prelude1-2
雲ひとつない。
「なぁ、にぃちゃん・・・。」
伸びている途中に、突然声を掛けられたのでビックリした。振り返ってみるとバイクにまたがった毛むくじゃらなオッサンが、無表情でこちらを見つめていた。
「はぁ、なんでしょう??」
「そいつは、あんたの?」
オッサンは、俺のバイクを指差している。
「たぶん・・・」
「たぶん??」
実は、あのバイクは目が覚めた時に近くにあっただけで、自分のものでは無かった。
「違います。俺のじゃありません。」
「ふ~ん」
「何か、用ですか?」
「いや、違うよ…。ただ何か誰も元気そうな奴がいねぇからよ…。」
「俺が元気そうだった?」
「そういうこと。いいバイクじゃねぇか。」
白い歯で、ニヤッと笑うとオッサンはタバコを吸い始めた。俺はどこから来たのか、何しに来たのかを尋ねたが、オッサンは「しらねぇ」「わかんねぇ」と言うばかり。
「なんで、そんな事聞くんだ?」
オッサンはバイクから降りて、地面に転がっている角材に腰を下ろした。俺もバイクのスタンドをかけて、地べたに座った。
「何でだろう?俺も自分のことがわかんねぇ。突然こんなふうになって。」
「突然??」
オッサンは初めて表情を変えた。なんだか驚いている様子だ。
「そう、突然…。何もかもが変わってしまって。町もこんな廃墟だらけじゃなかったのに。」
「……」
「俺らが寝ている間に、何があったんだか…」
青い空を仰ぎながら、呟いた。考えても無駄なことなのに…
「いったい何のことだ?」
オッサンが口を開いた。明らかにさっきまでのふざけた感じとは違う。
「??」
なぜ?この人は知らないんだ?考えにふける。
「どういう事だ!?」
襲い掛かるように聞いてきたので、あせって答えた。
「何のことだか、こっちが知りたいよ…」
「…」
オッサンは何だか、深く考え込んでいるようだった。ずいぶん長く、20分ぐらいしてようやく元に戻った。
「どうしたの?」
「いやいや、考え物。でももう大丈夫。」
不精髭を掻きながら、作り笑いをうかべる。
「はぁ…」
いきなりオッサンは立ち上がって、俺を見下げた。顔面は影になって見えなかったが、こっちを向いて言っているのは確かだ。
「お前、仲間はいるか?」
タバコを足元に落とし、踏みにじる。タバコの香りが鼻をくすぐった。
「はい、二名だけですが…」
咽ながら答える。
「よし。そいつらにも合わせろ。」
声は相変わらずのふざけ調子だったが、顔が真剣だったので、俺は断らなれかった。でも理由が気になった。なぜ?
正直、信用できそうにない。
「お前らに伝えることがある。」
心で思っていたことの回答をされてしまったので、焦りを笑いでごまかした。
「でも…」
完全に鎮火したタバコを見つめながら、言った。
「大丈夫。お前たちに損になるような事はしないさ。」
オッサンはバイクに乗ると、張り切った声で叫んだ。
「よ~し、行くぞ~」
「でも、場所知らないでしょ…」
前方で張り切っているオッサンを牽制して、前に出て言った。
「じゃぁ、こっちです。」
エンジンは、二台とも好調だ。唸りを上げて走り出す。
こんにちは、月山輝真です。
昨日に続きまして、最新作を投稿いたします。
まだまだ話は序盤です。仲間である人々と会っていなければ、このオッサンの名前も未発表です。
まだまだ盛り上がりには欠けますが、徐々にテンションを上げていきたいな、と思っています。