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手を繋いで歩きだしたのはあたしなのに、気づいたらアーベントに先を越されてアーベントに手を引かれているみたいになってた。
砂浜は昨日と同じサラサラで、アーベントが離してくれた手で砂をすくいあげてみると指の隙間からサラサラ流れていく。
「気持ちいい!」
「砂が?」
「うん、ほら」
しゃがみこんでるあたしが砂を渡そうとしたら、アーベントもしゃがんで両手で砂を受け取ってくれる。
興味深そうに砂を見るアーベントの手からも砂は流れていく。
「ほんとだ気持ちいい」
「でしょ!」
何回か砂をすくいあげてサラサラと流れ落ちるのを楽しんで、ここにいつまでもいたら時間がもったいないから先に行こうと思って立ち上がって歩こうとしたら
「わわわ! うぶ!」
砂に足をとられて転んだ。
顔を砂浜にぶつけちゃって痛い。
「大丈夫?」
だけど、すぐにアーベントが手を引っ張って起き上がらせてくれた。
「ちょっと顔が痛いかも……」
「怪我はないかな」
顔を上げたらアーベントが顔を寄せて覗き込んでくる。
わあ、アーベントって近くで見てもかっこいい。でも橙色の目がキョロキョロ動くのがおかしい。
「あはは、アーベントの目がすごく動いてる」
「それだけしっかり怪我がないか見てるってことだよ」
「大丈夫だよ。それより早く行こ!」
「あ、走ったらまた」
アーベントの言葉を聞かないで走ろうとしたら
「うぶ!」
「転ぶと思った」
アーベントは笑いながらまた手を引っ張って起こしてくれた。
「手を繋いでたほうがいいよ」
「うん……」
転びたくないからアーベントと手を繋いで砂浜を歩くことにした。
アーベントはとても優しくて、まるで本の世界に出てくる王子様みたい。
いけるかなと思って走って砂浜で転んでも怒らないで手を繋いでくれるし、キレイな貝殻を見つけたらそれを持ってきていた小瓶にしまってくれる。
小瓶について聞いたら、空き瓶らしくて家に何本かあって何に使おうか悩んでいたらしい。
「キレイだから家に帰ったら飾ろうか」
「うん! それじゃあもっとキレイな貝殻も探さなきゃ」
それから透明の小瓶が半分貝殻で埋まって、そこにアーベントが白い砂を入れて蓋をした。
それからも波打ち際まで行って冷たい水をすくってみたり、また砂浜を走って転んだりしてはしゃいでいたら明るかった空は暗くなってて夕方になっていた。
「ちょっとだけ休憩して帰ろう」
「うん」
砂浜に座って夕焼け色になっていく海を見る。
「すっごく歩いたね。アーベント疲れてない?」
「俺は全然大丈夫。君は?」
「ちょっと疲れたかも。でも、帰るぶんは大丈夫!」
「そっか」
夕焼けを見つめるアーベントがなんだかかっこよく見えて、顔をちらちら見てしまう。
でもアーベントはあたしのほうを見ないで夕焼けと同じ色の目で空を見つめながら
「不思議だな」
って呟いた。
「え?」
「君といると時間が早いよ。それに見たことのない景色がたくさん見れる。俺ね、夕焼けって写真でしか見たことなかったんだ」
「どうして? あたし、窓からよく見てたよ」
アーベントとノイテの家にも窓はあるのに。何でそこから見ないんだろう。
「窓の外はいつも暗くて、外に出ても雷雲しかなかった。今までずっとそうだった。なのに君が来て、初めて過ごした昨日は星が見えた。そして今日は夕焼けが見れた。ねえ、君は一体何者?」
笑顔は浮かべているのに、その顔がとても悲しそうに見えた。
あたしは……




