第89話 ヒロインたち、腹割って話す② ※温泉回
「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」」
楓乃、シルヴァ、悠可の恍惚とした声が重なる。
三人は今、神奈川県横須賀市方面の日帰り温泉にやってきていた。
着の身着のまま家を飛び出し、電車を乗り継いで一時間半ほどかけての到着だった。
海沿いの景色が美しい露天風呂に、三人並んで入浴している。
「これは……はぁぁ。生き返るねぇ」
楓乃がほっこりとした笑みを浮かべながら言う。頬がすでに赤みを帯びている。
「確かに。……いいわねぇ」
長い銀髪を頭上にまとめたシルヴァが、目を閉じながら言う。
「ですですっ、本当最高ですっ!」
悠可はぐっと両腕を伸ばし、元気いっぱいに声をあげた。
露天風呂の上には、真っ青に晴れ渡った空が広がっている。海も静かで風も穏やか。今日は絶好の露天風呂日和と言えた。
「「「はぁぁぁぁ」」」
三人は穏やかなときを味わうように、もう一度深く息を吐いた。
白いにごり湯の中、全員が夢心地のように表情をとろけさせている。
「……楓乃、怪我は大丈夫?」
首から下までどっぷりと湯船に浸かったままで、シルヴァが楓乃に声をかけた。光沢のある銀髪が、湯の表面の輝きと共に光っている。
「ありがと。大丈夫だよ」
「そ」
シルヴァに笑みを返しながら、楓乃はあばらを撫でる。痛みはなく、温かい湯が全身の疲れや不調を吸い取ってくれるような心地がした。
「楓乃姉さま、完全に完璧に、状態は万全ということですね?」
「え? うん、もう骨も完治して痛みもないよ」
「それでは……」
重ねるように楓乃に確認をした悠可が、おもむろに場所を移動した。すすーと湯船に入ったまま移動して、楓乃とシルヴァの前に陣取る。
「すぅ……」
「「?」」
悠可はざばっと上半身だけを湯から出すと、大げさに肩で息を吸った。
白く瑞々しい肌と、小ぶりで可憐なふくらみがあらわになる。
そして――
「おっぱい星人白金悠可、いざいきますっ!!」
「「……へ?」」
――素っ頓狂な宣言をした。
楓乃とシルヴァは妙な怖気を感じる。
「え、ちょ、悠可ちゃん!?」
「な、悠可、なにやってんだし?!」
「お二人の美しく可憐な裸体を見て、わたしハァハァしてたんですっ! もう我慢できませんっ!!」
次の刹那。
一気に距離を詰め、悠可は楓乃とシルヴァの裸体へと絡み付いてくる。その滑らかすぎる動きは、まるでタコのように見えた。
「悠可ちゃ、んっ……ふざけ、ない……っ、で!」
「ふざけてないですっ! 真剣と書いてマジですっ!! 楓乃姉さまのぷにぷにおっぱい成分を定期的に摂取しないと、わたしは生きていけない身体になってしまってるんですっ!」
わけのわからない論理を語りながら、悠可は楓乃の陶器のような肌に手を滑らせる。
楓乃は抵抗を試みるが、思いのほか力強い悠可の腕力によってそれは無に帰す。
「ん……ゆう、かちゃん……だ、だめ、だってば……っ!」
「はぁぁ。楓乃姉さまのお胸、なんと美しくハリツヤのあることでしょうっ! 手の握力がなくなるまで永遠に、握って緩めてを繰り返したいという暴力的な衝動に駆られますっ!」
もみもみもみもみ。
「ん、んぁっ!!」
楓乃の肢体を撫で回すように、器用に右腕を暴れさせる悠可。特に執拗な愛撫を受けている胸が、興奮からか淡い桃色に染まる。
それははげしくもやさしい揉みっぷりだった。
「……も、もうやめて……?」
「あぁ、蕩けきった楓乃姉さまのお顔……なんて色っぽいのでしょうっ! まるでジ◯ンのトラップがごときセクシーさです……っ!!」
懇願するような楓乃の顔に、興奮を色濃くする悠可。
鼻息がもはや元トップアイドルのそれではない。
ふんすふんす。
「い、今のうちに……っ!」
「シルヴァちゃんっ! 逃しませんよっ!!」
「ぃゃんっ!?」
おっぱい星人と化した悠可の攻撃(?)が楓乃に集中しているうちに、逃亡を図ろうとしたシルヴァだったが、目ざとく動きを察知した悠可の左腕によって、いとも簡単にホールドされる。
「ひっ、んぁ……や、やめっ!」
「あぁぁ、シルヴァちゃんのとろポヨおっぱいが、わたしの腕を逆愛撫してきますっ! こんなにけしからんお胸には、師匠直伝タコさんアームでのお仕置きが必要ですっ! えいえいっ!!」
むにむにむにむに。
「あん! そこっ、だめぇ!?」
タコの触手がごとき軟体な動きを示す悠可の左腕が、シルヴァの存在感ある双丘に襲いかかった。
振動とソフトタッチを駆使したタコさんアームに我慢できず、身を仰け反らせてあられもない声を上げるシルヴァ。
それははげしくもやさしい揉みっぷりだった。
「「はぁ……はぁ……も、もぅゆるして」」
「ふ、二人とも……なんて艶めかしいのでしょうっ!!」
こうして、楓乃とシルヴァは突如として襲来したおっぱい星人(悠可)に、身体を蹂躙されてしまったのだった。
◇◇◇
「……ちなみになんだけど」
湯から出てビーチチェアに座り、風に当たって熱を冷ましていたとき。
快楽のタコ壺(?)からいち早く復帰したシルヴァが、胸元をタオルで隠しながら話し出した。
右隣に腰掛ける楓乃はまだ肩を上下させ、息を整えている最中だった。
「さっき『師匠直伝の~~』とかなんとか言ってたけど、まさかアンタの師匠って……」
シルヴァは嫌な予感をいだきながら、左隣の悠可へ向けて言葉を紡いだ。
すると。
「はいっ、ツッチーさんですっ! 一緒にお風呂に入ったときに、身体で覚えさせられましたっ!!」
「ツッチー、余計なことを……!」
シルヴァは帰宅したら、真っ先に説教することを決めた。
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