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混濁


「西城さん!開けてください」

「あぁ今開けるよ」

「とりあえず学校あるんでこれだけ渡しておきます」

「ボイス...レコーダー?なぜこれを」

「放課後また来ます!!では!!」


とりあえずボイスレコーダーを渡せた、あとは今日からの一週間危機感を忘れずに生活することだな。




「セーフ!!」

「No.1〜ギリ遅刻じゃない?」

「いーや!セーフだから!あ!授業始まるし用意シナイト〜」





1限も2限も3限も―――何一つ頭に入らない。ヒーロー活動の事が完全に足を引っ張っている。どのヒーローを頼るか、どう動かすか、そのことばかりが頭の中を埋め尽くしていた。


どこかの国ではムー大陸はいずれ消えるなんて言われ続け、それを陰謀論なんて騒ぐ奴らもいて、でもこの先あいつのせいでムー大陸の状態は最悪になる。そうなればムー大陸に関する他の陰謀論の信憑性が上がってしまうかもしれない。


たとえどんな事があってもこの世界を背負うNo.1としてあいつの好きなようにはさせない。





なんてキリのいい夢だな、最近は妄想なんて気味の悪い所の話じゃなくて夢として自分が出てくる、別にそれが嫌なわけでもないけど少し怖い、僕の思い通りに行く妄想とは違って何が起こるかわからない夢に出るなんて......


「お腹...空いたな」


家には誰もいない、家族より欲求を選ぶ人も、自分の都合を押し通す人もここにはいない、いるのはただの不登校気味な高校生だ。


結構な時間寝ていたらしくもうとっくに日は暮れている、こんな時間になっても親は帰ってくる気配もなく僕は気怠い体を起こし少しづつ家事を始めた。




全てのやる事を済ませた途端に眠気が襲ってきた、明日も明後日も多分今のままでは同じことの繰り返しをしてしまうように感じた。


やりたい事は全然する気が起きない、まだログインできてないゲームも読み終わってない漫画もあるのに今は寝ることしか考えられない。


ジリリリリリリリリ...ジリリリリリリリリ...


カチッ


そうして気づいたら朝になってた、朝ご飯を食べて急いで学校に行く準備をする。


昨日と同じ光景、学校のものが前より輝いて見える、なのに気分はどうも上がらない、伊織と話していても、授業を聞いていても、体だけが、学校を楽しんでいる。


家に着いた、昨日とは違ってちゃんとやる事を終わらせてからベッドに潜った。


目を開けた時にはもう日が登っていた。


そんな日々が、もう3日も続いていた。今日も何も変わらない、でも、何かが確実に削れて行く感覚があった。


ただ学校に行き、家に帰って家事をする、そんな日々で目を閉じている時だけが唯一の休憩時間だった。


起きてもやる事は一緒で、家に頼る人なんて居ない、僕がやらないと家の中はどんどんと汚く、着る服も無くなる。


正直起きている理由が見つからなかった。




いつもみる夢。


自分が能力もない世界で人間の性格に悩まされて世界の理不尽に打ちのめされる日々の夢。


夢での自分は、何もできない。本当に仲のいい友達もいない。


その事実に自分の体に傷をつけ、白い腕を真っ赤に染める。カサブタになった傷も赤く細い線へと変わる。


それでもそんな自分を愛してくれる人はいない、親という概念もそこにはなく、友達も軽蔑の目で見る者が増える。そんな日々を淡々と過ごす過酷な夢。


でも、自分はそれを悪夢だとは思わない、この世界でも犯罪者に理不尽を強いられ泣いてる人は少なくない、そこから救うのが自分たちヒーローだから、その夢は自分にとって忘れてはいけないそんな夢な気がした。


夢で感じた痛みはわからない、だから自分のような未成年が自傷行為をする辛さを自分は知らない、でも他人に傷つけられるよりは絶対に痛い、それに記憶に残る。


ペシッ


「痛っ...何?」

「全然呼んでも無視するからさ〜デコピンしたんだよー」

「あぁ総一郎かごめんごめん考え事してた」

「珍しいねー休み時間なのに席から動かないなんて」

「え?あぁさっきまで寝ててさ〜」

「えー?授業中に〜!?よくないよーそれは」

「違うって!!休み時間に入ってからね!!」

「あはは〜そだよねー意外と真面目だもんね」


そんな他愛のない話も頭に入っているようで入ってこない、そう思い目を両手首に向けた。


別に傷があるわけでもあったわけでもないけれど、なぜか夢と比べてしまう、あの夢は自分の血だけど、この両手には他人の血で赤く染まっているような気がして―――


「おーい、大丈夫?」

「え?あぁ大丈夫大丈夫」

「ほんとに〜?めっちゃ手震えてるけど、あ!小テストの結果怖いとかー?」

「いやいや全然余裕でしょあんなの」

「あははそうだよね〜それでほんとはどうしたの?目の前で助けられた命を、失ったみたいな顔してるよ?」

「え...?」

「No.1だからって抱え込みすぎないようにねーまだ俺ら高校生だしー?全部受け止めれるような器じゃないんだよー?」

「あぁそうだな...てかどんな顔してたんだよ」

「あはは〜確かに〜!!」


抱え込みすぎない...ね、今度の夢にその気持ちを持っていければ誰かに相談する勇気とかでるのかな。


「それより〜大事な話って言われて呼ばれたんだけどなんだったのー?」

「あぁそれは―――」




ピロンッ


「ゆ...めか、こっちが夢であって欲しかったな...」


そんな叶わない事をつぶやきスマホを開く。


――――――――――――――――――――――

ゲーム喋る


久しぶりにみんなで遊びに行かない?20:47


――――――――――――――――――――――


その通知を見た瞬間、

さっきまでの重さが、嘘みたいに消えた。

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