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IL  作者: 月山 耀真
2/4

prelude1-2

 雲ひとつない。

 「なぁ、にぃちゃん・・・。」

伸びている途中に、突然声を掛けられたのでビックリした。振り返ってみるとバイクにまたがった毛むくじゃらなオッサンが、無表情でこちらを見つめていた。

「はぁ、なんでしょう??」

「そいつは、あんたの?」

オッサンは、俺のバイクを指差している。

「たぶん・・・」

「たぶん??」

実は、あのバイクは目が覚めた時に近くにあっただけで、自分のものでは無かった。

「違います。俺のじゃありません。」

「ふ~ん」

「何か、用ですか?」

「いや、違うよ…。ただ何か誰も元気そうな奴がいねぇからよ…。」

「俺が元気そうだった?」

「そういうこと。いいバイクじゃねぇか。」

白い歯で、ニヤッと笑うとオッサンはタバコを吸い始めた。俺はどこから来たのか、何しに来たのかを尋ねたが、オッサンは「しらねぇ」「わかんねぇ」と言うばかり。

「なんで、そんな事聞くんだ?」

オッサンはバイクから降りて、地面に転がっている角材に腰を下ろした。俺もバイクのスタンドをかけて、地べたに座った。

「何でだろう?俺も自分のことがわかんねぇ。突然こんなふうになって。」

「突然??」

オッサンは初めて表情を変えた。なんだか驚いている様子だ。

「そう、突然…。何もかもが変わってしまって。町もこんな廃墟だらけじゃなかったのに。」

「……」

「俺らが寝ている間に、何があったんだか…」

青い空を仰ぎながら、呟いた。考えても無駄なことなのに…

「いったい何のことだ?」

オッサンが口を開いた。明らかにさっきまでのふざけた感じとは違う。

「??」

なぜ?この人は知らないんだ?考えにふける。

「どういう事だ!?」

襲い掛かるように聞いてきたので、あせって答えた。

「何のことだか、こっちが知りたいよ…」

「…」

オッサンは何だか、深く考え込んでいるようだった。ずいぶん長く、20分ぐらいしてようやく元に戻った。

「どうしたの?」

「いやいや、考え物。でももう大丈夫。」

 不精髭を掻きながら、作り笑いをうかべる。

「はぁ…」

いきなりオッサンは立ち上がって、俺を見下げた。顔面は影になって見えなかったが、こっちを向いて言っているのは確かだ。

「お前、仲間はいるか?」

タバコを足元に落とし、踏みにじる。タバコの香りが鼻をくすぐった。

「はい、二名だけですが…」

咽ながら答える。

「よし。そいつらにも合わせろ。」

 声は相変わらずのふざけ調子だったが、顔が真剣だったので、俺は断らなれかった。でも理由が気になった。なぜ?

 正直、信用できそうにない。

「お前らに伝えることがある。」

 心で思っていたことの回答をされてしまったので、焦りを笑いでごまかした。

「でも…」

 完全に鎮火したタバコを見つめながら、言った。

「大丈夫。お前たちに損になるような事はしないさ。」

オッサンはバイクに乗ると、張り切った声で叫んだ。

「よ~し、行くぞ~」

「でも、場所知らないでしょ…」

 前方で張り切っているオッサンを牽制して、前に出て言った。

 「じゃぁ、こっちです。」

 エンジンは、二台とも好調だ。唸りを上げて走り出す。


こんにちは、月山輝真です。

昨日に続きまして、最新作を投稿いたします。

まだまだ話は序盤です。仲間である人々と会っていなければ、このオッサンの名前も未発表です。

まだまだ盛り上がりには欠けますが、徐々にテンションを上げていきたいな、と思っています。

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