第20話「兄が来たー」
第20話「兄が来たー」
空とティエラは、ティエラのお隣の黒光り要塞“茂野邸”…ラメールの家の庭を借りて魔法の練習をしていた。
家主であるラメールは仕事で留守だったが、陸は出入り自由らしく、頭が光ったサングラス黒スーツが快く入れてくれた。
ティエラと空は変身し、空が自在に弓矢を出せるようにティエラが指導する。
「でも、忘れちゃダメだよ!キーターを戻すには、バームクーヘンステッキで直接ぶん殴るんだよ!」
つまり、魔法で作った矢ではキーターは戻らない。
たまに的確なことを言うクリムに、空はモヤッとした。
「ムキムキなハニーくんがバームクーヘンステッキを…」
ティルがブルブル震える。
そう言えば、ムムを倒した時もティルは震えていたっけ。
「俺のムキムキ姿、そんなに怖いのか…?」
ぶっちゃけ、自分では想像できない。
「か、顔と体が合ってなくて怖いですー」
……マジか。
顔はこのままで、体だけムキムキになるのか…。
そりゃ、俺でも怖い。
「そういや、ティエラって特殊能力なんなの?」
「特にないよ」
「………ん?」
魔法少女はみんな特殊能力があるのかと思っていたから、空は拍子抜けした。
「ボクは、自分のステッキじゃないから…」
(受け継いだステッキだから、縛りがあるのか…)
それでも、ティエラがかなりの実力者なのには変わりない。
むしろ、ハンデがあるのにあんなに強いとか…
(俺がわかんないくらい、努力してんだよな…)
その時、ティルがぴょんぴょんと跳ねる。
「キーターの気配がしますー!」
スイーツ部隊の黒スーツが、それを聞いて車を手配する。
「陸坊ちゃん、空さん、送りやす!」
「ありがとう!」
ティエラはすぐさま黒い高級車に乗り込む。
空も慌てて乗り込んだ。
そう言えば、どうしてこの黒スーツはティルの言葉が聞こえたのか?
ティルを見ると、いつものバンダナを外していた。
「お洗濯中なんですー」
………。
ってことは、一般人にも見えてるってことか…。
黒い高級車はティルの案内で大通りに出た。
「ええ…ここかよ…。人いっぱいいんじゃん…」
空が不満を漏らすのも聞かずに、ティエラは颯爽とキーター目指して飛び出していく。
キーターは短い派手なピンク色の髪で、耳や唇にやたらピアスを開けていた。
メイクなのか、目の周りは真っ黒で、パンク風と言うのだろうか?
ダボダボのズボンに、シンプルなロゴが入ったTシャツを着こなしている。
キーターは通行人に、ドロドロに溶けたチョコを浴びせながら豪快に笑っている。
「どうだ、ハイミルクのチョコは!うまいだろ?ハハハハハハ!!!」
道路も建物も街路樹もチョコまみれ。
しかもチョコは、熱せられてドロドロ。
軽傷の火傷をおった一般人が数名。
「ドルチェンジ・スロット、スタート!」
ティエラが叫ぶと、空中にアイシングクッキーでできたスロットマシンが現れ、チョコを吸い込みながらスロットマシンが回り出した。
「はぁぁ!??オレのチョコになにしやがんだ!」
その間に空は、黒スーツと協力して被害にあった一般人を救出する。
すると、スロットマシンの絵柄が揃い、吸ったチョコを利用して細く鋭いチョコの塊がキーターに降り注ぐ。
「ドルチェンジ・チョコレート・プリュイトロピカル、できあがりっ!」
キーターはチョコまみれになり、唸り声をあげている。
明らかにアネキーターとは違う。
むしろ、以前倒したツインズに近いキーターのような気がした。
「あれは、アニキーターだよ!
空くん、練習の成果を見せる時だよ!」
「おう!」
空は「弓矢になれ!」とステッキを形成し、飴細工でできた矢を構える。
ティエラが動きを封じてくれている…。
空は深呼吸して息を整えると、弓を引き、アニキーター目がけて放つ。
「ひっ…」
その時、空は知らないうちに強化をかけていたらしく、ティルは黒スーツの後ろに隠れたのだった。




