表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

『オオカミの頭目と速記の仕事』

作者: 成城速記部

 オオカミの頭目が、一族を集めて言いました。これからは、誰が捕まえた獲物もみんなで分け合おう。すばしこい者だけが腹を満たし、老いた者が飢えに苦しむというのはよくない、と。

 これには、反対の声も上がりました。このやり方では、すばしこい者が、まじめに狩りをしなくなる。そうなったら、今よりも飢えてしまう、と。

 オオカミの頭目は、つけ加えました。狩りもいいが、みんなで速記を始めよう。速記は特殊技能だから、報酬も高い。その報酬をみんなで分け合えば、今よりも総収入が上がるはずだ。その報酬を分け合えば、腹いっぱいに食べられるはずだ、と。

 頭目がそういうのなら、と、この仕組みが動き出しました。

 狩りに出る者は激減しました。危険が伴う狩りよりも、安全な速記、格好いい速記、尊敬される速記に流れたわけです。

 ところが、速記の収入は、思ったより上がりませんでした。調べてみると、速記の収入というのは、会議などに出席して、速記を書いて、文字に起こして、結果として幾ら、というふうに値段が決まるのですが、どうしても、文字に起こせない箇所が出てきます。それが、飛ばし読みしてもいいような部分なら、問題ないのですが、名詞が抜けたりすると、意味がわからなくなってしまうので、そうなると、報酬が引かれてしまうのです。

 みんなで速記の仕事を分け合うと、どうしても、完成度が下がります。完成度の低い仕事の報酬は、必然的に下がります。それを嫌って、内緒で仕事を受注する者が横行し、結局、もとの状態に戻ってしまったのでした。



教訓:連帯責任は無責任。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ