第5話「キーターの真相」
第5話「キーターの真相」
空はハニーチェーロに変身してトイレから出てくると、相変わらずシロップの雨が降っていた。
しかし、前のプリンやポップコーンとは違って、建物などに被害はない。
服に赤い染みができる被害はあるが……。
キィ……キィ……と、ブランコを漕ぐ音が雨に混じって聞こえる。
空はブランコを漕ぐ主を見て絶句した。
「うげっ……ツインズのミミ!」
「空くん、ミミの様子がおかしいよ?」
ミミは静かにブランコを漕ぎながら、俯いて時折顔を手で擦った。
「泣いてる…?」
こうして見ていると、普通の女の子だが…
「ミミが泣いてるからシロップ降ってんのかよ…」
元気があっても落ち込んでいても面倒くさい。
町を破壊しないあたり、落ち込んでいる方がまだマシなのか?
「だけどやっぱり嫌だ。甘ったるいしベトベトするし染みになるし…!」
「じゃあ、泣き止ませないとね!」
空は雨にあたらない場所に移動すると、スマホを取り出す。
「こう言う時こそAI!『落ち込んでる女の子を励ますキザな台詞考えて』っと」
「わぁ、さすが現代っ子だね!」
「『ちなみに、相手はスイーツ大好き幼稚園児』……と」
「あとはイケボとキメ顔でバッチリだね!」
空は顔を両手でむにむにとマッサージすると、ミミに近付く。
そして、ブランコの鎖を掴むと甘いマスクを顔に張り付けて空は言った。
「ねえ、知ってる?
世界中のケーキが君の笑顔のためにあるんだよ。
今日はちょっぴり悲しいみたいだけど、大丈夫!
だって君は僕が知ってる中で一番可愛い『お姫様』なんだから。
元気が出たら、一緒にいちごのショートケーキ、食べに行こうよ!」
そして、極めつけにウインク。
「君の笑顔は、砂糖よりもっと甘いんだから♡」
ミミは顔を上げて、ジッと空を見つめている。
穴が空くほど見つめられ、もしかして不発か?と思った頃、シロップの雨が止んでいることに気付いた。
「ミミ、行きたいケーキ屋さんがあるの」
ミミは頬を赤らめ、空の腕に絡みついてくる。
「一緒に行こう?ミミの『王子様』♡」
これは……効果抜群だ…。
しかし相手はキーターだ。
の前に幼稚園児!
このままデート?
ダメダメ、犯罪だってば!
空が迷っていると、頬を膨らませて不機嫌そうな表情に変わっていくミミ。
これは……ヤバい……
「一緒にケーキ屋さん行ってくれないなんていやーー!!」
ミミは両手を広げて、大量にいちごとホイップクリームを召喚する。
「い、行くからやめてーーー!!!」
「ホント?」
空は青い顔で引っ切りなしに頷いた。
「うわーい、ミミの王子様っ!」
ミミは空に抱きつき、擦り寄る。
………詰んだ…。
と、空が思った時、
「空くん、今だよ!強化魔法でミミを倒すんだ!」
クリムが空の耳元で囁いた。
“キーターを倒す”。それは魔法少女の使命だ。
しかし…
「女の子ぶん殴んのかよ…」
空は自分に懐くミミを見て、戸惑いを覚える。
「空くん、ミミは空くんの誘惑に一時的に酔ってるだけだから!空くんがモテてるんじゃないんだよ!」
「ぐはぁっ!」
クリムの発言に精神的ダメージを受けつつ、空は現状に警鐘を鳴らした。
(誘惑が解けたらきっとまた暴れ出すに違いない!
そうだ、気絶させて夢オチ作戦だ!)
空は強化魔法をかける。
と一気に全身の筋肉が隆起し、力が溢れてくる。
「はぁぁぁぁぁ!!!」
バームクーヘンステッキを握りしめ、ミミを軽く小突く感じで……、
小突く……、
(力加減がわかんねぇーーー!!)
力いっぱいミミの脳天にバームクーヘンステッキを打ち付けると、ミミはパタリと倒れ込んだ。
「うぅ…ごめん…。痛いよな…?」
空がミミの状態を確かめるためにしゃがみ込むと、ミミがほんのり発光しだし、ミミの姿が可愛らしいピンクのテディベアに変わった。
「……へっ!?」
「キーターは元はお菓子の妖精だからね!ステッキでぶん殴ると、元の妖精に戻るんだよ!」
「そう言うことは先に言え!焦っただろー!」
ミミは目を閉じたまま、ふわりと宙に浮かぶと、甘い香りを残して消えてしまった。
「シュガリーナに帰ったんだよ!キーターを救ってくれてありがとう、ハニーチェーロ!」
空は拍子抜けして、しばらくその場に座り込んでいたという。




