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僕らの毎日  作者: 目黒市


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幽霊のユウさんとフリーターのリオくん

 俺がいつ死んだのか、どうして死んだのか。

 そんなことはもう覚えていない。

 自分の名前だってわからないのだ。説明できないことは許してほしい。

 だから今日は皆本リオについて話そう。

 女のような名前だが男だ。


 大学を卒業したはいいが、就職活動に失敗して現在はフリーター生活を送る優男だ。

 本人曰くなんとかエムズとかいうアイドルの何某に似ていると言ってはいるが、俺に言わせればそこらの街を歩く量産型の若者に過ぎない。

 頭がいいわけでも、運動神経がいいわけでもない。学生時代はモテていたと豪語しているが、嘘だろう。コールセンターの女性相手にもドキマギしているような奴だ。

 ただそんなリオにもおそらくは世界で唯一の個性がある。


 俺が視えるのだ。


 リオと出会う前の俺は自分が死んだことは理解しているが、長い長い幽霊生活で俺は生前の記憶をすべて失っていた。

 一番古い記憶は幽霊になりたての頃だ。

 透明人間気分で色々と遊んでいたのだが、それも次第に虚しくなっていった。

 なにせ誰とも話せないし、何にも触れることすらできない。

 そこで考えることはひとつ。


 成仏しよう。


 まずはお寺。そして神社、さらには教会。最後には有象無象の新興宗教施設。

 色々訪れたが成仏することはおろか、気づかれることもなかった。

 

 そこからは完全に無気力。

 ただただ漂い続けた。雨、風もこの体を通り抜けていく。

 どのくらいの時が経ったのだろうか、次第に自分の意識が薄らいでいくのを感じた。

 この辺りから記憶も曖昧になった。

 時間の感覚も消えていた。

 気づけば見知らぬ部屋の中にいた。

 窓から見える景色には見覚えがあった。すべてを諦める前に見ていた景色。いつのまにか俺の周囲にアパートが建っていたのだ。

 その瞬間、少しの絶望を感じた。

 だってそうだろう? いわばなかなか眠れない夜に、ようやく眠れそうだったのに目が覚めたようなものだ。おそらくは一番成仏に近かった瞬間だったはずだ。


「うひゃぁあっ!」

 

 黄昏ていると珍妙な叫び声で我に返った。

 振り返ると青年がベッドの上で真っ青な顔をしていた。

 何があったのだろうか。周囲を見渡す。しかし彼が叫びだしそうなものは見つけられなかった。

 口を鯉のようにパクつかせている青年の目が俺の方を向いていることに気づく。

 もしかして。


「ゆゆゆゆゆ」


 ゆゆゆ?


「ゆゆゆゆ、幽霊っ!」


 俺が見えているのか?

 青年の目はしっかりと俺を捉えていた。

 その青年こそが皆本リオ。これがリオとの出会いだった。


 

「ユウさん。次のページ進んでいい?」

「いや、ちょっと待て。まだ読んでる」

「いやいや、ほぼセリフないでしょ⁉」

「バカ、このユージの表情を見ろ。作者は天才だぜ」

「はぁ」


 リオの背後に立って、彼が操作する端末で電子書籍を読む。

 結局理由はわからないが、リオだけが俺の姿を認識しているらしい。しかしそのおかげで様々なことができるようになった。

 こうして漫画を読んだり、映画を観たり。最近は動画配信を見て一喜一憂している。

 ユウさんというのは名前も忘れてしまった俺にリオがつけた渾名だ。

 幽霊のユウさんだそうだ。


「ちょっ、顔近いって」


 そう言って俺の顔を押しやるリオ。


「すまん」


 そうなのだ。リオは見るだけでなく俺に触れることもできるのだ。その逆もしかりで俺からリオに触れることもできる。

 久しく人と触れ合っていなかったからかどうにも距離感を掴めない。


「しっかし不思議だよね。僕今まで幽霊とかそういうのとは無縁の生活だったんだけど」

「霊感か。どうなんだろうな。長い時間幽霊をしていたが俺のことを見られたのはお前だけだ」

「そのユウさんが死んだのっていつの話?」

「あぁ~」


 随分昔のような気もするし、最近のような気もするし。


「着ているのはシャツとスラックス。髪型は普通の短髪。時代感はわからないよね。少なくとも江戸時代とかそんな昔ではないよね。年齢は二十後半から三十前半って感じ?」

 

 確かに、視線を下げて自分の体を見る。

 名前はおろか、生前の記憶もない。見比べる限りは外を歩く人々と洋装に変わりはない。


 しかし自分の過去よりも今は重大な問題があるのだ。


「ちょっ、ユウさんソレ」


 そうソレなのだ。視線をさらに下げる。

 今まで幽霊になってから反応しなかった俺の息子がギンギンに反応している。

 孤独で意識も曖昧に漂うモノになっていたころと違って、リオに認識され、触れ合うことができるようになったことで欲求と呼べるモノが俺の中で再熱したのだ。

 睡眠や食欲に関してはいまだその兆しは見えないが、性欲だけは主張をはじめている。


「やっぱり、その、するんですか?」


 リオが上目遣いでこちらを見る。

 俺がどうしてもと頼み込み、遂にリオの首を縦に振らせたのだ。

 セルフですっきりしようとしたのだが、自分の部位といえど触れることはできなかった。

 しかしリオならば触れることも、リオに触れることもできる。

 

「でも本当に俺が上でよかったのか?」


 俺から願ったことだが改めてリオに確認する。

 

「僕、はじめては可愛い彼女に捧げるって決めてるんです。だからたとえ同性と言えどもユウさんで卒業はしたくないんで。あっ、付き合ったことはありますよ。だけどそういうのはほら結婚前提じゃないと。本当ですよっ!」

「わかったわかった」


 自分に言い聞かせるようにリオは早口でまくし立てる。

 特別整っているわけではないが不細工というわけでもない、どこかかわいらしさが勝っているところが女性には受けないのだろうか? 母性本能をくすぐりそうではあるのだが。


「ちょっ、まじまじと見ないでくださいよ」


 もじもじとする姿に、これは草食系というやつなのかもしれない、と納得する。


「それじゃあ、さっそくだがいいか」

「は、はい。調べて準備はしたんで。幽霊相手に必要かはわからないですけど」


 いきなり、というのもあれだ、と思いリオの体に指を這わせる。


「んっ」


 リオが声を漏らす。

 指を動かすたびに、リオの体が反応する。そして漏らす声が煽情的で自分の理性が失われていく。


「んっ、くすぐったいですよユウさん」


 少し照れ隠しするように伏し目がちで呟くリオ。

 その表情に俺の残り僅かだった理性は簡単に蒸発した。


 どれだけの時間そうしていたかわからない。

 長い間忘れていた感情は制御も効かず、俺は獣のようにリオの体を求め続けていた。

 気づいたときにはリオは過剰な快感のせいか意識を失い寝息を立てている。

 俺はそんなリオの頭を撫でた。

 読んでいただきありがとうございます。R15ってどこまでやっていいのか、ラインを探りながらやっていきます! もっとやっちまえこのヤロウと思った方は高評価いただけると嬉しいです。

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