第12話「深い事情がありそうだけど、ぶっちゃけ関わりたくない」
第12話「深い事情がありそうだけど、ぶっちゃけ関わりたくない」
パチン…パチン…
ラメールが花の茎をハサミで切る音が静かに部屋に響く。
切り揃えた花を、花瓶に生ける仕草は手馴れていて、普段からそうしているのがよくわかった。
(お花って…!まさか趣味!?裁縫もできて何気に女子力高い極道ってなんなん!??)
ラメールの大きい太い指からは想像もできないくらいに繊細で美しい生け花ができあがるのを、空は息を飲んで眺めた。
すると、できあがった花をラメールは空に手渡す。
「持ってけ」
「ひゃ、ひゃい…」
空は花を持ったまま固まる。
「………陸んとこ持ってけ」
「り、りくのとこ…?」
自分に花を贈られたのかと勘違いした空は、急に暑くなってくる。
しかし、何故ティエラの所にもっていかなければいけないのか?
ティエラは今、許嫁の花ちゃんに会っているはずだ。
「わぁ!キレイなお花ですー!花ちゃん喜びますー!」
「本当にキレイなのだわ!花ちゃんはお花が大好きなのよ!」
ティルとメロがくるくる喜んで、空とクリムを部屋まで案内しようと襖を開ける。
「花ちゃんって、フレサティエラの許嫁の?」
クリムが二人に問うと、「そうですー!」「そうなのよ!」と、それぞれが返事をした。
「空」
ラメールに呼び止められ、空は振り向くと、ラメールはタバコに火をつけゆっくりと煙を燻らせた。
「あいつはあんなナリだが、人より真面目で芯が通った男だ。あいつは俺らと同じ世界にいると思ってると思うが、俺にとっちゃカタギの坊ちゃんだ。お前もカタギの坊ちゃんだ。それだけは頭ん中入れとけ」
「は、はい…」
どう言う事かわからなかったが、空は頷くと、妖精に連れられて部屋を出ていった。
ラメールが空のことを「ハニー」と呼ばなかったことには気付かずに。
「………ハニーチェーロか…。早くこの抗争に勝負つけようじゃねぇか」
窓を開け、ラメール…いや、茂野 海は庭園を眺めながら、灰皿に灰を落とした。
空が妖精に案内されて、襖を開けようとすると、ほんのり線香の香りが漂ってきた。
中からティエラの声がする。
「りっくん、入っていいですかー?」
ティルが声をかけると、襖が開いた。
そして、空が持っている花を見て嬉しそうに中へと促す。
「わぁ、可愛いお花!ハニーくんありがとう!」
「いや…ラメールに持ってけって言われて…」
花をティエラに手渡すと、ティエラは仏壇に花を飾った。
「花ちゃん、タイカさん、今話した渡利 空くんだよ」
仏壇には、よく似た母娘の写真が飾ってあった。
優しい微笑みが印象的な成人した女性と、中学生くらいの活発そうな女の子だ。
線香の灰がジリジリと落ちる。
満足そうに微笑むティエラの横顔は、どこか風穴が開いたように、内側に風が染みたように見えた。
「りっくん、メロたちもお線香あげたいのよ」
「りっくん、つけて欲しいですー」
メロとティルの催促に、笑いながらティエラは線香に火をつける。
「ふわふわだから、燃えちゃうもんね」
二人の分の線香を香炉に刺すと、メロとティルはちょこんと仏壇の前に座って手を合わせた。
「空くん!」
クリムが何かを期待するような視線を向けてくる。
(そ、そうだよな…。この流れ的には…)
空は空気の重さに、こう切り出した。
「俺らもお線香、あげてもいい?」
すると、ティエラは持ってきた花よりも可愛らしい笑顔を空に向けた。
「もちろん!」
ティエラの笑顔が眩しい…。
これで男なんて、信じらんねぇ……。
空は二本、線香に火をつけると、クリムと一緒に手を合わせた。




