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涙が出なくなって鼻をすすって顔を上げたら二人の男の子があたしを見ていた。
薄い紫色の目と濃い橙色の目がとてもキレイで、見つめていると落ち着ける。
キレイと言う前に口がゆるんで笑顔になれた。そしたら薄い紫色の目がハッと見開かれて最初みたいに体を押された。
「とりあえず……どいてくれ」
「あ、ごめんなさい」
そうだ、あたしは二人の上に乗ってたんだ。
謝ってからすぐに体を起こして立った。二人もすぐに立ってあたしの顔があったところをじっと見る。
「あの……ごめんなさい。濡れちゃって」
「着替えればいいだけだし大丈夫だよ」
「服よりもオマエが泣いてたことにビビってんの。どうした?」
服を濡らしてどうしようかと思っていたら二人はあたしをまた見る。
なんで泣いていたのかを聞かれてるみたいだから暗闇が怖かったんだって正直に話してから、勝手に寝てごめんなさいって謝った。
「別にいいよ。君が眠ってたベッドは俺たちのじゃないしね。それよりも」
「暗闇が怖いって……オマエ……」
茶色の髪がキレイな男の子はクスクス笑う。
もう一人の黒髪の男の子は笑ったり怒ったりしないままあたしを見続けていた。
「く、暗闇が怖いだけじゃなかったんだよ! 色々怖かったから泣いてたんだよ!」
なんだかバカにされているみたいで恥ずかしくて言い訳してみるけど二人は変わらない。
安心する。怒られなかったことじゃなくて話ができる他人がいることが嬉しかった。
二人が来てくれなかったら涙も嫌な考え事も止まらなかったと思うもん。
「ありがとうアーベント、ノイテ」
「オマエ……」
お礼を言って、きっとそうだと思う名前を呼ぶと二人の目が怖くなった。
「なんで名前を?」
「ママから聞いたの」
「ママ? ……オマエ、ここのヤツなのか?」
「え? ここに来るのは初めてだよ。あたしね、外に出たことなかったの」
「外に……?」
どうして怖い顔をするんだろう。
名前を知っているだけで何も怪しいことはしてないのに。外に出たことがないのが不思議だから?
じゃあ家でしていたことを話せばいいかなって思って話してみたら二人は怖い顔をやめてくれた。
「別にオマエが家で絵本の中の王子様に会ってたとかどうでもいいって」
「でも話してる時、君の表情は本当に楽しそうだったから嘘じゃないみたいだ。だから怪しくないよ、君はね」
「ママも怪しくないよ」
ママはいい人だもん。
「まあ、んなことはどうでもいいって。それよりもオマエのママはいつ迎えに来るんだ?」
「ママはねお仕事が忙しいから……しばらく会えないの」
会えないって言ったら寂しくなってきた。
お別れの時は大丈夫だったのに。
「名前は教えられたのにオレたちと暮らすことになることは教えてもらってないのか?」
「ううん仲良くして待っててねって言われたよ。でも、仲良くしてくれるか分からないもん……」
いきなり泣いちゃったし、勝手に名前を知ってたから怒ってるみたいだったし。仲良くなるのは難しそう。
「仲良くするためにはお互いに名前を知っておくべきじゃないかな?」
「え?」
「オマエはオレらの名前を知ってるかもしれないけど、オレらはオマエの名前知らないからな不公平だ」
名前さえ教えてくれれば仲良くするって言ってくれてる?
仲良くできるのかな。
「あたし、ソリス」
二人と仲良くなりたい。仲良くなるためにあたしだけがもらった大切な名前を、初めての他人っていうことで特別な二人に呼んでほしい。
そう思って名前を言った。
「これからよろしくね。俺はアーベント」
「オレはノイテ。よろしくな泣き虫」
「うん、よろしくね! ……ノイテ、あたし泣き虫じゃないよ」
ノイテは意地悪でずっと泣き虫って呼んでくるから、違うって言い続けていたらアーベントがあたしとノイテの頭をぽんぽんって撫でてあたしたちはアーベントを見た。




