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「……バッファウモー?バッファモウモウじゃないのですか?」
ミトラーさんの口から出た「バッファウモー」という言葉に首を傾げる。
色は違うけれど、特徴からバッファモウモウかと思ったのに。
というか、ミトラーさんは小さな袋から大きなバッファモウモウ……もとい、バッファウモーが出てきたことに驚いたのではないのだろうか。
ミトラーさんの驚き方は小さな袋から大きな獣が出てきたことよりも、バッファウモーに驚いたような気がした。
「……ば、バッファウモー。これはっ、バッファウモーじゃあないか。バッファウモーだよ。バッファウモー!!バッファウモーなんだよっ!!!」
驚いていたかと思えば急にミトラーさんは興奮をしだした。
一体全体何がどうしたというのだろうか。
「あの……バッファウモーだったとしたら、なぜそんなに興奮なさるのでしょうか?」
「だって、バッファウモーなんだよっ!!バッファウモー!!あ!の!バッファウモーだよ!!」
「え、ええ。私にはよくわかりませんが……。」
どうしよう。ちょっと困ったなぁ。
と、辺りを見回してみると、ミトラーさんの叫び声に街の皆が集まりつつあった。
「うそだろっ!?あれを見ろよ!!」
「まあ、バッファウモーだわっ!」
「うへぇ~。バッファウモーじゃないか。オレ、始めてみたよ。」
「んだんだ。バッファウモーだぁ。」
「すっげぇなぁ。バッファウモーだとよ。」
「しかも、首がスパッと切れていやがる。すげぇなぁ。」
「バッファウモーってすっごく固いんだろう?斧でも首を切ることが出来ねぇって聞くんだが……。」
「ああ、どうやって首を落としたんだろうなぁ。」
街の人も皆バッファウモーを知っているようです。
知らなかったのは私だけなのでしょうか。
それにしても、バッファウモーが固い?斧でも首が切れない??
そんなことはあり得ません。
だって、剣でサクッと切れちゃいましたから。
きっと、その斧がさび付いていたことが原因でしょう。きっと。
「バッファウモーだっ!!領主様を呼べーーーっ!!ユルーリット辺境伯にご報告をせねばっ!!」
その中の一人が声高らかに叫びました。
「えっ……?ユルーリット辺境伯を呼ばなきゃいけないことなの?バッファウモーを狩ったことって……?」
ユルーリット辺境伯に報告をしなければならないという声を聞いて、私は驚いて心の声が思わず漏れ出てしまった。
もしかして、バッファウモーって狩ったらいけない獣だったのかしら。と心配しながら。




