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「ーーーーーーで、ーーーーだったんですよ」


凛さんが真剣に黛先生に説明をしてくれてるけど、なぜか全てを聞き取ることができなかった。こんなに近くにいるのに。





「中越くん保冷剤で15分ぐらい左頬冷やしときなさい」

「...はいありがとうございます」

「それと両手首の傷は、絆創膏新しいのあげるわ」

「はい」

「隼人大丈夫?痛くない?」

「うん、大丈夫だよ」

「.....ここまで連れてきてくれてありがとうなんだけど、一回田中さん外に出てくれる?」

「え?はいわかりました」


パタンッ


黛先生が聞きたいことはわかってる。



「中越くんその両手首の傷ってもしかしてリスカ?」

「.....」

「言いたくないならいいのよ?無理しなくても、でも私たち先生はあなたの味方なの」



先生という言葉を聞いて体が震える、まだ先生から殴られたという衝撃が消えない。


「この傷はカッターでやりました...ごめんなさい」

「謝らなくていいのよ、あなたは悪くないんだから、そうねぇリスカのことを誰かに伝えることに抵抗はある?」

「いやないです」

「そう、ならスクールカウンセラーに相談する?」

「いや...そうします」



本当は嫌だけど体が反抗を許してくれない、でも全員山下先生みたいな人ではないはずだから見てもらって損はないのかもしれない。



「その、リスカのことは田中さんは知ってるの?」

「いや、知らないです。ぼく以外誰も」

「家族も?」

「はい」

「そう、ならスクールカウンセラーの方にはそう伝えとくわね」

「お願いします」




「隼人、大丈夫?その両手首の傷ってリスカだったんだ」

「え...?聞いてたの?」

「ごめんねその食堂で待つつもりだったんだけど心配で保健室の前で待ってたら聞こえちゃって、誰にも言うつもりないから大丈夫!安心して!」

「大丈夫だよ、ぼくがやったことだし、それでさスクールカウンセラーに見てもらうことになったから先戻っておいてよ」

「待つよ」

「え?」

「待つよ私、隼人が心配だからできるだけ側にいる」

「わかった...ありがとう」




スクールカウンセラー室の前に立った、しかし入る勇気がでない。



「隼人大丈夫?今日無理して相談しなくてもいいんじゃない?」

「いや...次いつ学校に来るかわかんないし、今相談しとくよ」



なんて言われるかわからない、否定されるかもしれないし、怒られるかもしれない。それが怖くて一歩が踏み出せない。


その時背後から声がした。


「もしかして君が中越くん?」

「え、はいそうですけど」

「黛先生から聞いたよ、えーと私の名前は松井、中入って」

「はい...失礼します」



緊張する何を話せば良いかわからない。



「両手首のリスカはどうされたんですか?何か辛いことでもあったんですか?」



そう言いながら松井先生はノートとペンを取り出し書く準備を始める。



「これは...えっと、この学校に入学してからクラスに居場所がない気がして、ぼくなんかクラスにいらないんじゃないかって思って、そう思ってたら生きてる気がしなくて...それでやりました」

「そうですかそれは辛かったですね、他に辛かったとか、苦しいとかそのように感じたことはありますか?」

「...自分のことを上手く認めることができなくて、自己肯定感が低いというかそんな感じがします」

「なるほど。そう感じてしまう時期ですよね。学生時代は多くの方が通る道です。これからは少しずつ、自分を認めてあげることが大切ですね」



なぜだろう、話を聞いてもらっているのに会話をしている気がしない、この人の言葉は、ぼくじゃなくても成立してしまう気がした。



「他に何か相談したいことはありますか?」

「よく人と比べてその度に落ち込んでしまったり、自分を嫌いになったりします」

「その年代ではよくあるご相談ですね。私もこれまで何度もお聞きしています」


カチカチッ.....カリカリカリ



ペンでメモをする音がいつもより大きく聞こえる。




「そういえば、黛先生に左頬の怪我の件について言われていました。その左頬どうされたんですか?」

「....」

「言えないんですか?それなら無理にいう必要はありませんよ?」



この傷だけは言ったら何かされる気がする。そもそも先生が生徒に手をあげるなんて話も信じてもらえるかわからないし。



「言えないなら大丈夫です。では他に何かありますか?」

「もう特にはないです。」

「そうですか、わかりました色々辛いこともありますがこれから頑張っていきましょう。また何かあったら来てください、いつでも待っていますので」



そう言いながら松井先生はノートを閉じた。



「失礼しました」




...最後まで松井先生はぼくの目を見なかった、ずっとノートを見て、誰にでも言えそうなことを言っていたような気がする。



「あ、隼人話は終わった?話したいことは話せた?」

「うん、話せたよ待ってくれてありがとう」

「全然大丈夫だよーもしなんかあったら私にも話してよね!」

「うん、そうす―――」



(キーンコーンカーンコーン)



え...もう完全下校のチャイム?そんなに時間経ってたのか。



「ごめん!凛さん時間使いすぎた!凛さんはマネージャーの仕事しないといけないのに」

「全然大丈夫だよ!...あ!私山下先生から話があるんだった!ちょっと先行っとくね!ゆっくりでも良いからグラウンド来てね!!」

「あ、うん!ありがとう!!」



話か...少し心配だなと思いつつぼくは凛さんの背中を見届けた。

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