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第2話「双子が来たー!」

第2話「双子が来たー!」


空は鏡を見て呆然としていた。

金髪碧眼。

確かに、これなら身バレはしないだろう。


しかし…


「なんでこんなに足出てんだよ…」


「魔法少女の衣装は一定の決まりがあってね、とにかく!可愛さ優先なんだよ!」


「その一定の決まりってなんだよ」


クリムはぐっと親指を立ててみせた。


「つまり、可愛さ優先!」


「それ、一定って言わねぇから!」


すると、家が縦に揺れた。


「え?地震?」


クリムの耳がピクピク動く。


「違うよ。これは敵襲だ!キーターが来たんだよ!」


「キーター、来たー!ってダジャレかよ!」


「え?なにそれ。寒いんだけど…」


クリムの反応に屈辱を覚えた空は、誤魔化すようにカーテンをめくって外を見る。

空き地の真ん中に、巨大なプリンのような物体がゆっくりと膨らんでいた。


「……おい、猫。なんだ、あれ?プリン?」


「猫じゃないよ、クリムだよ!あれはツインズキーターの仕業だ!あのプリン、町を甘く包んで、溶かして吸収しちゃうの!」


「吸収??なんかヤバそう…」


と、次の瞬間……


ビルの壁が、クリームチーズのようにゆるゆると溶け始めた。


「うわぁ!?マジで溶けてんじゃん!」


クリムはクルッと宙で一回転して窓の外を指差した。


「よし、ハニーチェーロ!出動だよ!」


「は!?ここから!?ここ2階だぞ!」


「飛ぶんだよ!羽あるでしょ?」


空はショートパンツについたちっちゃな羽をちらっと見る。


「えっ、これ!?飾りじゃなかったの!?こんなんで飛べるわけ……」


バシュッ!!


突如、背中の羽がぱたぱたと動き始め、ふわっと体が宙に浮く。


「うおおおっ!?浮いたっ!?やべ、こえぇ!!」


「大丈夫!バームクーヘンステッキを水平に構えるんだ!」


「水平!?こ、こう??」


ステッキを横に構えると、羽がグッと安定し、風を切って前に滑空しはじめる。


「おおおおお!?飛べるっ!!

あ、なんか操縦の仕方わかってきた!オモロ!」


ステッキを傾けるとカーブし、体重を前へ置くと加速。

反対に、体重を後ろへ置くと減速。


体感型のゲームみたいだ。


「ハニーチェーロは最大でマッハ1.2出せるよ!その場合気を付けて!皮膚が剥がれちゃうから!」


「戦闘機かよッ!ってか怖ぇ!!」


二人はあっという間に空き地の上空に到着した。


空き地にはうごめく巨大プリン。

甘ったるい香りが辺りを包んでいる。


すると、プリンをトランポリンのようにして飛び跳ねている小さい双子を見付けた。


一人は薄ピンクの髪、もう一人は薄紫の髪。


「うわ…ちみっこのクセに派手だなー…」


双子が飛び跳ねるたびに、プリンが揺れて道路や標識がクリームチーズのようになる。


「あれはツインズキーター!キーター兄弟の末の双子ちゃんだよ!」


クリムは警告する。


「見た目は幼稚園児だけど、強力なスイーツエレメントの使い手だよ!」


「スイーツエレメント…」


空は意味のわからない単語にゲッソリする。


「魔法少女は基本、筋肉ムキムキの物理攻撃だけど、個別で技があるんだ。

ハニーチェーロは甘い言葉で相手を誘惑する能力だよ!」


「ん?それなら…」


空は思考を巡らせた。

誘惑して油断させた所を物理でボコればいいのか…。


「でも、発動には条件があって、キメ顔とイケボじゃないと発動しないし、筋肉ムキムキ状態では発動しないよ!むしろ筋肉ムキムキ誘惑は引かれるから気を付けて!

ある一定層には効果があるけどね!」


「ある一定層ってなに…」


そんな話をしていると、プリンの弾力に合わせて跳ねるツインズキーターの薄ピンクの髪の方…女の子が笑いながら手を広げると、空中に巨大なホイップクリームの塊が出現する。


「いっくよ〜!デコレーショ〜ン☆」


ホイップクリームが弾け、クリームがついた家屋の壁が抉れ巨大プリンに吸い込まれる。


「うわっ、なにあれ!?」


「空くん、あれがツインズキーター…双子の妹、ミミの技だよ!当たると動きが鈍ってプリンに飲まれるよ!」


「えげつなっ!」


さらに、ツインズキーターの薄紫の髪の方が分厚いメガネをクイッと押し上げると、数式が空中に浮かび始めた。


「計算完了。対象物のカロリー、ゼロ化開始」


周囲の看板や車がパラパラと灰のように崩れ落ちる。


「今度はなに…!?溶けた!?」


「あれは双子の弟…ムムの技、“ゼロカロリィ・システム”。物質を“カロリー”として換算し、無に返す…!カロリーは適切に摂取しようね!」


「もはやスイーツ関係ねぇだろそれ!!」


空は一度ステッキを構え、深呼吸する。


「…よし。誘惑、やってみるか」


頬に笑みを浮かべ、口を開く。


「君たち……甘いもの、好きなんだろ? だったら俺の………お〜れ〜の〜………?」


次の言葉が思い付かず、もちろんキメ顔も決まらない。


「ちゃんと台詞考えてから言おうね!」


すると、ツインズがハニーチェーロを睨みあげる。


「なにあれ!全然甘くない!ムムくん、可愛くしようよ」


「高カロリーにすると可愛くなるかな?ミミちゃん、キャラメルポップコーンシャワーなんてどう?」


「いいね!キャラメルポップコーンにホイップクリームカスタマイズね♡」


ムムが手を広げると、空中に数式入りのフラスコ型魔法陣が出現する。


「甘さ指数、演算開始。理想的な爆裂カロリー生成に入ります」


ミミが「せーのっ♪」と飛び上がって、空中にハートマークを描くと…


魔法陣から大量のキャラメルポップコーンが雨のように降り注ぐ。


ポップコーンは空中で弾けながら膨張し、「パーン!パーン!」と破裂音を響かせながら、周囲の建物にポップコーンのクレーターが出現する。


更に、ミミが可愛い声で「カスタマイズっ♡」と叫ぶと、無数のホイップクリームのツノがポップコーンにドレスアップされ、ポップコーンはねっとり粘着性のあるクリーム弾となり、当たった周囲の建造物はじわりと溶かされながら巨大プリンに吸収されていった。


「なにこれ!なにこれ!どうすりゃいいんだよー!!」


空中で逃げ惑う空に対して、クリムは冷静だ。


「食べればいいと思うよ!」


「んなアドバイスいらねぇー!」


そこへ、突然どこからか爪楊枝の刺さったようかんが飛んでくる。


「あれは…!魔法のステッキだ!」


クリムが叫んだ直後、ようかんステッキがプリンに命中。

プリンを粉砕する。


ツインズは地面にドスンと尻もちを着いた。


ようかんステッキはプリンを粉砕した後、くるくると回りながら飛んできた方向へ。


飛び散ったプリンが降り注ぐ中、ようかんステッキをずんむと掴む毛の濃い太い腕が見えた。


スイーツエレメントでできたプリンは徐々に消え始め、その腕の正体も徐々に顕になる。


まず目につくのは、チョコレート色の浴衣ドレス。

白いフリルの伊達襟から、髪色と同じ明るい茶色の胸毛が胸筋を主張する。

袖からはようかんステッキを掴む剛腕。

ドレスから伸びるのは筋肉質な太い足。

黒いレースの足袋よりも、そのすね毛が気になる。

極めつけは金魚のように風に泳ぐ兵児帯。

彫りの深い青い目は、まるで海外の俳優さながらだ。


そんな男が、静かにドスの効いた低い声で唸った。


「おい、ガキども。俺のシマを荒らした落とし前、どうつけてくれんだ?」


「きゃーーーー!!!」


町にはツインズの悲鳴が響き渡る……。

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