第18話「やっぱ女子じゃん」
第18話「やっぱ女子じゃん」
空は放課後、ゲームセンターに来ていた。
「空くん、遊んでる場合じゃないよ!現実見ようよ!」
店内を見回し、空はなにかを探しているようだ。
「遊びじゃねぇよ。ほら、ティエラもラメールも、ステッキを変形させて戦ってただろ?だからさ…」
空は目当てのゲーム機を見つけ、小銭を入れる。
「実践的じゃないけど、やらないよりマシだろ?」
空が選んだのはガンシューティングゲーム。
ゾンビを倒しながら出口を目指すゲームだ。
「銃はラメールとキャラ被りしちゃうよ!」
「ゲーセンで他にあるか?武器になりそうなの」
クリムはゲームセンター内を飛び回りながら答える。
「バスケットボールとか!ダーツもあったよ!」
しかし、それらはステッキを投げることになる。
「回収できなかったら詰むだろ」
そう言いながらゲームをスタートするが、すぐにゾンビに食われてしまう。
「空くん、ヘタクソだねー」
「クソー…ダンスゲームとかなら得意なのにっ!」
ダンスが得意でも、戦力には到底ならないだろう。
なにかないかと、空はゲーム機を物色すると、新しい機械が入っているのに気付く。
「これ…!いけんじゃね?」
体験型のアーチェリーゲームだ。
制限時間内で矢が的に当たった得点を競う単純なゲームだ。
「よし、やってみよう」
空は小銭を入れ、ゲームを開始する。
弓を引き、矢を放つ。
すると、面白いほど的に当たる。
これなら、実践でも使えるのでは?
目を輝かせながら空は、クリムに聞いた。
「クリム、ステッキってどうやって変形させるの?」
「………………………」
クリムの顔が険しくなる。
「空くんは、弓道部がいいと思うよ」
「今、部活の話してねーから!」
クリムはオロオロと、落ち着かない様子で飛び回る。
「ステッキの変形…ステッキの変形……すてっき……の……??」
ブツブツそう呟いているのを見て、空の望みは薄いことに気付かされた。
(あ、これ忘れたんだな。うん、クリムなら有り得る)
それなら…と、空はティエラの家へ行くことにする。
ティエラやティルに直接教われば、進展があるかもしれない。
ティエラの家のチャイムを鳴らすと、可愛らしいもこもこのワンピースに身を包まれたティエラが出てきた。
フードを被り、フードには長いうさぎ耳がついている。
(……女子じゃん!)
目をひん剥いてティエラを凝視する空を見て、ティエラは呆れたようにため息をつく。
「入れば?言っとくけど、ボク男だからね?」
「知ってっし!!」
「お邪魔します…」と、ドキドキ胸を高鳴らせて玄関で靴を脱ぎ、部屋へ案内してくれるティエラの後ろをついていく。
(歩くと微妙に体のラインが出てえっろ……じゃねぇよ!ティエラは男だよ!)
頭を壁に打ち付けたい気持ちになりながら、空はふと疑問を口にした。
「そういや、なんでいつも女装してんの?親はなにも言わないのか?」
「……女装ってわけじゃないよ。好きな服着てるだけ。親はもう諦めてる」
“親はもう諦めてる”の言葉に、空は聞いてはいけないことを聞いてしまったような気がしてティエラの様子を窺うが、後ろ姿からはなにもわからない。
ティエラの部屋につくと、意外なほどに男子高生だった。
無骨なスチールラックに、剣道の竹刀と防具。
ベッドはシンプルな黒の無地カバー、遮光カーテンはダークグレー。
机の上には、雑に教科書とダンベルが置いてあり、壁には賞状や、道場で撮った集合写真が数枚飾られている。
ベッドサイドにはデジタルの目覚まし時計と、女の子と男の子が写った写真が飾られていた。
おそらく、花ちゃんとティエラだろう。
部屋の隅には、ペット用の可愛いいちごの形のベッドがあり、部屋の雰囲気と全く合っていない。
「ペット飼ってんの?」
空が聞くと、
「それ、ティルのベッドですー」
ティルはクリムと手を取りあってくるくる回った。
「空くん、僕もあんなベッドが欲しいよ!」
空は思わず、無言でクリムの頭を引っつかむと、壁に投げつけたという。
…………ひどいっ!!




