第1章 第1話
次の話の後書きにもありますが、これは最初にいるだろうと新規の読者様の為にこちらにも書いておきます。
この小説は主人公視点の1人称の小説であります。初めは幼児ですので割と突拍子がなくて支離滅裂で、しかし鋭いところもあると言うのを表現するため読みづらい書き方になっている事でしょう。
筆者の文章力が乏しいのも多大な原因でもありますが。是非寛大な心で読んで頂けると嬉しく思います。
上記とほぼ同じ文章が次の話の後書きにもございますが、より詳しい理由はそちらにございます。
前書きを長くしても仕方ないですし、それでは本編をお楽しみ下さいませ。
暖かい何かに包まれ、ひどく長い時間をただただ何も考えずに過ごす日々が、突然襲う激痛によって終りを迎えた。
本当にあれは痛かった。いい年して喚いて叫んでしか出来なかったんだから。しかも、寒い中に放り出されるし。いや、まぁこれが俺の誕生の瞬間なんだけれども、うん、生まれた瞬間から対応できる転生者って本当に尊敬するわ。
兎に角、赤子の体って滅茶苦茶不便なんだよな。首すら据わってないから体動かす事って滅茶苦茶大変だし。目も鼻も耳も未熟だから状況判断すら困難。まぁ滅茶苦茶疲れた状態で水の中に入った感じが近いかな? 水の中から水の外の事をどれだけ知れるかって考えれば、本当にその状況で情報を獲れる小説の転生者って本当に凄い。いや、転生チートだっけか? そんなんあれば別なのかも知れないけど。少なくとも俺にはそんな便利なものはなかったって事なんだろうなぁ。
兎も角、俺がネット小説好きだったのはどうでも良い話で。結局世の転生者が苦悩する赤子の振りとか普通に生きてるだけでクリアしてしまった訳である。
言葉も全く知らない言語の上、未熟な舌だと簡単に赤ちゃん喋りに単語連発って事しか出来なかったからね。
まぁ、それ以降は単純に俺の性格の所為なんだろうけど。転生前の時点で小学生なら小学生と、幼稚園児となら幼稚園児と対等に遊んでる様に見えたらしい俺の事だ。うむ、純粋さはいくつになっても大事だよ、きっと。
そんな訳で、全力で新しい世界と今世の父さん母さんを満喫してた訳だけど。
ふとある時気付いた重大な事実は、俺は父さんからお乳を貰ってた。
いや、語弊とかなんとかないよ? 前世の記憶がある所為で相当混乱したし、未だに常識を把握しきれてないところがあるのだけれども、この世界、男が女で女が男なんだ。
自分でも何を言ってるのか分かんないけど、前世の世界の男はこの世界では女で、女は男になってるって訳。身体的特徴はほぼ変わらないのに、しかも子供を産むのは変わらず女性なのにまさにあべこべな世界である。
因みに、気付くのが遅れたのは父さんの所為だ。だってパッと見只の美少女だからね。
で、母さんも野獣のようなってついちゃうけど、魅力的な美女で体つきも素晴らしい。いや、俺は別に乳の大きさは気にしない派何だけど。時代は感度でしょ感度!
失敬、暴走しすぎた。
兎も角、仲の良い女性2人に育てられてると思ってた訳だよ。ここで1番重要な事で、今1番言いたい事を単純に纏めれば。
「俺は女性が大好きなんだ」
目の前でこれでもかってくらい驚きの表情を浮かべる、母さんに縛り上げられた耳長の美少女。ってか、5歳児にこんな発言されたら当然だとも思う。
しかも、考え込んでたから割と時間かけちゃったし。
しかし、それよりも誤解されたままの方が俺は辛いんだ! って、いってー!!
「男が俺とはなんだ。男なら私、百歩譲っても僕だ」
拳を握り締めたまま、真剣な表情で迫る母さん。うん、滅茶苦茶痛かったです。
「はい、ごめんなさい」
「うむ、よろしい」
「えっと、エリーもシューもそんな事やってる場合じゃないと思うのだけど」
困り顔なのは我がマイファザー。ってか、白のワンピースが滅茶苦茶似合うとか、うん、俺もこの血を引き継いでるのかぁ。今世でも女顔とかもやしとか馬鹿にされそうだなぁ。顔はしょうがないとしても、是非体は母さんに似て欲しい。
「ふん、どうせイケレに限るとか、そんなオチだろう?」
ふぇっ? イケレって何だ?
「母さん! イケレってなーに?」
抱きつきながら話しかけると、何時もの様に満面の笑みを浮かべてくれる母さん。眼福です。
「本当に息子を産んで良かったぁ。マイケル、良く仕込んでくれたな。ありがとう」
ここで父さんが顔を染めて俯くまでが最近のウチの家族のテンプレです。しかし、別に家族同士のハグくらい当たり前だと思うのだけどなぁ。前世の頃からそう思ってるし。まぁ、この世界でも世間様は違うのだろう。前世じゃ本当に日本人ですか? とか言われてたもんなー。
「嘘だ、こんなブサイクなのにあんなイケメンの婿さんが出来るとか、こんな可愛い息子が出来るとか……り、理不尽だ」
あっ、耳長ちゃん表情を絶望に打ちひしがれた様に変えた後うつむいちゃった。これ俺ら家族を襲って返り討ちにあって縛られた時より凹んでないか?
むー、美少女が凹んでるの見てると励ましたくなるけど、でも流石に襲ってきた人には優しくしづらいからなぁ。まぁそれでもいきなり目の前で首を切り落とそうとされたら止めはするけど。
「けっ、お前と違っておりゃぁ出来るブサイクなんだよ」
「えっ、母さんはめっちゃ美人だよ! ブサイクじゃないのにブサイクって言っちゃダメ!」
「はっ!?」
うおっ、俺の発言に3人同時に大声で返事するの止めて。びっくりしちゃったよ。
って、驚きに目を見開いてるの何で?
「まて、シューリック。お前俺の事美人だって言ったな? 本気でか?」
「うん、滅茶苦茶綺麗だって思ってるよ! ……ダメだった?」
あんまりな反応に、物凄く不安に駆られる。いや、だって今まで色々やらかしてきたからね。また前世との価値観の違いとかかなぁ。でも、褒めてる筈なのに何でこんな反応されなきゃなんねーんだ。
凹んでると、慌てて抱き上げてくれる母さん。うん、スイカバストが物凄く気持ちいいです。流石に性的に興奮しないけど、愛情をひしひしと感じれるハグってやっぱり良いよね。
「ダメな事ないぞー。いやー、母さん美人かぁ」
「うん、父さんと美男美女で素敵だよー」
「ほうほう、やー、父さんとお似合いとか初めて言われたなぁ」
「そりゃそうだ。あんたら美男と野獣だもんな。あ。それじゃぁ野獣に失礼か」
ほのぼのとした空気をぶち壊す耳長さん。ってか、やっぱり命を握られてるような現状じゃやけっぱちにもなるよねぇ。
って、母さん怒りに顔が染まってるよ! それでも綺麗だけど、近寄りたくない雰囲気全開だし、ってか、俺抱き抱えてるのにその顔止めて!
急いで状況改善しなきゃ!
「耳長さん、そんな悲しい事言わないでよ!」
「うっ、そ、そんなにそこのブサイクが好きなのか?」
「俺っと、僕が母さん好きなのは当然でしょ? こんなに綺麗で優しい人なのに。大体君も綺麗なのにどうして――」
「ワタシガキレイダト!」
うわっ、びっくりしたぁ。あんまり大声過ぎて凄い聞き取りにくい言葉になっちゃってたよ。兎も角、そう思うから何度も頷いておくか。
「じゃ、じゃぁ私にも抱きつけるのか?」
切羽詰ったように言われて、何でそんなに切羽詰るのか不思議に思う。ってか、そんな美人なら俺如き相手にされないような気がするんだけどなぁ。まぁ、一応俺も両親の血を引いてるからそれ相応の美少年かもしれないけど、まだ5歳だしね。
「うん。母さん下ろして」
「お、おい、このエルフの言う事なんか聞かなくても良いんだぞ?」
「ううん、僕嘘つきになりたくない」
しっかりと目を見て言えば、渋々と下ろしてくれる母さん。って、もしもの時は斬り殺せば良いやとか、聞こえてるからね? あ、でも、もしもの時は助けて下さい。
さて、何か色々複雑そうに見てる耳長さん。って、マジでエルフだったんだなぁ。スゲー。魔法とかあった時から期待してたけど。期待通りだ。っと、んなこと考えてたら目の前に来ちゃった。こっちを不安そうに見てるからこのまま抱きしめちゃえ。丁度いい感じの高さだしね。
「ほら、嘘じゃないでしょ? お姉ちゃん将来僕のお嫁さんにしたいくらい可愛いよ」
調子こいて言ってみる。うん、多分前世で彼女出来なかったのってこう言った余計な一言の所為かも。まぁ今となったら確かめる術ないけど。
「し、死んでもいい。なぁ、殺すなら今殺して――」
「だめー! 何でそんな簡単に死のうとするの?」
うおっ、怒ろうと思って体話したら、姉さん泣いてはるやないですざます? いかん、混乱してる。助けてマイファザー&マザー!
って、めっちゃ難しい顔してるとばってんどがんこっでっか?
慌てふためく俺。泣き続ける耳長美少女。難しい顔の両親。これって、また何か不味い感じ?
「シュー。エルフの様な性獣は見つけたらすぐ駆除しなきゃならないんだ」
「そうそう、こいつらは男と見たら見境なく攫って行くからなぁ。そいつはハイエルフだが、寧ろ純粋な力も知能も上な分厄介だし。可愛い息子の頼みでもちと厳しいな」
まっ、俺から見れば雑魚だけどなって言って高笑いする母さん。
って、聖獣って良い意味じゃないの? まさか性獣って訳じゃないだろうし。もしかすると、この世界では同じ人に分類される者以外は駆除の対象なのかも。地球でだって人種差別やら色々あるんだしね。
兎も角、余りにも涙する姿が可哀想なので、ちゃっかり抱きしめながら聞いてみる。
「どうにもならないの? 可哀想だよ」
あっ、今更思い出したけど、確かに誰彼構わず襲うのなら確かに迷惑だよなぁ。きっと森を守る為とかプライド高いとか、そんなのだろう。
でも、言葉は通じるんだ。最後まで話し合う努力くらいしたいなぁ。
「まぁ、伴侶にするか奴属の縁を結べば良いんだがなぁ」
「方法はその2つ? じゃぁお嫁さんになって貰えば良いんだ!」
「ダメだ!」
異世界で恋人飛び抜かして奥さん出来ちゃいましたってそんな簡単にはいかないよね。うん、神妙な顔の両親は絶対俺の提案聞いてくれそうな雰囲気じゃない。
現に母さんには声高く否定されたし。
確かにエルフさんの意思無視し過ぎだと痛感したので。頭を撫でながら意思を聞いてみる。うん、スキンシップは向こうからの提案だけど、嫌かどうかも聞いてみよう。
「ごめんね、エルフさんの意思無視し過ぎだね。こうやるのも嫌なら止めるよ」
「嫌じゃない。って言うか。本当にお嫁さんにしてくれるならして欲しい。いや、お願いします、奴属の縁で良いので結んでくれ。結んで下さい!」
あれ、奴属の縁って響きからかなり屈辱的な事って思ってたけど、プライド高いエルフさんからお願いするって事はそうでもないのかな?
渋い顔には変わりないけど、どことなくそれならって言う雰囲気を両親から感じ取ったので、2人の気が変わる前に急いで畳み掛けよう!
「じゃぁ結ぼう! どうすれば良いの?」
「貴方が足を差し出して、私がそこに口付けすれば良い」
「こう?」
うーむ、美少女を這い蹲らせるなんて趣味じゃないけど、こう言う方法なら仕方ないか。
とりあえず、少しでもやりやすい様に足を可能な限り上げてみる。うん、バランス崩しそう。
と、口付けをされると何かが流れ込んできて。同時にエルフさんと繋がりを感じる。
ほえー、これが奴属の縁かぁ、何か暖かい感覚だなぁ。うん、これはきっと良い物なんだ。納得。
「貴様。息子の意思に反する事したら即座に自害しろよ」
「言われなくとも」
って、母さん、何物騒な事言ってるの!? しかも、当たり前だみたく返事しなくて良いからね!
「むー、じゃぁエルフさん自害禁止!」
「承知しました」
むん、これでとりあえずは大丈夫か。
って、母さん物凄い不機嫌そう。まぁ、相当我が儘言ったもんなぁ。うん、思ったら即行動だよね。
ばっと母さんに抱きついて、精一杯の笑顔で感謝を伝えよう。
「母さん、ありがとう!」
「……こ、今回だけだぞー。むへへへ」
うおっ、頬釣りだぁ、ほんと愛されてるよねぇ。俺って。それに、母さんの機嫌も治ったみたいだし。
さぁ、ハプニングも終わったし、お引越しの続きだね! 今まで深い森の中に家族3人だけで暮らしてたから、大きな街が楽しみだー。
って、聞き損ねたけど、イケレって結局何だ?