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「とりあえずご飯食べない? ソリスお腹すいてない?」

「あたしは……」


 大丈夫だって言いたかったんだけどお腹から勝手にきゅぅうって音がしたから言えなくなった。


「すいてる……」

「じゃあご飯にしようか」


 そう言って洗い場のほうに行くアーベントについて行く。


 ご飯にするって言ってくれたアーベントの顔は優しい笑顔だったけど料理できないって言ったら怒るのかな。


 でも言わなきゃいけないよね。


「……あの、あたし料理できないの」

「ふうん」

「えと、その……」


 怒ったのかな。でも、顔は笑顔なんだよね。


「じゃあできるようになればいいんじゃない?」

「え?」


 首を傾げる前に洗い場の隣にある棚から取り出したお鍋をアーベントがくれる。


「水を入れてくれる?」

「分かった!」


 お水が出るのは洗い場だから鍋を置いてお水を出したいんだけど、お水を出すところに手が届かない。


「んー! んー!」


 足を伸ばしてみるけど届かない。


「チビだなオマエ」


 目一杯手を伸ばしていたら、横からノイテが手を伸ばしてお水の出るところをひねってくれた。


 意地悪だけど優しい。


 お礼を言おうとしたらお魚を持たされた。


「これ、何?」

「魚。頭と尻尾を切るんだよ」

「え? 切っちゃうの!?」

「食べちゃうの? 切ったほうが美味いぜ?」

「切る」


 おいしいものが食べられるなら頑張るしかない。


 木の板と包丁を持つノイテとテーブルに移動した。テーブルにはもう二匹のお魚が置かれていて、ノイテはそのお魚を一匹手に取って板に置くとすぐに頭と尻尾を切った。


 生きてはないみたいだけど、そのままのお魚を切るのはちょっとかわいそう。


「簡単だろ? ほら、次はオマエ」

「ええ……」

「じゃあ丸々いくか?」

「おいしく、ないんでしょ?」

「まあオエッてなる美味さかな」

「うう……」


 今のを見てるだけでもからしてオエッてなったのに食べる時までなりたくない。


 あ、でも目を閉じて切ったら何とかなるよね。


 お魚を板に置いてノイテから包丁をもらう。


「ふう」


 まずは落ち着かなきゃ。それから目を閉じて包丁を上げて、そのまま下ろせば……。


――パシッ。


 腕を掴まれて動けなくなった。


「何がしたいんだよオマエ」

「え、と……切る?」

「自分の手を?」

「え?」


 お魚に決まってるのに何言ってるんだろう。


 でも気になって包丁が下りる先を見たら、そこにはお魚じゃなくてお魚を押さえるあたしの手があった。


 もし下ろしていたら……。そう考えると怖くなって包丁を落とした。


「……オレが切っといてやるからアーベントのとこ行けよ」

「ごめん、なさい」


 謝ったけどノイテは返事をしてくれなかった。


 怒らせちゃった。


 言われたとおりアーベントの所へ戻るとお鍋に水を入れた後みたいだった。


「あの……何かすることある?」

「じゃあこの鍋が温まるの見ててくれる?」

「うん」


 水の入ったお鍋を洗い場の横にある火が出るところに置いて火を点けるとアーベントは棚のところに行ってしまう。


 見ていてと言われたけど、お鍋の中を見るのは高くて無理かもしれない。


 なんで今気づくんだろう。


「……どうしよう」


 あ、でも熱いかどうか分かったらいいんだよね。


 じゃあお鍋を触ればいいんだ。


 ちょいちょいとつつく感じで触るとお鍋はひんやり冷たかった。アーベントのほうを見ると、いくつか小瓶を取り出したり、お皿を取り出してテーブルに置いたりしていた。


「熱くなったかな」


 お鍋からは少し煙が出てるから熱くなってるよね。


 じゃあ触ってみようと手を伸ばしたら


「何してるの」

「え?」


 お鍋に触ろうと手はさっきノイテにされたみたいにしてアーベントに止められた。


「何しようとしてたの?」

「え、とお鍋の熱さを……見れないから触って……」

「見れないならどうして俺に言わないの。言ってくれたら別のこと頼んでたよ」


 ずっとむすっとしてるノイテとは違って優しい顔だったアーベント。


 でも今のアーベントの顔はとても冷たくて、怖い。


「……できないならできないでいいよ。君は座って待ってて」

「で、でも!」


 腕を離されて歩いて行こうとするアーベントの服を掴んで止めた。


 何もできなかったら、ここにいさせてもらえない。


 せっかく仲良くしてもらえるのに……一緒にいたいのに。


 嫌われちゃう。怖くてまた涙が出てきそうになる。


「……今日は、君が始めて俺たちに会った日だから。手伝わせるのはおかしいかなって思ったんだ」

「え? でも、さっきは!」

「今日やったからって料理ができるわけじゃない。それにここの家は俺たちに合わせて作られてるから身長的にも君が料理をするには向いてないみたいだ」

「……でも、何か」

「料理以外にもできることってあるんじゃないかな。ちなみにね、俺は皿を出しただけで並べてないんだ」


 アーベントは笑ってテーブルを見てからあたしを見る。


 お皿を並べればいいのかな。じゃあ泣いてちゃダメ。


 涙をごしごしと腕で擦ってテーブルに移動した。


「魚、切れた?」

「まあな。オマエ、頭と尻尾な」

「おいしい?」

「うえーってなる美味さ」

「やだ」


 ノイテはまだむすっとしてるから本当にうえーってなるのを食べさせられるかもしれない。


 嫌がってみたけどノイテは何も言わないで板の上に頭と尻尾が切れたお魚三匹と切られた頭と尻尾を乗せたままアーベントのいる洗い場のほうに行った。


「あ、テーブル」


 拭かなきゃと思って見たらアーベントが水に濡れた布を置いてくれていたからそれでテーブルを拭いてお皿を並べていった。


 その後、アーベントはノイテが切ったお魚のお腹のところだけをお鍋に入れて小瓶を振って味付けをして、棚からキノコを取り出してお鍋に入れていた。

それから少ししてお魚とキノコのスープが出来上がった。


「いいにおい……」


 おいしそうなにおいにうっとりしている間にノイテが来てあたしの並べたお皿をアーベントの所に持って行ってスープを入れて戻ってきた。


 それから棚のところに行って木のカゴをテーブルの真ん中に置く。

カゴの中には何個かパンが入っていた。


「わあ……! ねえねえ。あの棚には魔法がかかってるの?」


 あたしの前の席に二人が座って食事を始める前に聞いてみた。


「はあ?」

「だって中からなんでも出てくるよ」


 魔法としか思えない。だけど前の二人はガクンと頭を下げてため息をついていた。


どうして?


「普通の棚だよ。俺たちが持ち帰った食べ物を保管してあるだけ」

「持ち帰る?」

「たまに出かけなきゃいけない時があって、その時に持ち帰って来るんだ」

「パンだけな。魚とか果物は自分たちで取りに行くんだぜ」

「そうなんだ」


 ママがいつのまにか冷蔵庫に入れていた食べ物だけど、二人は外から自分たちで取ってくるんだ。


 とても大変そうだけど、とても楽しそう。


 あ、それなら


「ねえねえ明日も出かけるの?」

「明日は家にいる」

「そっかぁ。じゃあ……」

「そろそろ食べないとスープが冷めるよ」


 明日連れて行ってほしいと言いたかったけど、アーベントに止められた。


 まあ明日のことは明日話せばいいかな。それよりもスープを飲もう。

 

 スプーンですくって口に入れた。


「おいしい……」


 アーベントの味付けはママが作ってくれる料理とは違って薄くなくて、でも濃くもない。

 

 ちょうどよくて、ほんとうにおいしい。


「それはよかった。ああ、そうださっき君が使っていたベッドが君の寝る場所ね」

「アーベントとノイテはどこで寝るの?」

「三つベッドあっただろ? オマエの両隣がオレらの寝るとこ」

「そうなんだ。うん分かった」


 よかった一人で寝るんじゃないんだ。


 お家ではお部屋に一人だったけど、寝るまでママがいてくれていたから本当に一人ってわけじゃなかった。


 だから二人と一緒に寝られてうれしい。


 柔らかいパンもおいしかった。




 それから食べ終わって食器を洗うアーベントと洗われた食器を拭いて棚になおしていくノイテ。


 どっちかの手伝いをしたいと言ったんだけど、どっちもさせてもらえなくてテーブルを拭いてってお願いされた。


「ふあ……」


 テーブルを拭いて布をアーベントに渡したら欠伸が出てきた。


「今日はもう寝ようか」

「そうだな。疲れたし」

「うん」


 二人と一緒にベッドのあるお部屋に行って真ん中の青いベッドにもぐって、ふかふかの布団に顔を埋める。


 気持ちくてウトウトしていたら、いつのまにか眠ってしまった。

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