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週間 魔法少女  作者: 美作美琴
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第1話 創刊号 特別価格280円

「はい、今月のお小遣い五千円よ、大切に使ってね」


「わぁ!ありがとう、ママ!」


今日は四月一日、毎月一日は銀野ぎんの家では中学一年生の娘、ツバサにお小遣いをあげる日だ。

この日から小遣いが三千円から五千円にアップしたのだ!小躍りするツバサ。


「エヘヘ…さっそく本屋さんへ行っちゃおう!」


つぶらで大きな瞳を輝かせ、スキップしながら歩くと

栗色の髪をサイドに短くまとめたピッグテールがピョンピョン揺れる。

お気に入りの白い襟の付いたピンクのワンピースを着てご機嫌で出掛ける所だ。


【銀野ツバサ】は中学1年生になったばかり。。

絵本を読んだり、物思いに耽るのが大好きの夢見がちな少女だ

学校の教室でも、クラスメイトの女の子たちが洋服やアクセサリーなどのファッションやイケメン男性アイドル、好きな男の子の話で盛り上がっている中ツバサは一人絵本や少女漫画を読んでいる事が多い…

別にいじめられている訳では無いのだが友達は少ない。


近所の大型スーパーの中にある本屋にやって来たツバサ。

彼女はとにかく本屋が好きだ、立ち読みなどをしなくても店内をウロウロするのが好きなのだ。

今日も特に買う本を決めていた訳では無いのだが、いつものように本棚を見て歩く。

程なくして【本日の新刊】のコーナーの前を通ると、平積みしてある一冊の本がツバサの目に留まった。


【週刊 魔法少女 創刊号 特別価格280円】


『これであなたも今日から魔法少女 【特別付録】お供の小動物マスコット&魔法のタクト』


「へぇ~面白そう!280円だって…安いな~」


10cm位の厚さの書籍だが、始めの数ページをめくると、残り全体の九割は箱状になっていて箱の表側は透明になっており中身が見える。


「わぁ~!カワイイ!カワイイ!」


中には真っ白いリスに背中から羽が生えたキャラクターのぬいぐるみが入っていた。


「よ~し!これ買っちゃおう!すみませんこれ下さい」

レジで会計を済ませ意気揚々と帰路に付くツバサ。


「ねえ、さっきの女の子が買って行った本…あんなのあったかしら?」


「そうね~まあ何かあったら流石に返品に来るでしょう?」


女性店員がこんな話をしていたとは知る由も無いツバサであった。




「初めまして!私はツバサよ!大空ツバサ」


家に着くなり大急ぎで二階の自室にこもり、これまた大急ぎで本の中から取り出した。

白い羽根付きリスのぬいぐるみを顔の高さまで持ち上げ挨拶するツバサ。


「あなたのお名前は何て言うのかな?」


一度ぬいぐるみをベッドの上に置き、パラパラと本をめくると…


『このコにはまだ名前がありません、あなた自身が名付けてあげて下さい』


そう書いてあった。


「う~ん…そうね…あなた、雪の様に白いから…雪…ユキ…決めたわ!

あなたの名前は『ユッキー』!!」


パチッ…パチパチッ


「え!?」


何と!リスのぬいぐるみが瞬きを始めたではないか!!

「はぁ~い!アチキはユッキーでありんす!今日から宜しくでありんすツバサ」

そしてしゃべりだした…変な語尾で…


「うわぁ…凄い凄い!このぬいぐるみしゃべる様に作られてるんだ~でもどうなってるんだろう…今、私に名付けられたばかりの自分の名前と私の名前を言ったよね…?」


当然そこに気付く。


「アチキはぬいぐるみでは無いでありんす、これでも魔法少女をサポートする

由緒正しき妖精でありんすよ?」


「ええええええええ?!!!!!!」


思わず大声で叫んでしまったツバサ。


「ちょっと~!うるさいわよ?ツバサちゃん!」


「ごめんなさい!ママ~!」


部屋のドアからちょっとだけ顔を出し階下の母親に謝った。


「ちょっと!どうなってるのこれ?」


慌てて部屋に戻り、今度は母親に怒られない様に小声で話した。


「今言った通り、アチキは魔法少女のサポートをする為にここにいるでありんす、

単刀直入に言うとツバサは魔法少女に選ばれたんでありんすよ」


「え~?そんな事急に言われても…私なんてドンくさいし、勉強もそんなに出来ないし…取り柄なんて一つも…」


困り顔で慌てふためくツバサ。


「『週刊 魔法少女』、この本を買えたのが何よりの証拠、素質の無い人にはこの本は見えないでありんす、もっと自信を持つといいでありんす」


「そんな…私なんか…」


カーペットの上にペタンと座り込み意気消沈するツバサ。

彼女は自分を過小評価する癖が昔からあるのだ。


「それじゃあ、論より証拠!魔法を使ってみるでありんす!」

そう言うとユッキーは自分が入っていた本の箱に入っていた一本の指揮棒の様な細くて短い棒を取り出しツバサに渡した。


「これは…?」


先端に星形の水晶の様な装飾が付いているその棒は、手に持って軽く振るだけで、棒の先端からキラキラとした光の粒子がこぼれる。


「これが付録其の二、『魔法のタクト』でありんす、さあそれを振りながら変身!と念じるんでありんす」


しばし考えてから覚悟を決めツバサはタクトを振った!


『変身!』


ポアアアアアアアッ!


ツバサの体を眩い光が包み込む、見る見る成長していく体、髪も栗色の髪色が美しい水色に変化し、ピッグテールがグ~ン!と伸び膝位までの長さのツインテールになった!


光が収まった頃には、白と青系統の色で彩られたフリル一杯のミニスカロリータドレスに身を包んだ一人の美少女魔法少女が現れた!それは当然ツバサ本人が変身した姿だ!


「うわわわわわ!!!!何これ何これ!」


姿見に移った自分の姿を見て感嘆の声を上げるツバサ。

「本当だったんだ!凄い!素敵!…」

胸元に手を当てうっとりする…


しかしこの時ツバサは気付いていなかった…

自分の背後で真っ白小リスのユッキーがニィ~っと下卑た黒い笑みを浮かべていた事を…

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