第1章 第2話
イケレってイケてるレディーの略なんだってー。いやー、いくつになっても知る事って楽しいよね。まぁ今生ではそれこそ今から世の中知っていく訳だけども。
そう言えば、知識を役立てようとか思った事もあったんだけど。林檎らしき果物が枝から勝手にもげて天に登っていった瞬間に諦めた。うん、俺如きが定理の根本を覆す現象が日常的に起こる世界で、それでも定理に当てはめて流用しようなどと考えるほど馬鹿でも天才でもないからね。
そもそも、何となくと言う理由で神様が大陸を沈めたり新たに作ったりする世界なんだ。先ずは神様全てに愛されでもしてなきゃ定理を作ること自体無理がありすぎるよ。逆に神様全てに愛されてたら可能だろうけど。
そんな訳で、木製の馬車とは思えないほど快適な旅になってる理由は、どうやら父さんがある神様の加護を得ているかららしい。全てが都合よくなる訳じゃないらしいのだけれども、こう言う感じで普通じゃ有り得ない利益を無償で得れるとか。もしかしたら死んだら魂奪われるのじゃなかろうかと不安になるのだけれども、そんな事は一切ないらしい。
まさに持つ者と持たざる者とで越える事の出来ない壁があるって訳だ。
サスペンションが付いてる自動車を知る俺ですら、どっちが快適かと聞かれたらこちらと答えるよ。まさか一切揺れないとは。しかも快適な気候をある程度保ってくれるとか、まさにチートって言いたくなるよね。うん。俺も木の神様関係に好かれたいなぁー。
しかし、まぁほんと生まれた場所は辺鄙な場所にあった訳だ。かれこれ2週間旅してるけど。一向に森から出れないんだから。
ただ、飽きは全くない。何故なら森の動物達がちょいちょい構いに来てくれてるのか。窓に鳥やら止まって歌声を披露してくれたり、触らせてくれたり。休憩中に猫っぽい何かや犬っぽい何かに始まり色んな動物達にモフモフさせて貰ったりと。まるで動物使いかって感じだ。
まぁ、生家にいる頃からだから、今更なんだけどね。
飽きないと言えば、ウチの両親もスゲーよなぁ。いくらなんでも2週間イチャイチャしっぱなしなのはいかがと思う。いや、仲が良いに越したことはないし。俺も間に入ってイチャイチャするから、やっぱり家族愛って素晴らしいとも思うのだけど。しかし、1人の時間もそれ相応に大事じゃないかなぁと。
だから、俺もこうやって偶にとりとめのない思考に入り込みつつ景色を眺めたりしてるのだから。
それにしても、街が楽しみ過ぎるなぁ。小さな国の首都らしいけど。村レベルすら経験のない俺だ。同年代の友達とか街並みとか、そう言えば色んな種族が集まるらしいし、エリンみたいな美人さんとも知り合えるかもしれないし。今度こそ恋人作るぞー。
ガッツポーズをする俺の拳の上に乗ってくる、母さんの髪と目と同じ色した赤い鳥。父さんは真っ青な髪と深緑の目で。俺は何故か黒髪黒目。いや、めっちゃ馴染むしこれで良かったんだけど、ファンタジー的な色合いでも良かったよなぁ。でも、違和感過ごそう。
「おや、シューご機嫌だね」
「うん、父さんと母さんの仲が良くて僕嬉しい」
「そうだね。母さんの良さを教えてくれたシューには感謝しなきゃ」
「ほんとほんと、やっと俺の愛を受け止めてくれたんだからなぁ。子は鎹とはよく言ったもんさ」
父さんの膝枕でご満悦そうな母さんと、そんな母さんの髪を愛おしそうに撫でる父さん。これが前世の父さん母さんでやると苦笑いだけど、今生の父さん母さんだとほんと絵になってるから、普通に笑みが溢れるんだよなぁ。
ってか、仲睦まじいのは素晴らしい事ですよほんと。
「でも、代わりにエリンがずっと1人で御者してるのが可哀想」
「良いんだよ。奴属の縁を結んだ奴は、対になる主人に尽くすと幸福を感じれるんだからさ」
「むぅ、でも母さんが御者してる時、僕1人で寂しかったんだよ? だから、今度は僕がエリンの隣にいてあげたい」
今までそれで我慢してたのだけど、流石に1週間も経つとあんまりな気がして言い返す。実際僕もあの時割と限界だったからね。1人は寂しいよって文句言おうとしたらエリンに襲われてうやむやになっちゃったんだけど。
と、驚いた表情を浮かべた母さんが何か言う前に、穏やかに父さんが僕に告げた。
「そうだね。シューの好きになさい。母さんには父さんが言ってあげるから」
「ちょっ、マイケル!? 女の恐さを知らない訳じゃないだろう?」
「えぇ、それでも貴女は私に乱暴しなかったじゃない」
「あ……うぅ。わ、分かったよ。ただし、あのアバズレに心から許すんじゃないぞ!」
おー、流石だ。母さんの扱い手馴れてるなぁ。ってか、男らしい男ってこう言う事なのかぁ。実感ないなぁ。やっぱ男って言ったら前世の父さんだよ。今生の父さんには悪いけど。いや、どっちも大好きだけどね。
「2人ともありがとう」
許可も貰った訳で。でも移動中じゃ流石に危ないって事でお昼の休憩の後に御者台に僕も乗り込む事に。まぁこんだけ快適な旅なら全く問題ないだろうからね。モンスターとかいるって聞いたんだけど、本当に出ないなぁ。まぁ母さんセンサー半端ないから、近づいたら母さんが気付かない訳ないから実際近くに出てないのは間違いないだろうけど。エリンの時も、普通に色々準備してたしね。突然装備を整えて縄を準備し始めた時はびっくりしたけど。
さて、僕も色々妄想の世界へ戻ろうかな。あっ、やべ、脳内でも僕って言っちゃった……こりゃぁ近いうちに本当に僕って言うのが普通になりそうだなぁー。
「エーリーン」
「はい、主様」
胸に飛び込み抱き抱えて貰う。しかし、以前の名前って何て言うんだろうなー。結局僕が名付けなきゃならなかった訳だし。うん、やっぱり奴属の縁っての色々考えものだよね。エリンが本気で喜んでるから、何とも言えないのだけど。当たり前だけど、少なくとも僅かでも嫌がる人には絶対しないようにしよう。
「私、主様に拾われて本当に幸せです。ありがとうございます」
「ううん、僕こそこんな働き者で優しいエリンと仲良くなれて幸せだよ」
「勿体ないお言葉、ありがとうございます」
やー、しかし、何でエルフって嫌われてるのかねぇ? こんなに美人でしかも超尽くしてくれるのに。しかも気遣いも出来るし。ってか、最初襲ったのってなんなんだろう。森を守るって線しかないって思うのだけど、聞いたら普通に否定されたし。しかもムキになって自分で答えを見つける迄教えないでって言っちゃったもんだから、聞くに聞けないしなぁ。一番の問題は、別に今やそんなに気にならないのが問題かもしれないけど。
他のエルフがなんであれ、エリンはエリンだし。
「そうだ、この後僕も一緒に御者台に乗るからよろしくね」
「はい! ……ふえぇぅ。あ、主様のご一緒ですか?」
あれ、予想の反応と違う。いや、物凄い喜びの感情が伝わって来るから喜んでくれてるのは間違いないんだけど、同時に困惑した感情もそれなりに伝わって来てる。うーん、嬉しいけど心配してるって事かな?
「大丈夫だよ、クロもシロもそもそも僕に懐いて僕等と仲良くしてくれてるんだからね」
「えぇ、それは承知しておりますが……」
あれっ、じゃぁなんで困惑してるんだろう? と、初めてかもしれないぐらい満面の笑みでエリンの肩に腕を回す母さん。あっ、下ろされた。それにしても……うん、長身の美少女と美女ってのも絵になるなぁ。畜生、なんで男は前世の日本人男性とほぼ変わらない平均身長なのに、女性の平均身長190もあるんだろう。母さんの身長がまさか普通で、180そこそこのエリンは小さい方って言うんだからなぁ。父さん一応170あるけど、それが平均だって言うんだからなぁ。
あー。今生でも高身長は諦めなきゃダメかな。
「へっ、なんだぁ? どうやらハイエルフ様は流石だなぁ。主人の意向に背くと言う訳だ」
「いいえ、そんな事ありえません」
「ほう、その割に即答出来てない訳だが」
「くっ……同じ女なら多少の理解は出来るでしょう?」
「けっ、まぁ俺も褒められた事をした訳じゃない口だからなぁ。ほんと僅かは理解できなくもない。
だが、お前流石にそれはどうよ?」
「うっ」
「ふん、何かあろうはずもないが、バレてもお前をバラすからな」
「うううっ」
ん? 考え込んでると、いつの間にやら母さんが真面目な顔になってるし。エリンはキョロキョロと視線を彷徨わせ、最後に俺に視線を向けた。その表情がまるで捨てられた子犬の様で、笑顔で大丈夫だよと手を振ってみる。
と、一旦視線を下に落とすも、決心したように母さんに向き直る。
「大丈夫、夜まで我慢できる」
「……貴様らは本当自重しないなぁ。まぁ、夜も一緒に寝ようとか誘われても頑張って断るんだな」
再び笑顔なんだけど、明らかに楽しんでますって雰囲気で去っていく母さんと。こちらはまるで究極の選択を突きつけられたかの様な驚愕と絶望の表情で固まるエリン。って、究極の選択ってなんだろう? あまりに強い感情で思考まで流れ込んで来たからなんであんな表情になったか分かったけど。分からん。
しかし、それ以上に強い感情でも勝手に全部は読まないように気を付けなきゃなぁ。プライバシーって大事だしね。多少は不可抗力らしいけど、ある程度はコントロール出来るみたいだし。頑張ろう。
兎も角、固まっているエリンに抱きつきに行く。ふふ、美少女に抱きついて無条件で喜ばれるってたまんないよね。
結局無事に業者台どころかエリンの膝をゲットした俺なのでした。
それにしても、なんでエリン時折もじもじしてたのかなぁ? 失礼だけど、トイレかなぁと思って聞いてみたけど違うって言うし。何故か申し訳ございませんとか言われるし。俺何かしたかなぁ?
後、今日で一番印象的だったのが、夜皆で寝ようよって俺の案に、誰か警戒する番は必ずいるから先ずはエリンからって母さんに言われ。何故かエリンに貸し1なって言ってエリンが深く頭を下げた事だ。詳しい事は分からないけど、父さんもどうやら分かってたようだし、むー。まだまだ分かんない事だらけだ。
あれ、今更気付いたけど、クロもシロもいるのにどうして母さんはあんな事言ったんだろう。益々謎は深まるばかりである。
この小説は主人公視点の1人称の小説であります。それ故、5歳児らしく割と突拍子がなくて支離滅裂で、しかし鋭いところもあると言うのを表現するため読みづらい書き方になっている事でしょう。
筆者の文章力が乏しいのも多大な原因でもありますが。是非寛大な心で読んで頂けると嬉しく思います。
因みに、前世の記憶がある故並みの5歳児より遥かに理路整然としている部分もあります。ただ、魂の年齢はあくまで生まれ変わった時点でリセットしてると言う解釈を取っております。
なので、主人公は知識が有り得ない程多いけどあくまでも5歳児と解釈して頂ければと思います。
実は後書きでこう言う言い訳がましい事を書くのは好きではないのですが。私の文章力ではきちんと皆様に伝えられるか非常に疑問であり。同時に現時点では混乱させてしまうかもしれないと書かせて頂く事にしました。
本来ならば最初の後書きに書かなければならない事でしょうが、感想を書いてくださった方からのご指摘で。これは書いた方が良いと判断する1因にもなりましたので今回書かせて頂く事にしました。本当に感謝する次第であります。ありがとうございました。
最後に、この作品はほぼノンプロットで書いておりますので、大まかな流れや設定は考えてはおりますが、その都度より面白くなるよう練りこんでおります。それ故更新速度はかなりの不定期になると思われますので、そこも寛大なお心を持って頂けると非常に嬉しく思います。
それでは長々と失礼致しました。
最後に、読んで頂けた全ての方に最大の感謝を。拙作を読んで頂き誠にありがとうございます。