10円クロニクル
自販機でジュース買おうと200円入れたら10円不足で買えなかったので思いつきました。
西暦2XX5年。
原子精製装置によって、ありとあらゆる物質を精製可能となった世界。
金や銀だけでなく、石油等も精製できる中、ある一つの金属が精製不可能だった。
それが銅だった。
政府は銅で構成された10円を廃貨として、金に変え、銅の10円は国が回収すると発表した。
流通していた80%の旧10円玉が回収されだが、旧時代の自販機や田舎、郊外等では未だに手に入る可能性がある。
もし旧10円玉一枚を入手できたのならばアタッシュケースから溢れるほどの大金が手に入るだろう。
そのため、今の日本では若者の間で10円ハンターが流行っていた。
残りの20%の内、一枚でも手に入れれば億万長者だ。
そんな夢を見て10円を探しに行くバカ共が後を絶たなかった。
そしてここにも、10円を探しに行こうと2人の男女と一体のアンドロイドが居た。
「ジャンジャジャーン!見ろよこれ!10円を探知出来る金属探知機が完成したぜ〜!」
いつも騒がしい自称天才科学者高校生なバカ男の名はニコラス・テスライ。
「ホントにそんなんで探せるの?まだ勘で探した方が見つかりそうまであるけど」
10円あれば億万長者になれると言うウマイ話に釣られてきた人の事言えないバカ女の名は故瓜マリ。
『いつものガラクタとは違って随分と使えそうな機械を製作したな、ニコラス』
そんなバカ共と一緒に行動するバカアンドロイドのガリガリ・レオレイ。
彼らは日本の旧渋谷跡地を10円を探しながら歩いているのだった。
彼らの名前が外国人らしいのにも理由がある。
レアメタル等の資源がほぼ安定したため、国という概念が無くなったのだ。
日本も今や地名である。
それ故に法律も無くなった。
倫理や道徳などは無いにも等しいだろう。
かつてのコンクリートジャングルの中3名が歩みを進めていた。
すると遠目に赤色の直方体が見えるではないか。
「あれ自動販売機じゃね!ヨッシャ!ワンチャン10円手に入るかも!」
「やりぃ、何割で分ける?」
「そりゃあ、俺4でお前ら3ずつな」
「は?なにそれ!ここは平等にジャンケンでしょ!」
ニコラスとマリは早速何割で分かるか話し始めた。
しかし、ガリガリは不思議に思っていた。
10円の入っている自販機があるのならばニコラスの10円探知機が反応する筈である。
だが何の反応すら示していないとなると、10円が入っていないと言うことでは無いかと思ったが幸せそうな2人を見て言うのをやめた。
「10円が手に入ったら何を買おうかな〜まあ、先ずは新しい機材の購入だな〜」
「私は借金の返済に充てなきゃ」
「ガリガリ!いつも通りチェーンソーで頼むぜ!」
「はいよー…じゃいっちょいくぜ」
ガリガリの左肩にジョイントしていたチェーンソーを左手に移し唸らせる。
刃が自販機の外装を切り裂き真っ二つにする。
切られた場所から小銭がや旧紙幣が散らばり落ちる。
「ナイスぅ!10円探すぞー!」
「ちょっと待って…」
「どうしたマリ?」
ああ、どうやらマリも気付いた様だ。
「この中10円なく無い?」
「は?」
「もともとニコラスが持ってきた10円探知機も反応していなかったぞ」
「そそそ、そんな訳…」
そう言ってニコラスが探知機を見やると、それには何の反応も示されていなかったのだ。
「何だよー10円入ってないのかよー」
「まあ、そう簡単には見つからないか…」
「…俺は最初から気づいていたがな」
「嘘つけ!ガリガリ!マリが言うまで何も言ってなかっただろ!」
「あれはお前らが幸せそうだったから言いたくなかっただけだ。」
結局、10円は見つからず、億万長者は夢のまた夢だったのだった。
ところで彼らは気付いていなかったが散らばった小銭の中に穴無しエラーの50円玉があった。
売れば状態にもよるが60万円は貰えただろう。
しかし、彼らは知る由も無かったのだった。




