第19話「スイーツ魔法はおやつ魔法だった」
第19話「スイーツ魔法はおやつ魔法だった」
「魔法の基本は、イメージだよ」
ピンクに濁ったジュースをテーブルに置きながら、ティエラは言った。
「イメージ……ってか、これなに?」
自分の家には置いていない色のジュースを眺めながら、空は甘い匂いを嗅いだ。
「いちごミルクだよ。苦手だった?」
「いちごミルクって、女子かよ!」
ティエラはあぐらをかいて左右に揺れる。
「嫌なら飲まなくていいよ」
「あぐらかくなよ!パンツ見える!」
見た目が女子なだけに、空はティエラのことが心配になってきた。
(そのうち誘拐とかされるんじゃ…!)
「で、話の続きだけど…」
空の心配を他所に、ティエラはいちごミルクを口に含む。
「イメージが明確にできれば発動するよ。難しい場合は、言葉とイメージを紐付けて呪文にするといいよ」
確かに、ティエラが魔法を使う時はいつも呪文を唱えていた。
「まぁ、ボクは無詠唱でももう魔法使えるけどね」
「え、そうなの?いっつも呪文叫んでるのに?」
「うん。だって…」
ティエラは一呼吸置くと、親指を立てて無邪気に笑う。
「技名叫びながら発動した方がかっこいいじゃん!」
(うさ耳ふわもこの可愛い子がいきなり男子発言ーーー!!!)
いや、その気持ちはわかるけど!
わかるけど…と、空はテーブルにガンガンと頭をぶつける。
ティエラとティルがサッとジュースを避難させる。
「ちょっと、そういうの止めてよ」
不機嫌そうに頬を膨らませるティエラ。
(やっぱ女子かも…)
空はおおいに混乱中。
「ステッキを弓にしたいなら、“弓になれー!”とか、なんでもいいんですよー」
ティルがアドバイスをくれる。
「ステッキ自体はそれでいいんですけど、ステッキから離れるものや、遠距離で召喚するものはスイーツモチーフじゃないと発動しないんですー」
そうなのか、と、空は少し冷静さを取り戻した。
ラメールの弾丸もコーヒー豆だった。
スイーツはコーヒーも使うし、原料でもいいらしい。
「弓はいいとして、問題は矢だよね」
ティエラが本棚から雑誌を取ると、ペラペラめくる。
スイーツ特集の雑誌だ。
「……女子がよく見てるやつ」
「魔法の参考書だよ」
空がことある事に、女子と重ねて自分を見てくることにティエラは目を釣りあげた。
「矢のイメージは…ボクなら飴細工」
ティエラはとあるページの写真を指さす。
「飴細工って好きな形に加工できるからよく使うよ。飴細工じゃないなら、チョコとか…」
「飴とかチョコでできた矢か…」
それなら、空でもイメージできそうだ。
「あとは…フランクフルトとかパイナップル?」
「は?」
パイナップルはまだしも、フランクフルトはスイーツじゃない。
「お菓子は全部スイーツだよ」
ティエラの発言に、空は目が回ってくる。
「お菓子はスイーツ…」
「お菓子ってか、おやつはスイーツ」
「おやつはスイーツ…」
謎理論をティエラに続き繰り返す。
「考えてみて。6歳の女の子でも、魔法少女になって魔法を使えるようになるんだ。
難しいルールなら、無理だろ?」
ティエラの言い分はもっともだ。
6歳の女の子…
花ちゃんを見てきたティエラが言うなら、説得力もある。
「お菓子作りの本もあるよ!」
クリムはティエラの本棚を物色中。
「空くんの本棚にはマンガしかないよ!」
……なんの報告だ。
そんな報告はいらない…。
「ちょっとえっちなマンガだよ!」
「ち、違うっ!普通の少年マンガだから!」
必死に言い訳する空に、ティエラはサラッと言った。
「え?なに読むの?ボク、ファンタジーのハーレムものとか結構好き!」
「………え?」
ハーレムものだと…?
ティエラは女子の皮を被った男子だ…。
空は今頃確信した。




