プロローグ
当作品は男女あべこべ作品の数々をリスペクトしております。
素晴らしい作品の数々がなければ誕生しなかった事でしょう。
上記の作者様方に深い感謝と尊敬の念を胸に、あべこべブームの躍進に僅かにでも力になればと願う所存です。
男独り身だったけど、家族仲は良く。仕事に趣味に充実し。大事な友人達に囲まれ。まぁ悪くない人生だったと思う。
30歳だったと思えば短いなぁとも思わなくもないけど。可能な限りやりたい放題やらせて貰ってたんだ。悔いはないよ。
ただ、一つだけ我が儘を言えば俺だって可愛い彼女の一人や二人欲しかったんだ!
「ふむふむ、纏めちゃいましたね」
あぁ、長々とすまなかったね。結局俺が言いたいことってそう言う事なんだよ。
でも、こんなおっさんの長話に付き合ってくれてありがとう。
「いえいえ、こちらも楽しめましたし。結構ですよ」
そう言ってもらえると嬉しいよ。
「はい、ここに自我をこれほど持っていらっしゃる方も珍しいですし。その上心に残る想い全てをぶちまけて尚残っていらっしゃる方は初めてですから」
ん? それはどういう意味?
「ふふ、ご自分がお亡くなりになった事はきちんと把握してらっしゃるのに。これでは現世に戻せませんね」
いや、まぁ確かにあのスピードの車に撥ねられて生きているとか思えないけど。
「あぁ、ご自分の今までの記憶全てを放棄なさるのでしたら、前の世界に戻れますが、いかがなさいますか?」
へっ? それって俺が俺じゃなくなるって事?
「はい。それがお嫌でしたら、別の世界に生まれ変わる事になります」
えっ? 二択しかないの?
「えぇ、その二択しかありません」
うーん。元の世界に戻れても俺が俺じゃ無いなら意味ないし。ってか死にたくないし……。あれっ? 死んでるのか。まぁ兎も角自我が消えるのは嫌だなぁ。
「では、別の世界に生まれ変わると言う答えで良いですか?」
うーーーーん。はい。それでお願いします。
「分かりました。それではあちらの方に向かって下さい」
了解。それじゃぁさようなら。
「えぇ。さようなら」
これが未だ誰にも打ち明けた事のない、生まれた時から持っていた記憶の一つ。
この記憶だけは本当に不可解で。その場所も相手も思い出す事すらできず。そもそもちゃんと喋ってたような感覚すらない。相手の声も心に響いてたような気がするし。
ただ、その不思議な優しさを纏った声に深い感謝を怠る事は今までも、そしてこれからもないだろう。
転生させて下さって、本当にありがとうございました。