第31話「ぶん殴ったらデルタになったー!?」
第31話「ぶん殴ったらデルタになったー!?」
「これで詰んでも知らないからなーーー!!」
空は強化して、ぐったりと横たわっている陸の頭を思いっきりバームクーヘンステッキでぶん殴った。
すると、陸の体が光に包まれる。
「うわっ!」
空が尻もちをつくと、陸は浮かび上がり、光のシルエットになる。
アネキーターは『魔法少女、進化変身中につき休戦中』というプラカードを掲げていた。
「バケモノでも、そのルールは適用されるのか」
しかも、陸は今、“進化変身中”らしい。
(進化変身なら、変身後は回復してる確率も高い!)
空は踵を返すと、海もバームクーヘンステッキでぶん殴った。
海も浮かび上がり、光に包まれる。
「やだー♡ダブル変身〜?」
アネキーターは血だらけなのに、興奮したように息を荒くしてニヤニヤしている。
陸と海の光は、魔法少女の衣装が粒子になり、体のラインがはっきりとわかるようになる。
「え…ちょっ!ある意味えろいんだけど!!」
「空くん、カイさんのも見て!」
「おっさんのシルエットエグい!」
空とクリムが盛り上がっていると、光が弱まり二人の姿が顕になる。
陸は一枚の白い布を紐で腰に巻いたような膝丈スカートに、上も一枚の白い布を金のブローチで肩に留め、袖を通したようなギリシャ神話の女神風なデザイン。
金の腕輪に月桂樹の冠、チョコレート色のサンダルで、太ももには金の足輪が片方だけ嵌められている。
「ティエラヴァニリィ・デルタ!お前の真価を問うてやる!」
陸は刀を構えた。
「りっくん、天使さんみたいですー!」
ティルが歓声の声をあげる。
一方、海はというと、
真っ黒に黒光りした戦国武将の甲冑に、金でできた二枚の葉が交差する前立て、肘当てもすね当ても真っ黒で、わらじをしっかり紐で固定している。
「ラメールビター・デルタ。世の中、いつだって強い者が正義だ」
海は拳銃を構える。
「完全に戦国武将になっちゃったのだわ!?」
メロが驚きの声をあげた。
「“デルタ”はハニーチェーロの力で進化した魔法少女だよ!
衣装は、“可愛いが優先”のルールを越えて、空くんのその人に対するイメージで決まるよ!」
クリムの説明に、二人の衣装を見て空は乾いた笑い声を出す。
(陸はなんか太もも丸見え、二の腕丸見え……。
カイさんはモロに戦国……。
二人のイメージダダ漏れかよ…!!)
恥ずかしさのあまり、その場から逃げ出したかったが、アネキーターがそうはさせてくれない。
「ハニーチェーロは変身しないのかしら?」
ぐんっと、空に向かってアネキーターが突っ込む。
「うぎゃぁぁぁぁ!!」
両手を上げて叫ぶ空の横から、陸が飛び出し真横にアネキーターを薙ぎ払う。
アネキーターはすんでのところでしゃがんで刀を避けた。
と、そこに海がどら焼きでできた兵隊を召喚し、おかきマシンガンを構える。
陸は空の首根っこを引っ掴み、跳んだと思ったら、陸の背から真っ白いホイップクリームの翼が生え、文字通りに飛んだ。
「撃てーーー!!」
カイがようかんステッキを振り下ろすと、どら焼き隊が一斉におかきマシンガンを発砲する。
「きゃーー!!」
無数の金平糖弾がアネキーターを襲う。
「カイさん!」
上空から、陸は海の近くにチョコレートでできた騎馬を召喚した。
「おう!」
海は騎馬に飛び乗ると、金平糖弾の中に突っ込んでそのままアネキーターを目指す。
「カイさんっ!行けっ!」
「すげぇ……」
高みの見物とは正にこの事。
空は陸と一緒に、目下の戦場を眺めた。
「ラメールビターは嫌いって言ってんでしょー!?」
アネキーターも穴だらけになりながら、金平糖弾の中、海に突っ込む。
海は騎馬に乗りながら、ようかんステッキを出刃包丁に変形させた。
アネキーターはより爪をするどくし、海の喉を狙う。
お互いがすれ違い様に腕を振った。
「金平糖弾の中、二人が接近中です。片や金平糖弾を背に、片や金平糖弾に向かって行く形で!
この勝負、どう見ますか?」
クリムがスイーツ部隊に守られながら実況する。
「えーと…カイさん優勢だと思いますー!」
「メロも同じ意見なのよ!」
……当たり前だ。
妖精が魔法少女の応援をしないでどうする…。
その時、マシンガンの銃声が止まり、腕を振った二人は動かない。
………ゴトリ、と、首が落ちた音がした。




