ぼくの居場所
◆
ピロンッ
明るい音が鳴るどうせゲームの通知音だろう。そんなことより今何時だ―――
「うっ.....おえ」
ひどい吐き気に頭痛、睡眠薬を飲みすぎたせいか。
副作用に見舞われつつもスマホを開く。
「...なんだこれ」
一番最近に目に入ったのはさっきの通知の正体だった。
「陸上部顧問が一年マネージャーに暴力...」
読めば読むほど辛くなる。だってそこにはぼくの名前、ぼくに関することが一切書かれていないのだから。
「なんで...」
被害者ヅラしたいわけでも、誰かに慰めて欲しいわけでもない。ぼくに影が、居場所が、存在がないことがただただ辛かった。
「もういいや...」
ぼくは途中で学校新聞の記事を閉じた。
時間はまだ11時、母親が帰ってくるまでまだまだ時間がある、それだけが今の少しの救いなのかもしれない。
そんなことを考えながら、
ぼくは“ここじゃないどこか”へ逃げるように目を閉じた。
◇
「海斗ー!部活行こうぜ!!」
「相変わらず元気ですね、いいですよ行きましょう」
話しながらバトル研究室へ向かう。
「なんでさ研究室って名前なのにこんな体育館みたいにでかいんだろーな」
「そりゃバトルを研究してそれを試す部活ですから試す場所がないといけないでしょう?」
「まーそれもそっか!でもさめっちゃ暴れても壁や天井が壊れない結界ってすげーよな!」
「まあこの学校のバトル研究部は日本の中でも一番すごいと言われてるんですから協力してくれる人たちもすごい人ばかりなんでしょう」
「おーヒーロー気取りの変人やん」
「え、言われてるよ海斗」
「いやいや多分私たち2人に行ってるんじゃないですか」
「そうやお前ら2人に言ってんねん」
「ヒーロー気取りって、自分ら本物のヒーローなんですけど」
「いやいや今どきヒーロー名名乗ってるやつおらんて笑笑、しかもこの部活では基本魔法しか使わんらしいやん?もしかして祝福とか貰えんかったん?笑笑」
「いや〜ヒーロー名というか配信者してる以上偽名は欲しかったしー、別に祝福は貰ってるけど基本魔法の研究に魅力を感じてるだけね?」
「ふーんそうなん、でも基本魔法でイキッてる奴らが世界ランキング上位とかなんか気に食わんわ〜」
いやなんなんだこいつは、誰だよ!?
関西の子なんだろう、喋っていると釣られてしまいそうになるな。
「ねぇ君そもそも名前なんなの?」
「なんや!?お前俺の名前知らんのか?関西の百鬼って呼ばれてる坂本半蔵やで?中学生日本バトル大会優勝者の坂本やで?ほんまに知らんのか?」
「あー海斗聞いたことある?」
「まあ一時期話題でしたから聞いたことはありますよ」
坂本半蔵...あー出てきた本当に有名な人なんだ検索したら一番上に【日本最強中学生!!】って見出しの新聞がある。うーん本人には申し訳ないけど知らないなぁ
「まあ君がすごいのはわかったけど、なんでここにいるの?」
「それはこの部活に入部したからに決まってるやろ」
「え?いつ?」
「今日や」
「今日!?もう今年終わるのに?こんな時期に部活入るなんて遅すぎない?」
「色々あったんや、ぐちぐちうるさいでヒーロー気取り」
「ヒーロー気取り...まあいいや坂本はなんでこの部活に?」
「あんま馴れ馴れしくすんなや、俺はお前らヒーロー気取りと戦いにきたんや」
「私たちに戦いを挑みにきたんですか?」
「そうゆうことや」
えーめんどうだなぁ...まあ戦うのは嫌いではないけど、林太郎みたいな戦闘狂じゃないし...まあ一回でボコボコにすればいいか
「なんやその顔は、No.1がびびっとるんか?」
「いや〜そうじゃないけど気分じゃないというか、めんどくさいというか」
「なんやそんなだっさい言い訳並べて逃げるんか笑笑」
この流れは絶対今戦わないと行けないか...てか今思えば"ヒーロー気取り"とか言われてムカついてきた。
「いや、いいよやろうか」
「お、いいやんこれで俺が勝ったらNo.1の座は貰うで」
「いいよあげる、その代わりちゃんと祝福も使って本気で戦うね」
「本気ね、まあ舐めて勝てるほど俺は弱ないしな、それぐらいしてもらわな」
2人は戦闘用ステージに立つ。
そうして隼人は呟く。
「久しぶりの本気バトル楽しんでいこうか」
―――ここが、今の隼人の居場所だった。
三合学院の学校連絡アプリから、校長による謝罪文と陸上部顧問暴力の記事を抜粋
校長から
全生徒へ
昨日陸上部顧問の山下太が陸上部のマネージャーへ暴力をしたことは事実であり、学校として深くお詫びいたします。これは私たち教員が早く気づくことのできた事です、今後はこのようなことがないように教員の教育や教育方針などを厳しく見ていこうと思っています。本当に被害を受けた生徒には深くお詫びいたします。
学校新聞部
〈陸上部顧問、生徒に暴力!?〉
昨日の部活中に、陸上部顧問の山下先生が陸上部のマネージャーに暴力を振るった事件が起こりました。
これは証人もいて紛れもない事実であり、本人の山下先生も認めている事です。
マネージャーは一年生で左頬がとても赤くなっており泣いていたそうで、叩かれた音を聞いた2年生の部員が、音を聞いた場所へ向い、そこで現場を見たと、二年生の北見翔太氏と長尾真斗氏が証言しています。それ以外の部員も真斗氏に呼ばれその現場を見たと言っています。
まさか前々から噂になっていた[山下先生は生徒に暴力を振っている]という話は本当だったようです。
しかしこのような事件は今どき珍しく、本当にひどい事件だと思います。二度と起こらないように教師の指導を厳しくお願いしたい所存です。
追記:色々な人に聞いているうちにマネージャー以外にももう1人暴力を受けていそうな人がその場にいたと聞き、新聞部全員で今調べています。




