3話 初めての他人
大きな雷の音がして目が開いた。
長いあいだ寝てたのかな窓から入ってた光がなくなっててお部屋は真っ暗だった。
「……ど、どうしよう、何も見えない」
明かりはどこにあるんだろう。首を動かしてみても真っ暗で何も見えない。
あたしはどこにいるの? ここはベッドの上だよね?
何も見えないから分からない。
「どうしようどうしようどうしようどうすればいいんだろう」
おんなじ言葉しか出てこない。
でも何か言葉を出していたらあたしは真っ暗の中に飲み込まれないと思ってとりあえず声を出し続ける。
怖い。負けたくない。でもどうすればいいんだろう。
心臓が速くなってくる。ドキドキしすぎて胸が痛い。
ここがお家ならママが明かりを点けてくれる。ママがいない時はずっと明かりをつけて絵本を読んでいたから怖くなかった。
でも、ここは家じゃない。初めての外で、見たことも会ったこともないノイテとアーベントっていう人のお家。
違う世界なんだ。
「どうしようママ……ママこわいよどうしよう。なにも、みえないよお」
答えてくれるママはいない。助けてくれるママはいない。
あたしの側に、誰がいるの?
誰が? 誰も?
ああそっか誰も……いないんだ。それが分かって目が熱くなって鼻も痛くなってきて涙が零れてくる。
「どうじ……っう、っうう……」
涙を止めたいのに涙は止まらなくてボロボロと出てくる。なんとかしたくて両手で顔を押さえるけど、手が濡れていくだけ。
涙と一緒に考えたくないことまでボロボロ出てくる。
ノイテとアーベントが本当はいなかったらどうしよう。
このまま誰もいなくて、誰もこなかったら……あたしは一人? ずっと一人で、この真っ暗の中で、泣き続けるの?
しばらく会えないってママは言ってた。でも本当はずっと会えないんじゃ……。
「やだやだやだあ!」
真っ暗なのと一人でいて怖いのが重たくて、あたしの胸の中は嫌なことを吐き出してくる。
頭は考えたくないことを考える。
「ぐすっ、ひっく、ふえ……」
どうしよう何か言わなきゃ真っ暗に飲まれちゃう。
どうしよう、こわいよ。
「っう、ぐず、うええ……」
だれかたすけて。
ひとりにしないで!
「この子が……」
「なんか言ってた家族かなんか……か?」
声がした。あたしの泣いている声じゃない声。目を開いたらちょっとだけ明かりがあった。
だれかがきてくれたんだ。
「……あ? ……うわーん!」
誰でもいいからあたしと違う人に会いたくてベッドから床に足をつけて声のしたほうにジャンプした。
「なっ!?」
「わっ!?」
ドターンとでっかい音がしたけど痛くない。ママとは違う香りがしてきて、とても温かい。
ぎゅうって抱きついて、二人の人の間に涙と鼻水で冷たくなってる顔を埋めた。
「うわーん!」
「なんなんだ一体!」
「泣いてる時は確か……」
体を押されたり、頭を撫でられたりした。
でもずっとぎゅってしがみついていたら二つの手はあたしの頭の上に置かれているだけになった。
温かくて安心していたら涙は止まった。




