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第13話「最初の魔法少女」

第13話「最初の魔法少女」


「あれは、今から10年くらい前か…」


仏間から戻ってきた空たちに、ラメールは静かに言った。

窓からは柔らかい光が差し込み、小鳥の鳴き声が賑やかに聞こえる。


黒服の男が、三人分のお茶を運んでくる。


「おい、オレンジジュースあったろ。それも三人分持ってこい」


「はい、妖精さんの分ですね!」


黒服には見えていないようだが、違和感なく妖精用のジュースも準備する。


「ねぇ、カルピスないの?」


「ありますよ、陸坊ちゃん」


なんという事だ…。

ティエラはまるで自分の家のように黒服をこき使う…。


「大体10年くらい前だ。正確にはもう分からねぇ」


「あの時の話ですかー?なら、ティルから話していいですか?」


意外にも、ティルがラメールの言葉を遮った。


(そんな事したらいくら妖精でも殺さるぞぉぉぉぉ!!!)


空の心の声は虚しく響き、ラメールなティルに対して静かに頷いた。


「ではでは、10年くらい前なら、あの日からですかね……」



僕はクリムお兄様とメロお姉様と一緒に、人間界に来ました。

シュガリーナでキーターたちを捕らえていたのですが、人間界に逃げ出したからです。



「ちょっと待て、クリムはキーターたちがシュガリーナで暴れてるから助けて欲しいって…」


空の言及に、クリムはあっけらかんと言って退ける。


「庇護欲を刺激すれば、すんなり魔法少女になるかなって!」


ゲッソリとした顔で空に見つめられるが、クリムは涼しい顔でオレンジジュースを飲んでいる。


(ムカつく、この猫野郎…)


「では、続き話しますねー」


ティルは再び語り出す。



僕がこのお家に来た時、ちょうど花ちゃんの6歳のお誕生日でした。


りっくんと花ちゃんはこの頃から仲が良くて、お誕生日会にりっくんとりっくんのお母さんもお呼ばれしていました。


お誕生日会は花ちゃんの希望で、カイさん、タイカさん、りっくん、りっくんのお母さん、主役の花ちゃんだけで慎ましく始まりました。


あ、タイカさんは、カイさんの奥さんですー。


それで、花ちゃんがロウソクの火を消して、お誕生日ケーキを食べようと、花ちゃんはホールケーキの真ん中にフォークを刺しました。


魔法のステッキの気配で、僕は花ちゃんと契約して、花ちゃんは魔法少女になったんです。



「ん?ホールケーキステッキで魔法少女って……」


空はティエラをチラッと見る。

その視線に気付いたティエラは、自分のステッキを取り出して見せた。


「うん。ボクのステッキだよ。花ちゃんの形見なんだ」


サラリと言うティエラだったが、少し寂しそうな笑顔に空はむず痒さを覚え、俯いた。


「って、お前…!」


視線を下に移すと、ティエラの足が目に入る。


「ミニスカ履いてあぐらかくんじゃねぇよ!」


「ティル、続き話して!」


空の言葉はすぐさま流される。


「えっと、それじゃあ…

花ちゃんはキーターと戦うことになったんだけど…」


「あんなやべぇ奴と6歳の女の子が戦うとか、無理だろ!」


空の言い分に、ラメールは頷く。


「だな。だがな、昔はキーターはお菓子の兵隊を使ってイタズラ程度のもんだったんだ」


「凄かったよね!花ちゃんはモグラ叩きみたいに、ステッキでバシバシ倒してたんだ」


ティエラは懐かしそうに笑った。


「だがな、いきなり“奴”が現れた」


ラメールがそう呟くように言った時、暗雲が立ち込め雨が降ってきた。


「窓閉めるね」


ティエラは立ち上がり、窓を閉めに行く。


そんなティエラの揺れるスカートばかりが気になり、真面目な話の最中なのに集中できない自分に空は腹が立つ。


(ティエラは男。ティエラは男。ティエラは男…)


そう、男のスカートなんて見ても楽しくない、嬉しくない。

中身が女子ならガン見必須だが、ティエラは男。


必死に言い聞かせる空に、クリムが言葉の暴力を放つ。


「うわぁ…。空くんってばスケベだね!」


「ちがーーーう!!やめろぉぉぉぉ!!」


空は、キーターとかどうでもいいから、早く帰りたくて仕方がなかった。

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