第30話「グロいのNGです」
第30話「グロいのNGです」
「ふふふっ♡二人まとめて食べてあげる♡」
アネキーターはそう言いながら、鋭い爪を振り下ろした。
もうダメだ…!
陸を抱きしめて、ギュッと空は目を瞑る。
しかし、予想した激痛がなかなかこない。
そっと目を開けると、アネキーターの腹をドスが貫通し、それまで血まみれになっても、陸に斬られても平気そうにニタニタ笑っていたアネキーターが悲痛な叫びをあげていた。
腹から出たドスの刃先が横にひねられる。
すると、アネキーターははらわたをねじられ、更に悲鳴に近い声を上げた。
「嬢ちゃん、背中がガラ空きだぜ?」
「ひぃぃっ!!グロいっっ!!」
助けてくれている海に感謝も忘れて、空まで悲鳴を上げた。
「このっ!ラメールビター!」
アネキーターは目を吊り上げ振り返ると、海はドスから手を離し、アネキーターの口に銃口を突っ込む。
「わぁ!空くんのツッコミより過激!」
クリムが楽しそうに手を叩く。
………それ、ツッコミじゃねぇから…。
「空、目ぇ瞑っとけ」
そう言って海は引き金を引く。
と同時にアネキーターは海の首を爪で引っ掻いた。
「うぐっ!」
海は首から血を流し、その反動で銃口がアネキーターの口から外れ、上空に向かって発砲した。
アネキーターはそれを見逃さず、今度は海の足首を蹴り倒す。
その前に海はステッキでアネキーターを殴りつける。
海のようかんステッキに血がこびり付いた。
「カイさん!」
海は首から血が出ている。
それは尋常ではない量だ。
空は海が言っていたことが頭に過ぎる。
“死因は出血死。
首んとこ、動脈だな。そこに、皮膚を抉るような引っかき傷があんだよ”
空は血の気が引いた。
(あんなに血が出て………動脈をやられたんじゃないか!?)
腕の中にはグッタリして動かない陸。
首から血を流しつつも、アネキーターと戦う海。
「どうしよう……このままじゃ、全滅だ…!!」
空はガタガタと手足が震え、涙が勝手に瞳から溢れ出す。
(俺……このまま死んじゃうのかな…?)
空は今まで、怖くともあまり実感がなかった。
いつも二人が守ってくれていたからだ。
確実に近付く……“死”……。
そうだ、魔法少女は、いつも“生死を賭けた戦い”を余儀なくされていたのだ。
(今更実感するなんて……)
平和ボケした脳みそが、多量の刺激物過多により停止する。
「空様!バームクーヘンステッキがなぜ伝説のステッキか考えるのよ!」
メロの声が聞こえた。
………なぜ、伝説のステッキと呼ばれるか…?
そんなの知らない…。
知ったところで、今は関係ない……!!
空は力なく首を振ると、あの憎たらしい声が聞こえた。
「空くんは本当に馬鹿だなぁ!何層にもなってるスイーツは、それだけで手間がかかるんだよ!
浄化の力は、キーターを精霊に戻すだけじゃないんだよ!」
………キーターを、精霊に戻すだけじゃ、ない…?
空はステッキが光を帯びていることに気付いた。
ステッキを固く握りしめ、本能のままに強化をかける。
「バカクリム!信じるぞ!本当にいいんだな!?」
「うん!ムキムキパワーで陸くんをぶん殴れ!」
ティルが空の姿に震えてはいるが、陸をぶん殴るのを止めようとしないあたり、正解なのだろう。
「これで詰んでも知らないからな!!」
空は思いっきり、陸の頭をバームクーヘンステッキでぶん殴った。




