部活
◆
6時間目も終わり、帰る準備をしはじめる。
「疲れた.....」
そんな小さな声は、気づけば外に漏れていた。
「疲れた?隼人今日ほぼ寝てただけだろー?笑」
「あっ伊織!聞こえてたの?」
「小さい声で漏れてたぜ笑、まあ久しぶりの学校だったし、疲れるのも無理ないか、ゆっくり休んでな」
「うん、そうするよ!」
「今日は部活はオフなのか?」
あ.....部活か、行かないと顧問は古い人だから多分.....いや絶対怒られる。最悪、殴られるかもしれない。噂で前に体罰を受けた部員がいるみたいなのを聞いたことあるし...今日は部活に行くしかないか。
「今日は部活あるよっ!だから部活行かないと!」
「そうか、頑張ってな!」
「伊織もバレーがんばって!!」
そう言いながらぼくはロッカーから陸上用のスパイクを取り出しグラウンドへ向かった。
「お前は最近休みすぎだ!!何をしている!!」
ぼくはいま顧問の山下先生に怒られている。
「いや最近は学校を休んでたから行けませんでした...ごめんなさい」
「なら連絡ぐらいするべきだ!!違うか?」
「...はい」
「なんだその反抗的な目は、俺は何か間違ったことを言っているか?」
「いや、そんな目してな――」
「なんだ?反抗するのか?」
「違う……えっと、違います。もしそう見えたのなら、ごめんなさい」
「...ちょっと隼人こっち来い、ここでは見える」
「わかりました」
見える...?部員に見えるとまずいことってな――
パシッ。
視界が揺れ、左頬が熱くなる。
「最近の若いものは上っ面だけの奴が多いからな、言葉よりこういうので伝えていかないとならん。隼人!次からは休んだ分だからな!」
思考が上手くまとまらない、熱かった左頬には一本の水が伝っていく。
「.....え?」
小さい戸惑いの声はもう山下先生には届かない。
気がつけば、アップが終わっていた。
怒られている時に終わったのだろう。
「あ、隼人〜どこいたの?アップもう終わっちゃったよ?」
「あ、マネージャーごめ...じゃなくて、えと...あの、えーとトイレ!トイレ行ってたの!ごめんね!」
「そんなんだー大丈夫だよー久しぶりだしゆっくりでもいいからアップしてきな?」
「う、うんそうす――」
「隼人!早くアップに行ってこい!!」
「あちゃ怒られちゃったね、ごめんね私が引き留めちゃったから」
「いや、違うよ!ぼくが遅いからだよ!謝らないで!」
怖い怖い怖い、また...また殴られるかもしれない。早く急がないと、もっと早く早く走ってよ、ぼくの足!!
「隼人!なんだあのアップの仕方は!休みすぎでアップの仕方すら忘れたのか?」
「早く追いつかないとと思って...」
「だからと言ってあんなアップの仕方があるか!」
「ごめんなさい」
「隼人、お前は何回怒られるつもりだ?もう一回喰らっておくか?」
「嫌...あ、えと...ごめんなさい、次から言われた通りにするので許してください、お願いします」
自然と涙が流れだす。
次の瞬間、引いたはずの痛みが戻ってきた。
「そんなことで涙を流すな気持ち悪い、男だろ?男が脅されたくらいで涙を流すな」
「.....はい」
そう言い残し、部室から出て行った。
ガクッ.....
立たないといけないのに、何故が立てない、足が震えて...いや体全体が恐怖で震えて動けなくなってしまった。
「ちょっと!隼人!?大丈夫?」
上手く喋れない、涙で前も見えない。
「立てる?何があったの?」
「せんせいにな...ううん、怒られた、怒られただけ」
「ほんとに?隼人すごく震えてるよ?」
「大丈夫...立てる、立てるから」
「隼人?左頬あかい...何があったの?しかも両手首も傷跡ついてるし...本当に何もなかったの?」
「.....」
「隼人、何があったか教えて?中学の時は楽しく陸上してたのに最近の隼人楽しく無さそう、私のこと信用してよ中学からだけど三年も一緒だったじゃん!」
逃げたい、逃げたいけど言ったらまた怒られる気がする。
「とりあえず保健室行く?左頬とか冷やした方がいいかもしれないし」
「.....行く」
「わかった!一緒に行こ」
「いや、1人で行くよマネ仕事しないといけないでしょ」
「先輩マネいるし大丈夫だよ!それ以上に隼人が心配!」
止まりかけた涙がまた溢れ出す、久しぶりに優しさに触れた感覚だ。
「ほら!顧問に言いに行こ!」
顧問に言いに行く...?
涙...涙拭かないとまた殴られる。
「待って涙拭くから」
「保健室?なんで隼人を保健室に連れていく必要がある」
「左頬が赤いので冷やした方が良いと思って連れていくつもりです」
「そんなの暑いから赤くなってるだけだろそんなので連れていくな」
「.....なら隼人の両手首の傷が腫れてるのでそれを見せに行きます」
「...そうかならまあ良い1人で行かせておけ」
「いえ、私もついていきます」
「何故マネージャーのお前がついて行く必要がある」
「心配なので」
「そんなしょうもない理由でついて行くな、マネージャーの仕事は部員の手伝いだろう?」
「部員の怪我の治療も手伝いと言えるのではないでしょうか」
「チッ面倒くさい、わかったわかった勝手についていけ、でも田中お前戻ってきたら少し話がある」
「わかりました」
ぼくはその会話をただ聞くことしかできなかった。
自分のことなのに。
田中凛
中学の時から隼人と同じ陸上部に入っていた。中学の時は選手として走り幅跳びをしていたが高校に入りマネージャーになった。部内で唯一隼人と仲良く喋る人で、周りからは隼人と付き合っている疑惑がでたが、別にそんなことはなく、実際連絡先も持っているだけで連絡し合うことはないし、中学の時から部活以外ではあまり喋ることはない。




