第15話「男の娘なのに、剣道部だってよ…」
第15話「男の娘なのに、剣道部だってよ…」
妖精たちの案内で辿り着いたのは、墓地だった。
とある墓石に腰掛ける、傘をさした女性が一人。
サラサラの色素の薄い髪ミディアムヘアで、少し日に焼けた一世代昔のギャル風だ。
クロップド丈のタンクトップに、タイトなデニムのミニスカート。ヒールの高いミュールに、ヘソピアスが光を反射する。
甘い雨が降り積もり、地面も墓石も砂糖で白く濁っている。
女性の持つ傘にも、砂糖の塊ができていた。
「………アネキーター…」
ラメールは身体全体から湯気が出るかと思うほど、怒りを顕にした。
と同時に、意外にも飛び出して行ったのはティエラだ。
何かブツブツ呪文を漏らしながら、ステッキを竹刀の形に形成すると、アネキーター目掛けて突きを放つ。
アネキーターは飛び上がり、体を捻って後ろへ一回転すると、濡れた砂糖でべちゃっとした地面に着地した。
「陸、ここでやり過ぎんな」
「だって、あいつ!タイカさんと花ちゃんの墓石に座ってた!」
ティエラらしくなく、怒りを顕にする姿に、空は心臓が落ち着かない。
「てか、ティエラって普通に強い…?」
ムムとの戦闘では魔法を駆使し、ザ・魔法少女という印象が強かった。
「りっくんは剣道部なんですよー」
ティルの説明に、「え………似合わねぇ…」と、空はティエラを凝視する。
「うふふ」
アネキーターが薄ら笑顔を浮かべた。
「なぁんだ、女の子じゃないのね。つまんなぁい」
大きな輪のピアスが揺れる。
「ん…!?ティエラを男だって見破った!?俺は騙されたのに!」
「空くん、そこ論点じゃないよ!」
クリムの指摘に腹が立つ。
アネキーターはそれを聞いてか否か、くすくす笑うと空に向かって舌なめずりする。
「まぁ…そこの可愛い子で我慢したげるわ」
「え?俺!?」
アネキーターが一歩、空に近寄る。
「いや、俺よりティエラの方が可愛いし!」
アネキーターがまた一歩、空に近寄る。
ジャリジャリと、雨が止んで乾いてきた砂糖の上を踏みしめながら、アネキーターは空の顎を爪の長い指で引き寄せた。
「ハニーチェーロ…。ハチミツなのね。好きよ、優しい甘さが…」
「………!!」
怖さと言うより、アネキーターの色気が空の頭を麻痺させる。
すると、何かを察したようにアネキーターは空を離し、突然飛び上がった。
と同時に銃声が鳴り響き、空の目の前を何かが走り抜ける。
(ひぃぃっ!ピストル!?)
空は声にならない悲鳴をあげると、その場に座り込んだ。
砂糖でベタベタする。
遠くからラメールの舌打ちが聞こえた。
アネキーターが着地すると同時に、ティルが叫ぶ。
「マシュマロ・バインズ!」
地面がボコボコとマシュマロ化し、アネキーターの動きを封じるかと思われたが、アネキーターのミュールから火が出て、たちまち焼きマシュマロになり、マシュマロは溶けていく。
「新しい“フレサ”ちゃんは酸っぱいわねぇ」
アネキーターは何事もなかったように、地面に降り立った。
「ハニーくん、聞いて欲しいですー」
ティルがふわふわと飛んでくる。
「あのアネキーターこそが、カイさんの奥さん、大華さんと花ちゃんを食べちゃったキーターなんです」
「食べっ……!??」
ティルの告白に、空は唖然とする。
すると、たちまち色っぽいお姉さんに見えていたアネキーターが、得体の知れない人ならざるものに感じはじめ、空は背筋が凍るような感覚に襲われたのだった。




