番外編「新しい時代のヤのつく自由業」
番外編「新しい時代のヤのつく自由業」
空はふと疑問に思った。
「ティエラって、ラメールの後継いだら入れ墨とかいれんの?」
ティエラは今日もキャミソールワンピースに半袖ボレロを合わせるなど、見た目は完全に女子だった。
そんなティエラの背中に、ラメールばりの錦鯉が泳ぐ姿は見たくない…。
「入れ墨?しないよ」
「だけどさ、ヤ…………ああいう職業の人ってさ…」
空が言い淀むと、
「ボクは新しい時代のヤクザだから!」
とキッパリ宣言した。
(ヤクザって思いっきり言ったーーー!!てか、“新しい時代の”ヤクザってなにーー!!!?)
空が混乱のど真ん中にいると、ティエラは物怖じせず続ける。
「あの真っ黒もやめる!メイド服か執事服にする!」
(ちょっ、なに言ってんのこの子!ヤクザを貴族にするつもりか!?)
「でねでね、全体的に可愛い、町に優しいヤクザ集団にするんだ」
(可愛いヤクザってなんだーーー!!!)
しかし、空は我に返ってティエラの部屋を思い出す。
シンプルで可愛いものなんて、ティル用のベッドくらいだった。
本当は可愛いものは苦手なのでは…?
いつもの女装も、本当に好きな服なのだろうか…?
「パパのお仕事は怖いから、可愛くするんだって花ちゃんと約束してるから…」
空は少しずつティエラのことが分かってきていた。
ティエラの行動の基礎には、必ず花ちゃんがいる。
「ティエラの部屋、めっちゃシンプルだったろ…。本当のティエラの趣味ってそっちなんじゃ…?」
そう言いかけると、ティエラは笑いながら首を振った。
「あれ、親が用意したやつだから」
………と言うことは、ティエラは本当に可愛いものが好きなのか?
「貧乏性でさー、壊れないと捨てらんないんだ」
その答えに、“花ちゃんとの約束も、壊れていないから捨てられない”……、そう言っている気がした。
「ただの口約束で、勝手に許嫁とか言って…自分でも馬鹿らしいのは分かってる」
ふっと、ティエラの頭上に影が浮かんだように見えた。
「でも、その馬鹿さ加減もボクだからさ、仕方ないんだよ」
どことなく寂しそうに笑うティエラを、空はただ無言で抱きしめたくなる衝動に駆られる。
だが、クリムの言葉ですぐさま現実に返った。
「えらいね!空くんなんか、自分が馬鹿なことも分かってないんだよ!」
無言でティエラを抱きしめたくなった衝動が、無言でクリムの顔面を拳で殴りたくなる衝動に変わる。
そしてそれは瞬時に実行された。
……ひどい!あんまりだよ!




