第9話「トイレも男子用に入ってた…」
第9話「トイレも男子用に入ってた…」
「はい、これで大丈夫だよ」
ティエラはクリムに手作りのバンダナを首に巻いた。
「ありがとう!これで一般人には姿が見えなくなったよ!」
“魔法少女が手作りした物を身につけると、妖精は魔法少女と魔法少女候補にしか姿が見えなくなる”
果たして本当なのか知らんが、ティエラのパートナーのティルも同じものを身につけていた。
つい先日、席替えでティエラと隣の席になったのはもはや運命なのかもしれない。
……いや、ティエラは男子だ。
しっかりしろ…。
「つーか、まさか同じクラスだったなんて知らなかったぞ…えーと…?」
「妃乃 陸だよ。渡利 空くん」
ティエラは本名『妃乃 陸』。
肩まである長い黒髪はひとつに結い、まだまだ中学生のあどけなさが残る空と同じ高校一年生だ。
制服を着ているため、かろうじて男子だとわかるが、制服を着ていても女子ではないかと脳が錯覚する。
「ん……?待てよ?お前っていつから魔法少女やってんの?」
「えーと…小学生くらいから?」
「……マジか」
幼稚園の頃にクリムが現れているわけだから、ティエラもラメールもかなりの猛者なのだろう…。
「あれ?魔法少女候補にも見えるんだよな?お前がティル連れてんの、見た事ないけど」
「ステッキ=魔法少女候補なんですよ〜」
ティルが言う。
「空くんは、ステッキを封印してたから魔法少女候補にカウントされなかったんだね!」
クリムの説明にも納得がいく。
だから、空は今までは一般人扱いだったのか。
「それはそうと、カイさんからお小遣い貰ったからなに買おうかなぁ〜♪」
空とティエラはあの戦いの後、ラメールから二人にと、またしても貰った『お給金』を手に、カバンにしまう。
「カイさん…?」
聞き慣れない名前に、空は聞き返した。
「ラメールビターだよ。ラメールは本名、“茂野 海”って言うんだ」
「へぇ…」
「ボクもあんな風に堂々と、胸毛があろうがすね毛があろうが、可愛い魔法少女衣装を着こなすんだ!」
…………着こなしてるか?
むしろ、魔法少女衣装はティエラの方が似合っている。と、空は思った。
ティエラと話していると、突然先生から指名される。
「渡利、お前も気をつけろよ」
「へ?なにが…?」
クラスメイトたちが、不安そうにヒソヒソ話している。
「お前の家の近くだって言うじゃないか」
先生は呆れながら言った。
「空くん、家の近くで変質者が出たんだって!顔は隠した全裸の!怖いね、気をつけようね!」
クリムも不安そうにソワソワする。
「ムムが家に来た日に出たんだって!」
ふーん、変質者か…。
……………って、それ、変身中の俺じゃね!?
目撃者がいたことに、顔が青ざめていく。
(てか、どうしてクリムが不安そうにしてんだよ!お前のせいみたいなもんだろ!)
そのやり取りに、ティエラは思わず吹き出した。




