第26話「ギィィィィ…… by.クリム」
第26話「ギィィィィ…… by.クリム」
「メロが今から話すのは、キーターが殺人キーターになった場合の処置法なのよ」
“殺人キーター”。
それは、お菓子の妖精が糖分を摂りすぎて、甘さを際限なく求めるようになった妖精…“キーター”が、
始めはたまたま人間の“血”を口にして、魅了され血を求めているうちに、
人間の“肉”の味を知り、
人間を“殺し”、
人間を“食べる”ために殺人を繰り返す“キーター”のこと。
放っておくと、内臓だけではなく、
骨まで跡形なく全て平らげるようになる。
「そうなったら、もう“キーター”じゃなくて“バケモノ”になっちゃうんだよ!」
猛スピードで戻ってきたクリムが、王太子らしく説明する。
「“バケモノ”になったキーターは、バームクーヘンステッキでぶん殴っても、妖精に戻れないんだよ!」
「え!それってマジで俺、戦力外じゃん!」
ティルがモジモジと、陸の様子を窺いながら言う。
「だから、殺人キーターは駆除しないといけないんですー……」
「駆除って…殺すこと?」
陸は確認するように呟いた。
ティルはこくん、と首を縦に振る。
「カイさん、りっくんに殺すなんて…そんなことしてほしくないんです……」
しかし、アネキーターはかなりの強敵だ。
前に陸と海が二人で挑んだ時は簡単に逃げられてしまった。
(殺すなんて、そんなことしたくない…。もちろん、陸にもさせたくない)
空は海がアネキーターと対峙する場面をイメージするが、海が勝てるビジョンが思い浮かばない。
(カイさんなら、何人も殺っちゃってそうだし?そこら辺は大丈夫だろ。
……なら…)
空は陸に手を差し伸べた。
「なら、カイさんをサポートしに行こう。トドメはカイさんにして貰えばいい」
「空くん……。でも、空くんが危ない。ボクは友達に危険な目にあってほしくないんだ」
「なら、おあいこだな。俺だって陸に危険な目にあってほしくない」
陸は目を見開いた後、ゆっくりと微笑んで空の手を取った。
まるで水が流れるようだった。
嫌な気持ちが押し流されて、陸の手から勇気が流れてくるような…。
「やろう!ボクと空くんで、カイさんを守るんだ!」
「…………ああ!」
陸との絆が深まったような気がした…。
「なんだろう、ヤケにドキドキする…。もしかしたら、俺は陸のことが好きなのかもしれない。禁断の扉が音を立てて開く……。
ギィィィィ……………」
クリムが空の声を真似て、真剣な表情を作った。
「クリム!変なナレーション入れんなっっ!!」
本日、二度目のクリムの頭鷲掴みにぶん投げコース。
「お兄様…お気の毒なのだわ……」
「お兄様、りっくんと空くんが結ばれることはないと思いますー」
……ティルに断言されてしまった…。
てか、結ばれることは断じて、ないっっ!
男に興味はないんだ!
紛らわしい格好をしている陸が悪い!!
「ボクには花ちゃんがいるし、ボクも男子はお断りだから安心しなよ」
無邪気に笑う陸が、なぜかこの時は暴力的に見えた。




