2
「人の記憶なんて曖昧なものに君という存在は残り続けると思うか?」
「何が言いたい?」
これ以上この鳥の話を聞いていたら何もかもが元に戻りそうだ。
ソリスと出会えて変われた自分、変えてもらった俺が。
「記憶に残らなければ、忘れられれば、それは存在を否定されたことと同じ。君は世界に生きるべきではない」
今まで俺は神に会ったことなんかなかった。
周りが神に嫌われているなんて言い続けるから神に対して嫌悪を持ち続けただけ。だけど、本当は神は違うことを思っているんじゃないかって期待を持っていなかったわけでもなかった。
吐き気がするくらいに嫌いと思わされる存在に……許してほしいって思ったりもしたんだ。
「天獣は、神の……天王の使いなんだって?」
「それを知ってどうする?」
「どうもしない。ただそれなら……認めざるをえないなって」
やっぱり俺は許されないのか。道具で生きるしかないのか。
でも
『約束だからね!』
俺には約束をした君がいる。俺はまだ存在がある。
忘れられても。否定されても。
それでも俺は君に思いだしてもらって、また肯定してもらう。
「それからでもいいや。俺が道具になるのは」
「次はこちらが聞こう。何が言いたい?」
「神には存在を否定されてもいい。だけど、俺はあの子を信じ続ける。あの子が俺を忘れても……きっと思い出してくれるってね」
黙るガルーダから目を逸らすことはしなかった。
ガルーダと俺の周りだけを照らす太陽の浮かぶ晴れた空。その空と同じ色の目をただ見つめ続けた。
「君の考えは分かった。信じ続けそれを裏切られる痛みに耐えてでも生きるのだな」
「ああ、そうだ」
「最後に一つ聞かせてくれ。“デンメルング”は存在しているか?」
体に雷が落ちたように俺の体が震えた。
なんで、なんでソイツを知ってるんだ。
「っ……もういないよ……そいつはもう、存在してないんだ」
「そうか。ではもう君に用はない。さらばだ禁忌の子よ」
震える俺を置いてガルーダは飛び立って行く。
後に残ったのは雷の落ちる砂浜と、雷を避けているのに打たれて麻痺するかのように震える俺だけ。
《だいすき》
ふとソリスの声が聞こえてきて、俺の震えは止まる。
「君が来た時に寂しくならないように何か飾ろうかな」
そしたら俺も寂しくないし。そう思いながら家に帰った。




