変化
◆
ジリリリリリリリ.......
カチッ
スマホの画面には6時45分と表示されている。
「はぁ」
大きなため息をつく。
家には、昨日のままの空気と、憂鬱な高校生が1人取り残されている。
ベッドから起き上がり、キッチンへと向かう。
黙々とお湯を沸かしインスタントのスープを用意する。
今日からまた一週間が始まり、今日から毎日学校に行かなければならない、その事実に頭が痛くなる。
ピッ
『えー時刻は7時ぴったりになりました、朝のニュースを始めます』
静かだった部屋に男性の声だけが響く、でも僕の頭には上手く入ってこない、それは昨日やり忘れた家事に集中しているからなのか、それとも学校に行きたくないからなのか、理由はぼくにもわからない。
『―――鬱病や精神病について―――』
「鬱病、精神病?」
何故だかその一文ははっきり聞こえた。
『えー日本では生涯で4人に1人は精神病を患っていると聞きますが、皆さんはどう思いますか?』
『え〜私の周りではそんなに見当たらないですかね〜』
『僕の周りでも全然ですね』
『確かに私の周りでも見当たるかと言われると見当たらないです、しかしこのグラフを見てください、精神病や鬱病を患っている人は年々増えているんです』
『まあ確かに人に言うことでもないですし、増えてもわからないものなんですかね?』
『でも〜精神病院とかに行ってる人とか少なくないですか〜?』
『確かにアメリカや他国に比べると日本は精神疾患が多いのに精神病院の患者はそこまで増えていないのが現実です、そこでこのグラフです』
『え〜精神病院のハードルが高いって言っている人が7割以上いるんですね〜!』
精神病......関係が全くないと言ったら嘘になる単語だ、確かに精神病院はハードルが高い、それはぼくも思う、けどぼくはまだお世話になる必要がないとも思ってる......いやそう思っていたい。
そう思っていないと、小さい光すら手の中から逃げ出してしまいそうで怖かった。
『精神病は誰もがなるものであり、自分はならないと思っている人こそなる可能性がある病気です、人間関係や社内環境など、原因は様々ですが周りをもっと頼って生きていきましょう。これで朝のニュースを終わります。』
周りを頼る...か、少しは視野に入れて置こうかな、ってか朝のニュースが終わった?
「今何時だ!?」
時計を見ると7時半と表示されている。
「聞き入りすぎた、あと5分で準備しないといつもの電車に間に合わない!!」
急いで準備をして空っぽの家からでる。
「前と違って今はいってきますなんて言ってる暇ない!!」
「はぁ...はぁ...間に合った」
人が詰まっている電車内で小声で呟いた。
それにしても暑い、ぼくだけ季節を間違えたのか?
もう二月の中旬だと言うのに、体からの汗が止まらない、やっぱり走るんじゃなかったな。
ガラッ
学校に着いた、教室も暖房がかかっていて、ぼくの体からは汗が止まらない、ぼくだけ夏に残されたみたいだ。
「おー隼人!一週間ぶりぐらい?」
「伊織!そんなに経ったっけ?」
「多分?覚えてないけど、それにしても汗すごいな大丈夫か?」
「あはは...満員電車で暑くてさー困っちゃうよね〜」
そう言いながらブレザーを椅子に掛ける、伊織は相変わらず元気で無駄に話しかけてくる。
でもそれが前と違って嬉しいような懐かしいような感覚だ。
「伊織今日は朝練あったの?」
「おう!めっちゃ疲れたわ〜笑1限目から寝ないようにしないと」
「ふふ、お疲れ!」
「...!!ありがとな」
なんだろう普段だったらお疲れなんか言うことないのに、今日はなんだかぼくがぼくじゃないみたいだ......まるで自分のように振る舞っている気がする。
「隼人?なんか最近良いことあったのか?」
「いや?特に......あー一個いい事あったかも!」
「ふーんそっか何あったんだ?ガチャ神引きしたとか?」
「そんなんじゃなくて、えーとなんて言ったら良いんだろ...そうだなぁ小さい流れ星が掴めたみたいな!!」
まあ掴めたって言うか一瞬触れた程度なんだけどね...
でもその一文は心の奥にしまって置くことにした。
「...?まーどうゆうことかわかんないけど隼人が元気そうで良かったよ!」
「元気で良かった...ね、なんか嬉しいなぁ」
「なんか言った?」
「え!?あ、なんも言ってないよ!!それよりそろそろチャイムなるから席戻ろ?」
「確かにな!」
気づいたら言葉にしてしまっていた、伊織に聞かれていなかったのはまだマシか、それにしても今日の学校はなんだか楽しく感じる。
まだ朝のホームルームだと言うのに
黒板に文字を書く音
陽キャ達の話し声
窓から入り込む光
今まで感じた事のない...いや感じようとして来なかったもの達が色々入り込んでくる。
まだ汗は拭き終わっていない
しかしそれすらもこの明るい今日を彩っているような気がした。




