別の魔法も使ってみたい!」


両手の拳を胸の前でギュッと握る。


「では、これから本屋に行くでありんす」


「どうして?」


「今日は『週刊 魔法少女 第2号』の発売日なのでありんす、


付録には次のステップに進むためのアイテムが付いて来るでありんすよ!」


それを聞いてぱあっと花が咲いたように明るい笑顔になるツバサ


「本当?!分かった!今すぐに本屋さんに行こう!」


いきなり立ち上がりユッキーを鷲掴みにすると、ショルダーバッグに突っ込み


大急ぎで部屋から飛び出した。




「え~780円?280円じゃないの?」


店先で本を手に取り驚くツバサ、本の厚さも創刊号の半分くらいしか無いものだから尚更落胆したのだ。


「創刊号が安かったのは特別価格だったからでありんす、これからはこれ位の価格帯で刊行されるでありんすよ」


ショルダーバッグからひょこっと顔を出し小声で説明するユッキー

しゃべるぬいぐるみが他人に見つかる訳にはいかない。


「高くても…うん…仕方ないよ、魔法を続けるためだもん…」


自分に言い聞かせる様につぶやき本をレジに持って行った。




「これは…タブレット?」


早速部屋で本を開く、第2号の付録は片手に収まる位のタブレット状の物だ

マジックアイテムだから本当にそうなのかはまだ判らない。


「それは『マジカルカードリーダー』でありんす」


「どうやって使うの?」


ユッキーは付録の箱からプリペイドカードによく似たカードを取り出した。


「このカードには魔法を使うために必要なポイントが入っているでありんす、ほらここに数字が書いてあるでやんしょ?」


カードには『1000』と書いてあった。

ユッキーはカードをツバサに手渡し


「では、早速このカードをさっきのマジカルカードリーダーにかざしながら『出でよ!マジカルステッキ』と唱えるでありんす」


と促す。


「うん!やってみるよ!『出でよ!マジカルステッキ』!」


カードをカードリーダーに当てた途端、


『カキーン!ハイリマシター!』


と、妙にハイテンションな電子音声が鳴り響き、カードリーダーの画面から上方向に光が放たれ、その光の中に何か棒状の物が徐々に形を成していく…

そして完全に実体化したそれは正に魔法少女が持つにふさわしい形…マジカルステッキとして現れた!

純白のその杖は全体的に小さい宝石や星形、ハート型の装飾で飾り立てられていて、下部の手で握るグリップ部分は指にフィットする様な形をして滑りづらい素材で出来ていた。

そして上の先端は円形で両端に羽根飾り、中心に透明な宝石が嵌っている。


「ほえ~…これは凄いね!!」


手に取り、嘗め回す様に色んな方向からステッキを見回すツバサ。


「今からそのステッキがタクトの代わりになるでありんす」


カードの数字が『500』に減っていた。


「さて、次はお前様の変身後の名前と属性を決定するでありんす」


「え~と、私はね~…」


色々想像を巡らせるツバサ。


「悪いけど自分で好きな名前には出来ない決まりでありんす、今からガチャを回す事でランダムで決まるでありんすよ」


「え~?何それ~!!」


口をアヒルの様にとんがらせて不満を漏らす。


「ステッキのグリップよりちょっと上にカードリーダーをセットしてもう一度カードをかざすでありんす」


「うん…」


ユッキーが言う様にマジカルステッキにはカードリーダーを嵌めるための細工があった

そこに取り付け、カードを読み込ませる、すると画面に『名前&属性ガチャを回す』と言う項目が現れたので、そこを指で触れる。


『スタートゥ!』


またしてもおかしなノリの電子音声が叫ぶ。


『ダラララララララララ…』


続いてドラムロール


画面上をスロットマシーン宜しく色んなワードが上から下へ高速で流れていく。


『カシャン!カシャン!ドキューン!!』


派手な効果音と共にワードが止まり名前が出来上がった様だ。


『ウイング・オブ・エターナル』


「これがお前様のマジカルネームでありんす、いい名前でありんすな」


「へぇ~!カッコいいね!ウイング…私の名前が英語で入ってるんだ」


さっきまでは不満げにむくれていたツバサであったが満足した様だ。


「これは偶然でありんす、運が悪ければ意味不明のワードの組み合わせになることもありんすよ」


そして属性は…『風属性』!


「風属性は主に風や気象を操る魔法が得意なカテゴリーでありんす」


「空飛んだりとかは!?出来るの?」


瞳をきらめかせ期待の表情のツバサ。


「もちろん、可能でありんす」


「やった~!!!」


万歳して大喜びする。


「じゃあさっそく試そうよ!」


勝手知ったる何とやら…ツバサはステッキにカードをかざし「変身!」と唱える


……しかし何も起きない…


「あれ?なんで?どうしちゃったのかな?電池切れ?」


何故最初に電池切れを疑うのか…


「今のままでは魔法はおろか、変身もできないでありんす…」


ユッキーの声のトーンが一段落ちた様な気がした。


「カードの残りポイントを見てくりゃれ」


ツバサがカードを見ると、ポイントを示すカードの数字は『0』になっていた。


「ポイントが無いとダメなの?」


「そう…今回のステッキと名前、属性決定はサービスでありんしたけど…」


「ここからは有料になります」


ユッキーが何故かこの時だけ語尾がまともだった。




「有料?!お金が掛かるって事?!…そんな~!!」


折角立派なマジカルステッキと素敵なマジカルネームを手に入れたのに、肝心の変身が出来ない、魔法が使えない…こんな切ない状況があるだろうか…


心底落ち込むツバサ。


「そう言うシステムなのでアチキにはどうする事も出来ないでありんす、但し現金でポイントをチャージすれば、念願の空を飛ぶ事だって出来るでありんすよ?」


「………」


無言で財布の中を見るツバサ、小遣いをもらってまだ一週間だ、まだ3千円近く残っていた。


「…はい…これ、ポイントに替えてよ…」


目じりに涙の粒を貯め、膨れっ面で不機嫌そうに千円札をユッキーに差し出した。


流石に背に腹は代えられない様だ。


「まいどありでありんす~!」


とても明るい声で陽気に小躍りしたユッキーはハンディタイプの小さい金庫を取り出した、何処から出したかは謎だ。

早速蓋を開けて千円札を入れ蓋をし


「マジカルエクスチェンジ!」


と唱えた、すると


パアアアアアアアア!!!


プリペイドカードが光り出し、カウントが0から1000になった。


「ねえ、今何をしたの?」


さっきまでの不機嫌さはどこへやら、好奇心には勝てないツバサであった。


「今のは【マジカルエクスチェンジ】、簡単に言えば両替でありんす、


カードの数字の単位はイェンと言い、今1000円を換金、課金したから1000イェンになってるでありんす」


「え?どういう事?」


「魔法はイェンを支払わないと発動しないのでありんす、だから必ず両替しなければならないでありんす」


「へぇ~!」


カードの数字を見ながら、やっと魔法が使えるようになったのが嬉しくて思わず顔がほころぶ。


「じゃあさっそく変身を…」


さっそくマジカルステッキにカードを当て様とするツバサ。


「待つでありんす!変身するだけでイェンを消費すると言ったのを忘れたでありんすか?」


慌ててツバサを引き止めるユッキー


「この第二号は今まで実行した内容が全てでありんす

実用的な魔法は来週発売の第三号以降に封入されるから

今は無駄なイェンの消費は避けるべきでありんす」


確かにこれは正論だ、ツバサの様な中学生のお小遣いはそんなに多くない。


もうこれまでの様に気軽に変身や魔法の使用は出来ないと考えるべきだ。


「…それもそうね…うん、来週まで我慢するよ!」


ツバサは素直にユッキーの提案を受け入れた。

目先の楽しみよりもっと先の、より大きな楽しみの方に興味が移っていたのだ。

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