第11話「要塞に入っちゃうよ」
第11話「要塞に入っちゃうよ」
黒光りしたまるで要塞のような門が開くと、黒い高級車の前に黒スーツのガタイのいい男が立っていた。
「ようこそ、陸坊ちゃん。本邸まで送ります」
「うん、ありがとう」
ティエラは慣れたように高級車に乗り込むが、空の頭の中は混乱に混乱が重ね、やっぱり混乱していた。
「え!?本邸!??門、開いたよな?家じゃないのか!?」
「庭だよ。カイさんの家、庭広いんだ〜」
ティエラは空に車に乗るように促す。
メロやティル、クリムまでもがちゃっかり車に乗っている。
恐る恐る、空は車に乗り込むと、日本庭園の中を走り出す。
「すげぇ…」
普段の喧騒とは違う、穏やかな空気。
砂利の隙間を雀が数羽、クチバシでつついていた。
やがて伝統的な武家屋敷のような建物の前までくると、各々車から降りる。
引き戸を開いて屋敷に一歩踏み出すと、黒スーツにサングラスの男が両脇にならんで、一斉に頭を下げた。
「陸坊ちゃん、いらっしゃいませ!」
野太い声が木霊する。
「ここ、ラメールん家だよな…?ティエラって何者?坊ちゃん呼ばわりされてんだけど…」
空の独り言に、ティルが説明する。
「りっくんは、カイさんの娘さんの許嫁なんですー。だから、りっくんはこのお家継ぐんですよ〜」
「………は?」
ラメールの娘の許嫁…。
あれ?ティエラって女子…?いや、男だ!
でも許嫁とか早くね?
ティエラにヤーさん業が務まるように見えないし…。
「ボク、花ちゃんに挨拶してから行くから、先に案内してて」
ティエラは靴を脱ぐと、黒スーツの一人に空を託す。
「え!?俺ひとり…!?」
「僕たちもいるよ!」
クリムはそう言ったが、妖精たちがこの屋敷の黒服軍団に太刀打ちできるとは思えない。
「さぁ、こちらです」
引ける腰をなんとかシャンと伸ばし、できるだけ何でもない顔をして廊下を歩く空だが、他の黒スーツとすれ違う度に頭を下げられて居心地が悪くなる。
「お客人、いらっしゃいませ!」
空は彼らにとある共通点を見つけた。
『葉が二枚重なった家紋』のようなピンバッジをスーツにつけているのだ。
そのロゴは、確かラメールの車にも……
そう、この人たち…
(スイーツ部隊の人たちだー!)
すれ違う物騒な男たちとは反対に、廊下から見える日本庭園は静けさを孕んでいて、古き良き日本とはこう言うものか、と、遠い大正時代くらいにタイムスリップした感覚に陥る。
「おやっさん、お客人を連れて来ました」
案内役の黒服が静かに襖を開けると、ラメールの目が空たちを捉える。
黒いオールバックに窪んだ彫りの深い瞳。
ラメール時はキャラメル色の髪色に青い瞳なだけに、黒髪黒目は日本人特有の強者の威圧感がある。
極めつけは、和服…
(戦国武将かと思った!!)
ラメールの後ろにある掛け軸と相まって、空は何処ぞの殿様と対面した気分だった。




