第4話「学校行かなきゃ。だって、高校生だもん☆」
第4話「学校行かなきゃ。だって、高校生だもん☆」
「なんであんなおっさんが魔法少女なんだよ!もっと居ないのか!?」
自宅に戻った空は、クリムに喚いていた。
「他の魔法少女?ラメールビターがいるよ!」
「そうじゃなくって、本当の魔法少女!“少女”!“女の子”!分かる!?」
空が何故そんなにイラついているのか、クリムには検討もつかなかった。
「魔法少女は力仕事だからね!レスリング選手ならできるかもしれないよ!」
「そーじゃなくてーーー!!!」
空は立ち膝になり頭を抱える。
「ほら、魔法少女らしく可愛い系とか、セクシー系とか、生徒会長系とか!!」
「アニメの見すぎじゃない?現実見ようよ」
クリムはノートを取り出しながら言う。
「甘いセリフ、一緒に考えようよ。不発に終わっちゃったからね!対策だよ!」
しかし空は、そのままふて寝してしまった。
「空くん、魔法少女は確かにラメールビターの他にもいる…………………と思うよ!多分」
クリムの慰めは虚しく、翌日空は学校に向かう。
「って、ついて来んのかよ…」
空のカバンに張り付いたクリムは、パートナーなんだから当然と言わんばかりに、振り回されるカバンにしがみついて離れない。
「大丈夫だよ!お母さんだって僕がただのぬいぐるみだと思ってたじゃない!
最新のAI積んだぬいぐるみだって!」
「それ普通のぬいぐるみじゃないから!本当にあってもめちゃくちゃ高いヤツ!
俺の小遣いで買えねぇから!」
そんなやり取りをしながら登校していると、すれ違った黒塗りの高級車の窓が開いて黒いオールバックのサングラス男が話しかけてきた。
「なんだお前。金がねぇのか?」
いきなり話しかけられてビクッと肩を震わす。
しかも車もサングラスもスーツも、真っ黒に固められた装甲車バリの装備。
「しかたねぇ。ほらよ、昨日の小遣いだ」
男は分厚い封筒を空に渡すと、手をヒラヒラ振りながら走り去っていく。
去り際に、「次は期待してるぜ、ハニー」と言い残し…。
その声には聞き覚えがあった。
ドスの効いた低いイケボ…、、、
「………え?まさかラメール…?やっぱそういう稼業の人なんだ…」
真っ黒い高級車の後ろ姿を見送りながら呟く。
「小遣いって言ってたけど…」
空は封筒の中を覗き見ると、慌ててカバンに突っ込んだ。
「ヤバ…ヤバいこれ……。汚い金だきっと………。………てか、なんでラメールは俺だって分かったんだ?」
ハニーチェーロの時とは違って、普段はどこにでもいるような地味な男子高生だ。
「僕がいたからじゃない?」
「あ………」
空は妙に納得してしまった。
「ってことはさ、いくら変身中に顔にモザイクかかっても、身バレするじゃん」
クリムは予想だにしなかった事実を突きつけられ、動揺するように飛び回る。
「そんな…!どうしよ…どうしよ…」
するとクリムは思い出したように手を叩く。
「あ!あったよ!魔法少女と、魔法少女の素質がある人にしか見えなくなるアイテムが!」
「そんな便利なのがあんのか」
「うん!」
クリムは空の周りを飛び回る。
「メロが着てたみたいな、魔法少女手作りの何かがあればいいんだよ!」
それを聞いて空は固まる。
「メロが着てたみたいな、魔法少女“手作り”」だと……!?
ってことは、あのワンピースはラメールが作ったのか、昔の魔法少女が作ったものか…。
「メロのワンピースは新しかったから、きっとラメールが作ったんだね!」
「な、なんだとぉぉぉ!!?」
あのおっさんがチマチマ裁縫だと!?
顔に似合わず器用なんだな!?
「って、もうこんな時間かよ!ちんたらしてたら遅刻する!」
むぎゅっとクリムをカバンに押し込むと、空は学校まで走っていった。
「空くん!この封筒、“スイーツ部隊 ハニーチェーロ”って書いてるよ!“お給金”だって!……むぎゅっ」
「顔出すな!…………ん?“スイーツ部隊”?え?俺、ラメールの部隊に入れられたの…?」
その時、ポツポツと空から冷たい雫が落ちてきた。
「雨?やべっ、傘もってきてな……」
雫が口に入ると、甘い味が広がる。
「ん?なんだこれ?」
よく見ると、雫に濡れた制服に赤い染みができていた。
道路にも赤い斑点が…。
そして、極めつけは……
「苺の匂い…?ってこれ!かき氷シロップじゃん!」
「空くん、きっとキーターの仕業だよ!変身だ!」
空は慌てて道を曲がり、人気のない路地に入る。
「どうしてすぐ変身しないの?」
「バカヤロウ!通学路で変身してみろ!」
変身中は全裸で顔だけモザイク状態になる。
変質者として学校に通報され、警察にも通報され、顔がモザイクで隠れているとはいえ、その場にいた目撃者は変身前の空を見ているだろうから……
「社会的に死ぬんだよーーー!!」
そのまま突っ走って路地を抜け、公園に出ると公衆トイレに駆け込んだ。
「もう遅刻だけど仕方ない!」
空はトイレの個室で変身する。
「………せっかく顔モザイクの優しい設計なのに…」
クリムは残念そうに呟いた。




