表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/45

第2章 第25話

 後から聞いた話なんだけど、マリー君はあの後すぐに目を覚まして逆に僕が全然起きなかったらしい。

 で、王宮お抱えでマリー君の事も診ていたゴブリンおばあちゃんのお医者さんの診察によれば、マリー君の肉体はともかく魔力や精神的な衰弱がほぼ解消されていて、代わりに僕の生命エネルギーが物凄い消耗してたらしい。まぁ、それを聞いて色々納得もしたし、皆に無茶するなって怒られても素直に聞けた。

 うん、今度があるか分かんないけど、次からは気をつけなきゃね。


 で、肉体こそ大丈夫だけど他が消耗してる僕も、他が回復してるけど肉体の消耗はそのままなマリー君と同じく絶対安静を言い渡される羽目になってしまう。

 そんな訳で、自室で寝ている僕にもう絶対無茶はさせないとシロクロ2人ともずっとべったりだし、マリアベルも同じレベルでべったり。マルヴィックは毎日マリー君のお見舞いに行ってるからその間は居ないけど、行く前も帰ってきても同じくべったり。エリンと父さんも家事や仕事の時間以外は一緒。

 いやぁ、怒られた時より、こうやって皆の行動見てたら心配してる度合いがより伝わって来て、より反省しちゃうなぁ。同じ状況になったら絶対同じ事しちゃうだろうけど、ならそうやっても平気なくらい強くならなきゃね。


 そうやって新たな決意をしたり、家族仲を更に温めたりして4日ほど過ごした後、わざわざ王宮からあの筆頭医者でもあるゴブリンばあちゃん医者さんが家まで来てくれる。

 多分これも色んな意味での誠意なんだろうなぁ。まぁ実際物凄い助かるし甘えるけどね。




「さて、シュー坊の方はどうかねー」


 そう言いながら、薄い何かが全身を包んでいくのを感じる。多分これであの異常なくらい詳しい診断してるのだろうなぁ。いやはや、物凄い便利だなぁこれ。

 と、そんなのんきな事を考えていたら考え込む仕草をするお医者さん。え? 何か良くなかったのかなぁ。


「先生、どうですか?」


 僕も聞こうとしてたのだけど、僕より先に父さんが口を開く。

 どこか不安そうで、なんだか申し訳ない気持ちになるなぁ。早く元気にならなきゃ。


「いや、見事に回復しているからそう心配そうな顔しなさんな。

 それにしても、流石と済ませて良いのやら。普通亜人種なら我ら人と比べると大抵の場合回復力に差が出るのじゃがなぁ。シュー坊の場合それが反転しておる。

 あそこまで消耗していたら普通は回復するまでまだまだかかるものじゃが、まぁマリー姫と同じく流石は加護持ちと言うところかの。早く良くなるのは良い事じゃし、うむ、これからは激しい運動をしなければ普通の生活をしても大丈夫じゃ」


 おぉー、確かに初日は疲労感で何をしてても億劫だったけど、今は殆ど復調してたからなぁ。やっぱり良くなってたんだ。太鼓判押してもらえると、尚更調子よく感じちゃうな。

 それに、マリー君ももう元気になったのか。良い事聞いたね。まだこっちで会えてないし、お互い元気になったのなら近いうちに会いにいかなきゃな。


「そうですか、ありがとうございます」


 安堵の表情を浮かべて頭を下げる父さん。いやぁ、心配ばかり掛ける息子でごめんなさい。

 周りを見ると、皆も安心してくれたような感じで笑みを浮かべてくれている。やぁ、素直に嬉しいなぁ。


「いやいや、これも仕事じゃからな。

 さて、用も済んだしワシは帰るよ」


 そう言って立ち上がった先生に合わせて僕も立ち上がり、家族皆でお見送りする。そんな事せんでえぇとどこか恥ずかしそうに言う先生を押し切る形で見送ったのだけど、うん、やっぱりゴブリン族の人って中身は可愛らしい人多いなぁ。いや、この世界じゃ外見も素晴らしいのか。外見も中身も良いって、そりゃぁ引っ張りだこになるよね、改めて納得したよ。



 その後、再び回復のお祝いを開くことに。今度はより心配してるだろうからって事で家族だけじゃなく、幼馴染の皆やギルドの皆を誘ったのだけど――。


「こんなに集まってくれて、本当に嬉しいな」


 思わず口からこぼしてしまったのだけど、豪邸と呼んで差し支えない家ですら溢れかえりそうな人の数。流石に皆遠慮して僕を取り囲んだりとかはなかったのだけど、何とか簡単な挨拶を全員とする事が出来た。

 んで、流石に復調したてで疲れた僕は椅子に座り、のんびりと休憩をさせてもらっている。皆笑顔で料理に舌鼓を打ったり会話を楽しんでたりエンジョイしてくれてるみたい。その分僕の家族は忙しくしてるけど、それはそれでホストとして楽しんでるみたいだし。いやー、幸せだなぁ。


「シュー坊、ちょっちいいかい?」


 皆を楽しむ姿を見て楽しんでた僕にそう話し掛けてきたのは、美しくドレスアップしたナリアさん。純白のスーツ姿が眩しい。美人って何着ても似合うなぁ。


「うん、なぁに?」


「いやさ、あいつに頼まれてたから聞くが、知る気はあるかい?」


 問いかけられ、ふととても大事な質問をされているのだと直感する。

 それを示すかのように、ナリアさんの表情も真剣だ。ならばと僕も真剣な表情を作って神妙に頷く。


「うん、色々と教えて欲しい」


 その答えにふぅっと息を吐き出すナリアさん。と、次の瞬間笑顔になって頭を撫でてくる。


「了解、そんじゃぁ明日にでももう1度お邪魔しに来るわ。

 そん時までに知りたい事考えといてくれ」


 その言葉を聞いて気付いた事がある。基本僕が知ろうとした事に対して皆事細かに答えてくれるのだけど、じゃぁ他にこれも知らないだろうと率先して教えてくれる事が極端に少ない事に。

 あぁそうか、多分この世界の摂理的にそうするべき何かがあるのだろう。

 そう考えると、ふと気付く事が増える。もしかしてこの前の出来事も、皆予想外って訳ではなくて、教えた方が被害が大きくなるって分かってたから教えなかっただけじゃないのかって事もだし、他にも腑に落ちる点が多々ある。


「うん、わかった。寧ろ色々聞きたい事あるからお願いね」


 意識して笑顔で伝えると、ニヤッとまるで正解とでも言うかのように表情を変えるナリアさん。これも母さんからの贈り物だね、じゃなきゃ僕が自分から気付いて行動するまで出来なかったって訳だし。

 再び胸に熱いものが込み上げてくるのを実感しながら、感謝の念を届く事を信じて祈った。




 パーティーも無事終了して、最終的にまるで分身の術でも使ってるかのような働きっぷりを見せたエリンが疲労困憊で起き上がれなくなったのを看病してるさなか、昨日の宣言通り家にナリアさんがやって来た。

 ホットパンツから伸びる足が眩しいってか、露出高い格好だなぁ。いつものギルドの制服姿に見慣れてるから昨日と同様新鮮で、でも、こっちの方が刺激がありすぎて思わず照れてしまう。

 いやはや、上もタンクトップに袖なしの丈の短いジャケット姿だし、あー、顔上げれないや。


「てめー自分の主に世話させるなんざいいご身分だなぁ。鼻の下伸ばしてよぉ」


 どこか不機嫌そうに言うナリアさん。あれ? さっきまで機嫌悪くなかったのになんで?


「あぐぅ、あ、主様が進んでやって下さる事を否定できる訳がないだろう」


「は、どうだかね」


 ベッドに寝そべったまま辛そうに言うエリン。ってか本当頑張りすぎだよ、疲れてフラフラしてきた時に声かけたのに、何故か益々やる気になったりして無理するから。もう、今日は絶対安静だかんね!

 って、本当に不自然なくらい不機嫌だなぁナリアさん。っと、見つめてたら目が合っちゃって思わず視線を下げる。ううう、こんな綺麗で色気たっぷりじゃぁ見惚れちゃうけど、やっぱ恥ずかしいもんは恥ずかしいよ。


 と、思い切り息を吐きだし、どこか寂しそうにナリアさんが語りかけてきた。


「なぁ、今日の俺の格好そんなおかしいか?」


 あれ? 何か勘違いさせてる! うぅー、これは恥ずかしいけど正直に言わなきゃ。


「いや、あの……だってナリアさんいつも綺麗だけど、そのぅ。今日大胆な服着てるし、その、とっても似合ってるし物凄い色気も感じるんだけど……あの、は、恥ずかしいの」


 あぅー、思わずもじもじしちゃったけど、これ僕完全に気持ち悪い人じゃないか?

 そう思ってナリアさんを見れば、って固まってる? 何か顔赤くなってるし。あ、視線逸した。


「いや、その、だ、だったら良いんだ。うん、そ、その、しゅ、シュー坊も似合ってるよ。うん、か、可愛いよ」


 しどろもどろなセリフに、でも嬉しく感じる。まぁ着てる服は着回しでよく着るワンピースの1着だし、ツインテールにしてるのも好きでしてるから褒めてくれるとそう思うのは当たり前だ。まぁ可愛いより格好いいの方が良かったのだけど……もうそれは諦めよう。


「あ、ありがとう。嬉しい」


 それだけ伝え思わず口をつぐんでしまう。しばらくムズムズした感覚のまま静かに時間がすぎ……エリンに寂しそうに見られている事に気がつく。


「あ、エリンもいつも愛らしいからね。でも、昨日は無茶しすぎ、ちゃんと寝てなきゃダメだよ!」


 そう言うとふと視線が外され……いや、なんでドヤ顔してるの?

 何か気にしちゃ負けな気がするからスルーしちゃおう。


「だから、今から僕の部屋でナリアさんと話してくるから、戻ってくるまで待っててね」


 わぁ、あっと言う間に絶望したって表情に変わったなぁ。いや、別に話ししてくるだけだし、ずっと放置するわけじゃないからね?

 あ、横目でナリアさん見たら何かドヤ顔してる……見なかった事にしよう。


「分かりました。待ってます……、待ってますからちゃんと戻ってきて下さいね!

 後何かあったら叫んで下さい、すぐに助けに行きますから」


「わかった。だから約束ね」


 あまりに必死に言うものだから、苦笑いを浮かべてそう答える。のに安心しきれてないのか、シロ殿、クロ殿、後は頼みましたぞとか呟いてるなぁ。こんな近距離なのに聞こえないとでも思ってるのかな?

 まぁいいや、とりあえず寝てくれてるって約束してくれたし、エリンだったら約束破ったりしないだろう。


「じゃぁナリアさん僕についてきて」


「おう」


 ニコッとこちらに微笑み返してくれたので、こちらも笑みを返して先を歩く。

 さて、昨日から色々考えてたんだけど、質問の仕方とか間違えちゃいけないからなぁ。

 つっても、何も今日1日で何もかも聞かなきゃいけないって訳じゃないし、今後気づいたり疑問に思うそばから聞けるようにしなきゃなぁ。


『シューちゃん、私達が一緒じゃダメ?』


 と、廊下を歩いていたらいつの間にかクロが横に来ててそう問いかけてくる。後ろをちらりと見ればシロがナリアさんの横にいるな。


「うーん。どうだろ? 僕は大丈夫だけど、後はナリアさん次第かな?」


『あぁ、じゃぁ大丈夫ね』


 納得したように僕の足に甘えるように体を擦り付けてくるクロ。って、僕の言葉ちゃんと聞いてた?


「いや、だからナリアさんに聞かなきゃ」


『あんな小娘に聞くまでもないし、あぁ、でもシロが許可取ったみたいだから大丈夫』


『そうそう、ってか、エリンの時だって別に一緒に居たかったのに暇だろうからって変な気を使いすぎだよ。看病したいってのが全身から感じ取れたから大人しく従ったけど、寂しかったんだからね。

 後クロお前いつもズルい』


 同じように甘えてくるシロってか、ものすんごい歩き難いのですが。や、まぁうん。折角好意向けてくれてるのに無碍にしちゃダメだね。僕だって2人の事好きなんだし、あー、気張りすぎたかなぁ。まぁ今度は僕がお世話するんだーって確かに気張ってたなぁ。うん、気を付けよう。


 って、僕の部屋の前についたんだけど、何でかナリアさん俯き気味だなぁ。


「さ、ナリアさん、色々教えてね」


 右手を差し出して――うおぉぉ、やっぱり恥ずかしい、何か驚いてるし。とは言え今更引っ込めれないもんなぁ。


「あぁ、何でも教えるよ」


 そう言って嬉しそうに握り返してくれるナリアさん。うん、絶対僕顔赤い。

 いやはや、ドキドキよおさまれーい!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ