Side:シャガ・リユーナイン
Side:シャガ・リユーナイン
「アイリス義姉上はどうした?始末したか?」
城の一室で私はアイリス義姉上を始末するように送った刺客たちの帰りを待っていた。
アイリス義姉上のそばにはいつも一人の護衛騎士がいる。手練れた護衛騎士で、敵う相手はほとんどいない。
元は孤児だったというその者をアイリス義姉上が取り立てて護衛騎士にまで育て上げたらしい。
こちらの兵を数人送った程度では、アイリス義姉上の護衛騎士にやられてしまうことだろう。
だが、数日間に渡って昼夜問わず何度も兵を送ったらどうなるか。
簡単なことだ。
いくら百戦錬磨の護衛騎士だとて疲れがたまりミスをしだす。毎日敵を警戒しているのだ。精神的にも肉体的にも参ることだろう。
アイリス義姉上についているのは護衛騎士一人だけなのだから。
アイリス義姉上の他の護衛はすべて私の手に落ちた。法外なお金を提示したらすぐに寝返ってくれたのだ。
護衛が数人寝返れば、アイリス義姉上は他の護衛たちを信頼できなくなる。
誰が味方で誰が敵なのかわからない状態に陥る。
そして、アイリス義姉上は本当に信頼できる者のみを傍に置くだろ。だが、信頼できたとしても自衛できない者は傍には置いておかないはずだ。
アイリス義姉上はとてもお優しいからな。
自分が信頼した人物を傷つけられるのは耐えられないだろう。
だからわかっていた。
アイリス義姉上の護衛を数人こちらに寝返らせるだけで、アイリス義姉上は一番信頼をおいている護衛騎士しか傍に置かないということは。
だから簡単だった。
アイリス義姉上をこの城から追い出すことは。
赤子の首をひねるよりも簡単なことだった。
「はははっ。所詮は王位第一継承者と言っても、力もなにもないアイリス義姉上だ。アイリス義姉上の手足となる者たちを退ければなにも怖いことなどない。」
私は声高らかに笑った。
アイリス義姉上さえいなくなれば、病床の王の代わりに私がこの国の実権を握れるのだから。
「恐れながら……。アイリス王女は、護衛騎士と共に姿をくらましました。護衛騎士はアイリス王女を逃がし、瀕死の重体を追いながらも残りの兵を撒いて逃亡をしたとのことです。」
「なにっ!しぶといな。だが、まあ、あの護衛騎士が瀕死の重体ならば、アイリス義姉上だけで生き延びることも、王都に戻ってくることもできないだろう。父上には、アイリス義姉上は不慮の事故で死亡したと伝えろ。」
「はっ……。」
私は、それだけ言うと報告に来た兵を下がらせた。
アイリス義姉上の消息はわからない。
だが、追い詰めた先は国境付近の森の中だと聞く。
護衛騎士が瀕死の重体を負っていれば、アイリス義姉上も森の野生動物に襲われて亡骸すら残らぬことだろう。
私は自分が王になることを確信して、勝利の笑みを浮かべた。
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