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パチ屋へ行こう

作者: 幽霊配達員

 この頃、心の中で燻っている。パチンコ打ってみたいな、と。

 打てば負ける事なんてわかっているのに。一歩踏み込んでしまえばズルズルとのめり込んでいき、溺れてなお引きずり込まれていくとわかっているのに。ソレでも興味を失せさせる事ができない。

 もしもコレがただ、遊んでみたいなって気持ちなら問題はないのかもしれない。遊びが目的ならアプリで買って画面越しに眺めていた方が健全だろう。

 玉が飲まれていく様を確認し、コレが現実だったら一体どれほどのマイナスだろうと考えるとギャンブルなんて手をつけられなくなるはずだ。遊びだから注ぎ込んでも痛くないと。

 しかし悲しいかな、金が欲しい、勝ちたい、大勝したいと欲望が渦巻いてしまっている。

 超えてはいけない境界線に限りなく近付いているのがわかってしまう。

 自分が負けて止まれるような性格じゃないのも熟知している。

 本格的な賭けはやった事ないが、遊びのギャンブルならやった事はある。

 別に身内同士の麻雀なら大したことはない。負けて悔しいとか、損したとか思わないから。負けようが楽しめればヨシの精神が完成しているし、過程や会話が大切な遊びだから問題ない。

 けどもアプリの麻雀ではそうはいかない。段位というものがあり、負けると下がってしまう事から負けを極力避けようとする。そしていざ負けてしまったときに、取り返そうと注ぎ込んでは大敗して昇格、絶望に打ちひしがれてなんで続けてしまったんだろうと悔やむ。

 つまり負けを重ねてブレーキが壊れるってサガを持っている。

 だから留まらなきゃいけないのに、くたびれた財布をポケットに、自転車へ跨がり暗くなった道を駆けていた。

 焼き肉屋の隣を走るとタレと炭の匂いが鼻をくすぐり、胃袋へ肉のイメージが叩きつけられた。もう夕食食べたはずなのに、腹減ったと訴えてくる抗いようのない匂いだ。

 昼間通るときは感じなかったのにな。やはり飯時には破壊力を発揮してくれる。

 信号を渡ると、普段素通りするホビーショップが目についた。

 とっさにUターンをして店内を冷やかしに入る。ずっと気になってはいた。

 サッと店内を回ってスッと出た。ゲームソフトの買い取りもやっている。Switch2を手に入れた暁には、Switchやそのソフトを売っ払ってしまおうと決意する。

 勿論ソフトはダウンロード用のヤツをセールのタイミングで買い直すつもりだ。用は物理的な積みゲーを減らしたいだけ。

 ついでにSwitch2はあぶく銭ができたときにでも狙いたいなと思っている。

 寄り道を挟みつつ目的にパチ屋へ到着。店外が静かなもんだ。防音の凄さが窺える。まるで現世をシャットダウンしているかのように、ピシャリと自動ドアが閉まっている。

 開いて入ればソコは楽園か、はたまた地獄の入り口か。

 掃除の行き届いた店内に、思ったより控えめの遊戯音。夜とは言いつつも平日なので、客の入りはまばらといったところか。

 島の端に設置された看板には、一台ずつ丁寧に何の機種が設置されているか描かれている。

 非情にわかりやすいし、有名なアニメタイトルもちらほらある。ただ素人目にはどれが狙い目なのかはサッパリだ。

 暫く台を見て回っては、看板に目を落とすのを繰り返す。

 この看板、台を入れ替える毎に作り変えてるって事だよな。毎回デザインとか考えるとなると、お店の人も大変だろうな。

 どうでもいい事を考えながら、足は自動ドアを目指していた。

 やはり千円入れるのがどうしても勿体ない。それに手持ちがたったの千円ではやはり勝負にはならないだろう。今日もまたパチ屋を冷やかして帰路へつく。冷やかしはコレで三度目だ。

 まだギリギリ大丈夫。まだ……

 冷やかしてる時点でかなりの淵まで来ているから危ないのには違いないけれども。

 自動ドアを潜ると酒の臭いが鼻につき胃袋にボディブローを仕掛けてきた。不意の一撃に思わず晩飯を吐いてしまうかと思った。

 まさか店を出るときに腐臭を感じさせられるとは。

 パチ屋とは底の知れない場所であった。

ホントは財布をすっからかんにした結果を書くつもりだったんですが、いかんせん台へお金を突っ込む気力を持てませんでした。

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