第1章 第12話
もう両腕がパンパンです。結局最終的に僕の両手が限界なのを伝え、皆大袈裟に謝りだし、それを収めるので精根尽き果てました。うー、シロに体を預けて休んでるけど、まだダルいなぁ。
どうやら皆はかけっこをしているもよう。余程嬉しいんだろうな。今までは頭の部分がはだけないように苦労してただろうし。クロはサイズを再び小さくして皆と駆けてる。完全に保護者状態だろうね。誰か近づこうとしたらピッとそちらの方向いてるし。多分そっとしとくようにお願いしてるんだろう。
『あうー、シューちゃんごめんねー』
「もう良いよー。やー、でも皆楽しそうで何より。最初は僕に気遣い過ぎてぎこちなかったからねぇ」
『うん、子供は単純で良いね。切り替えが早いと言うか、そうだ、話は変わるけど僕とシロが暫くあの子達に交互に付こうと思うんだ』
「あ、そうか。いくらシロとクロと一緒に居たからって、寧ろ狙う人とか出そうだもんね」
『そう言う事。シューちゃんって基本鋭いよね。とんでもなく鈍い時もあるけど』
「あはは、気付くか気付かないかの差でしょ? 程度の差はあれ誰しも勘が鋭い時と、何故か気付かいない時とあるしね」
『それもそうか。そんなもんだよね』
「そうそう、だから今回の件は彼らの為だろうし、気にしてないって言うより僕個人はありがたく思ってるからね」
『……シューちゃんって鋭い時偶にそう言うスキルあるのか勘ぐりたくなるよ』
シロの言葉に苦笑いで返す僕。うん。だってこの状況なら分かるでしょ。偶に転がるように逃げてる人居るし。近づく相手限定で考え読んでるなって事くらい。クロシロに話しかけたい人には無下にしてる分けないし、なのにそんな人達が出てるって事は内心で黒い事考えてるって事なんだろうからね。
うん、基本的人懐っこいけど、シロもクロも身内や気に入った人に害をなす相手酷く嫌うからね。それに、僕も自分達を害そうと近づく人間に好意なんか抱ける訳ないから、いい気味としか思ってないし。ちょいちょいひっくり返る様に逃げ帰る人達の人数見てると、寧ろ感謝を抱くのは当たり前ですよっと。
と、周りを見ていたら急にある方向の人垣が割れて、中には跪く人も。うぇー。一体どうしたんだ!?
あぁ、そう言う事。って言うか、あれ半ば後悔してはないだろうか。先陣を切る項垂れたゴブリンと周りを囲む近衛騎士達。察するに僕に会いたいなっとか言ってしまったか何かで、あういう現状になったのだろうな。
いやぁ、これから僕も巻き込まれるかと言う思いはなくはないけど、あまりに不憫でそれも仕方ないかなぁって思う。
「シロ、周りが何を思っていようと通して上げてね。マリーちゃんが不憫すぎるから」
『む、気持ちは分かるけど、顔隠してる奴らが不埒な事考えてるから追い返したいんだけど。
まぁ、1人は面識あるしピンク色になってるだけだし、彼女は見逃して上げても良いけど、他のがね』
うおー、物凄い心配って感じだ。ってか、顔隠して面識ある近衛騎士ってリンガさんじゃないか。隊長さんなのにフットワーク軽いな。もっとデスクワークとかで忙しいイメージあったのに。まぁ、王女様の護衛だし、僕もシロクロの御陰で重要人物としてリストアップされてるだろうし、考えてみたらそんなにおかしな事でもないのかも。
あれ、でもピンク色って職務中にそんな事考えてるの? えっ、実はエッチな人だったって事!? 意外だなぁ。
「じゃぁ、リンガさん以外城に帰ってもらえば良いと思う。シロクロも一緒に皆で城まで送れば大丈夫だろうし」
『うーん、ここに長居するならその方針で、帰るならすぐ帰って貰うで行くよ。別に僕は長居して欲しい訳じゃないからね』
シロの提案に頷く。まぁ、周りを帰したら自ずと残ってって言ってるって解釈になるだろうし。僕もそこまで此処で話したい訳じゃないからね。週に1回は行く事になってるみたいだし。
【ごめんなさい、ほんとごめんなさい。ボソッと早く会いたいなぁとか言ったらこんな大事になりました。他意はなかったのよ、本当に】
【あー。うん、見てたら分かるから良いよ。大変だったね】
滅茶苦茶落ち込んでるなぁ。日本人気質で大事になった事と色んな人に迷惑掛けかねない事に凹んでそう。で、日本人気質らしく場の勢いと流れに逆らえなかったってところかな。うむ、前世の頃から割と思った事を言える口で良かった。一長一短だろうけど、この場合は僕の性格だと回避出来てると思う。
『シューちゃん、話は付けたから大丈夫だよ』
「おー、もう付けてくれたんだ。ありがとう……あれ、リンガさん何で兜取ってるの?」
「いえ、シロ殿に兜を外すよう仰せつかった物で。他意はありません」
【あいつら私がいくら遠慮しても強引に付いて来たって言うのに。ムーカーつーくー】
【まぁまぁ、きっと皆心配だったんだよ】
【ゴブリン達はきっとそうだけど、他の奴らは分からないわよ。ほんとあいつらの欲の深さって計り知れないんだから】
【あ、そうなんだ。えっと、ごめん】
【ううん。こちらこそごめんなさい。って、何でリンガが残ってんの? こいつこそ1番の危険人物じゃない。貴方にとってはだけど】
【ふぇっ? 何で?】
【何でって――】
『ちょいとお2人さん。2人で通じる言葉で話すのは良いんだけど。少なくとも今は控えない? それとも2人の考え読んでも良いなら構わないけど』
「私は構います。何故こちらをチラチラ見られるのか、物凄い不安です」
うわぁ、本当に滅茶苦茶不安そうな顔だぁ。ごめんね。別に悪い事言ってた訳じゃないよ。話題には出てたけどって、1番の危険人物って悪い事かも。ほんと何だろう?
まぁ、仲間はずれは良くないよね。
「ごめんねー。ちゃんとこっちの言葉で話すよ」
「えぇ、ごめんなさい。流石にちょっと考えを全部読まれるのって辛いわ」
『分かれば宜しい』
ん、じっとマリーちゃんを見てどうしたんだろ? マリーちゃんなんか頷いてるし、僕に聞かせたくない事かな。
「それにしても、シューリック様。再びお会い出来て光栄です」
「うん、僕もリンガさんと会えて嬉しいよ」
わー。美人の笑顔ってやっぱり素敵だなぁー。って。何故か跪いて僕の手を取るリンガさんってー、うわー。手の甲にキスされちった。えー、ドキドキするんだけど。
「私も再びお会いできぐえっ」
「シロちゃん、よくやった!」
うおー、突然白い何かに潰されたと思ったら白の手か。大丈夫かなリンガさん。怪我してなければ良いけど。
「し、シロ殿。何故?」
『お前調子に乗りすぎ。そこまでを見逃す訳ないじゃん。僕だってまだやった事なかったのに。これは宣戦布告って認識で間違いないよね?』
「もももも、申し訳ございませんでしたー。大丈夫です。私これ以上何かしません」
「って言ってもこっちの女子ってオークとゴブリン以外すぐ我を忘れるのよねー。シューさん。現状をちゃんと確認出来てる?」
おぉ、突然振られたけど、訳が分からない。とりあえず首を縦に振ってっと。
「よく分からないけど。現状ってシロがリンガさん潰してる事なら分かってるよ?」
「……シューさん。申し訳ないけど貴方前世でモテてなかったでしょ?」
うおー、疑問文っぽい問いかけしてるけど、これ確信持って言ってるよね!? うう、どうせモテない男でしたよーだ。
情けなく思いつつ頷くと、盛大に溜息を付かれる。
「ほんとこの世界では気をつけた方が良いみたいよ。こそっと昨日別の転生者の話読んだんだけど、最後哀れだったし」
「えぇ、それ怖いんだけど」
『あー。シューちゃんは僕らが居るし、徐々に覚えていけば大丈夫だから怖がらなくて良いんだよ。こうやって守るし』
「ぐえっ、あ、あの、そろそろ放して頂きたいのですが」
「わぁ。リンガさん!! シロ、お願いだから開放してあげて」
『むー、まだ仕置きが足りないと思うけど。ちゃんとシューちゃんに感謝して自重しろよ』
ゴロンと転がされるリンガさん。ただ、すくっとすぐに立ち上がるところを見るに、大丈夫そう。うん、心配で駆け寄りそうになったけど、杞憂だったね。
それよりも、マリーちゃんの事がうおっ、クロ達がじーっとこっちを見てる。
『シューちゃん。皆に事情説明しないと混乱してるわよ』
言葉通り困惑顔の皆。ってか、確かに困惑もするよね。慌てて皆に説明へと奔走する。
「ふぇー、シューちゃんってお姫様とお友達だったんだー」
漸く緊張感の取れたキララの声色に、説明疲れしてきた僕もホッと安堵の息を吐く。質問攻めにもなったし、疲れたなぁ。カリンはとりあえず放置で良いかな。突然興奮しだしてマリーちゃんに突進してリンガさんに跳ね返されてたけど。あれは流石に自業自得だと思う。
「やー、流石に想定の範囲外過ぎて、うーん、伝説の神獣と縁を結んでるだけあるわね」
「あ、と言うかもう言っちゃうけどシューさんってこの国で王様よりも発言力あるから。そんな人物と友達の貴方達は私とも友達ね」
ちょっ、突然何言い出すの!? そんなの初耳何だけど! って、こっち見てニヤーっしてる。そのいやらしい変化物凄い分かり易いよ。じゃなくて、美形ばっかりとか卑怯者ーって発言、そんなに意識してなかったけど根に持ってたのか。
「うへぇっ、姫様と友達なんて恐れ多くて……」
「そもそもゴブリン族とお友達になれるなんて思ってもなくて。後、カイト変な声出てるよ」
「うふふ、大丈夫よ。学校行ったらゴブリン族と仲良くなれるの普通みたいだから、それが早まったと思ってれば良いのよ」
「チャムチョム。男は兎も角、女は相手にされないって聞いてたー」
「あら、大丈夫よ。別に相手が女の子でもね」
「えー、僕らと仲良くしてくれるの!?」
「ふふふ、私は変わり者みたいだからね。キララ」
あー、カリン目に見えて落ち込んでるな。なんか僕はレズじゃない、僕はレズじゃないって呟きまくってるし。うん、色々落ち着いてないと後で後悔するんだよね。まぁ後悔先に立たずって言葉があるくらいだから、仕方ないのかもだけど。
「カリン、元気出して。そもそも突然初対面の人間を襲うこと事態変態だから」
「へ、変態……」
「カシューム、それワザとやってるでしょ? ほら、カリン元気出して」
「うう、シューちゃぐえっ」
「うわぁ、カリン!? やりすぎだよ」
ちょっと、普通に数メートル吹っ飛んでったんだけど。まぁとんでもない勢いで抱きつかれそうになって一瞬恐怖を抱いたけれど。これはあんまりだと思う。やったリンガさんとシロはシレーっとしてるし。大丈夫か様子を見なきゃ。
「大丈夫カリン?」
「あうー。とりあえず生きてるよー。でも、ダメー」
わぁ、ぐったりしてる! 何故か返事出来てるみたいだけど。ううん、でも僕父さんと違って別に何かしら出来る訳じゃないからなぁ。どうしよう。
「あー、シューちゃん。カリンなら大丈夫よ。もっと酷い目にあっても生きてたし」
「まぁ、打撲と打ち身だけでしょ。私達ですらもっと酷い目にあった事あるし慣れよ慣れ」
「あ、あれで大丈夫なの? この世界の人間ってどうなってるのよ。普通死ぬでしょ。
ってか、皆もあんな目にあった事あるの?」
「うわぁ、マリーちゃん落ち着いて。ほらキララ鼻血!」
「ちゃ、チャムチョムも出そうかもー」
「ダメよマリーちゃん。ゴブリン族ってだけで女どもは舞い上がってるんだから、そんな無防備な姿晒したら」
「そうそう、私達でも危ないのに、女どもじゃ我慢出来ないわよ。こりゃぁ女どもが同性愛にも走るわけ納得できそうだわ」
「えっえっ、色々初耳なんだけど」
助けを求めようとしたら、あっちはあっちで大惨事になってる模様。うん、これはかかわらない方がいいかも、でも、リンガさん、貴方護衛の筈なのに何でこっち側に来てるの?
「シューリック様。さぁそんな不届き者放置して構わないかと思いますが」
「むー、そんな優しくないリンガさん嫌い! でも、大丈夫なら良かった」
とりあえず膝枕してみる。あ、少し表情和らいだ。これは効果的なのかも。
『馬鹿か余計な事抜かすからシューちゃん膝枕なんかしちゃっただろ。糞が殺すぞ』
「し、シロ? なんか偉い物騒な口調で物騒な事言ってるね」
『あわわわわわ、シューちゃんこれは違うんだ』
ちょっとシロも怖いから放置してよう。怒りが収まってくれると良いんだけど。何がそんなに気に入らなかったのかなぁ? 膝枕して頭撫でるのってシロにも偶にしてあげてるけど、嫌だったとかかな?
うーむ、まぁ今はカリンが心配だからね。うん、なんかニヤニヤして気持ち悪いけど、偶に顔しかめてるし。多分無理に我慢してるのかもなぁ。
「大丈夫? 僕にはどうする事も出来ないからお医者さんに見てもらう?」
「ううん、シューちゃんにこうして貰えてだいぶ良くなってきたから、出来ればそのままで」
「分かった」
おー、僕もなんか力あるとかかな? 一応寵愛とかあるしね。って、いつの間にシューちゃんが定着してるんだけど。シロもクロも言ってるからなぁ。
『しゅ、シューちゃん。怒ってない?』
わぁ、物凄い落ち込んでるよ。慌てて首を振る。
「大丈夫、ちょっと怖かったけど、寧ろシロが怒ってるんだって思ってた」
『お、怒ってなんかないよ! しかも何に怒るんだよ』
「や、膝枕嫌いだったのかなぁって」
『好きだよ、出来れば毎日して欲しいよ。あ、出来れば撫でてー』
おぉ、なんか必死な勢いだったけど、甘える様に体擦り付けてきた。うん、モフモフー。良かったー。嫌われてなくて。
って、リンガさんまだ固まってる。うーん、流石に可哀想だな。
「リンガさんも元気出して。リンガさん自体は嫌いじゃないから。でも、人によって露骨に態度変えないでね」
「わ、分かりました。で、出来れば私も頭を撫でて頂きたいのですが」
ふぇっ、リンガさんも撫でて欲しいって物凄い違和感あるのだけれども。わぁ、頭突き出されちゃった。そ、そんなに言うなら撫でてあげよう。でも、ほどほどにしないとまた腕が上がらなくなりそう。カリンが切なげに見上げてきたけど、膝枕して上げてるし放置。
『まぁ、あれだけダメ女どもの見本見せられると、何を反省すべきかキララとチャムチョムは分かるわよね』
「うん、以後気をつけます」
「チャムチョムも気をつけるー」
「で安心しちゃダメなのよ。分かったマリーちゃん」
「えぇ。分かったわ」
「んー、でも、マリー君じゃダメなの? 女の子にちゃん付けじゃおかしいよ」
「えっ、そうなの? じゃぁケインはケインちゃんって言った方が良かったりとか?」
「まぁ、私にもあえて付けるならカシュームちゃんかな。一応噂には聞いてたけど、マリーちゃんって転生者らしいじゃない? でも、一応常識じゃそうかな」
「えええ、誰もなんで言ってくれなかったのよ」
「あー。私もあまり知ってるわけじゃないんだけど、転生者って男女逆って聞いたことがあるから、だからじゃない?」
「もしくは下々の者くらいしかちゃん君を使わないからじゃない? 下町なめんなよ」
「カイト、流石にお下品すぎるわよ。マリー君もいるのに」
「あわわ。失礼しました」
「いや、気にしてないからそっちも気にしないで。後君付けで大丈夫です」
うん、向こうは和気藹々と話してるな。問題なく仲良くなれたみたいで一安心。お姫様だもんなぁ、普通恐れたりしそうだと思ったけど。とは言え皆小さいから実際はよく分かってないのかも。実は意外と普通に話せるけど、子供って実際はこんな感じだしね。
後、虐げられてるから、ある程度はしっかりせざるを得ないのかも。
むぅー、なんとか出来れば良いとは思うけど、こういうのって個人の力でどうこう出来るものじゃないんだよな。まぁ、少なくとも手の届く範囲位は何とか出来るようになれるよう頑張ろう。
って、あれ? 肝心の遊ぶ事って出来てなくない! わぁ、これは早くしないと遊ばずに1日終わっちゃう。皆と仲良くなれたから、それはそれで良いんだけど。折角なら遊びたい。
思ったら即行動だよね。ふと撫でられなくなってこっちに視線を向ける2人ににっこり微笑み。思いついた提案をする事に。
「皆で鬼ごっこしようよ!」
「かしこまりました」
『了解ー』
「ふぇー。まだ膝枕さててた。いやいやいや。僕も遊ぼうかなーって思ってたんだ」
ありゃりゃ、2人に睨まれて可哀想。と、何故か同時に3人が僕の方を向いて、一瞬3人で視線を混じらわせた後シロが代表して聞いてくる。
『で。鬼ごっこって何?』
ええええええ? この世界って転生者前にもいたんじゃないの!?




