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第68話 誕生日パーティー、第二部


 玄関でのやり取りを終え、俺と女性陣はリビングへと移動した。


 街に出れば誰もが振り返るような美女三人がドレス姿で、自分の目の前で楽しそうに笑い合っている。

 その景色を眺めていると、改めて浮世離れしているような感覚になった。


 この美女三人と、同じ屋根の下に暮らしているなんて……俺、天国行っちゃったののかな?


「お帰りなさい、京田さん」

「あ、ツッチーさん! いらっしゃってたんですね」

「ええ。雇用主の記念日ですから、雇われている身として出席は当然です」

「そんな。対等と思ってくださいよ」

「ふふ、冗談ですよ。本当、京田さんは真面目ですね」


 リビングでは、ツッチーさんがきびきびとなにやら準備をしてくれていた。

 さすがにツッチーさんはドレスなどではなく、Tシャツとワイドパンツに上着を羽織ったラフなスタイルだ。


 色々と仕込んでおいてくれたのか、長いリビングテーブルが、豪勢な料理やテーブルクロスなどで彩られている。

 なんで女性ってこんなに飾り付けとかが上手なのでしょう!


「これ、私からのプレゼントです。あまり時間が取れず、こんなものしかご用意できなかったのですが」

「おわぁ、日本酒ですか! ありがてぇ!」

「私が好んで飲んでいるものです。飲みやすくてすいすいいけてしまうので、飲みすぎにご注意ください」

「美味しい日本酒あるあるですねぇ」


 箱に入った日本酒を受け取り、俺は深く頭を垂れる。

 あぁ、早く飲みたい! 


「他にもたくさん、プレゼントが届いてますよ」

「え?」

「勝手ながら、私の方であちらにまとめておきました」


 ツッチーさんに促された方を見ると、包装されたいくつかの箱が積み上げられていた。え、まさかあれ全部、俺へのプレゼント!?


「株式会社Dイノベーションの海富様から一点、『SEEKs(シークス)』の皆様から一点、海外からのモノも一点ありました。差出人は灰村さんでした」

「うぅ……皆さん、なんてできた人たちなんだ……俺なんかの誕生日を、ちゃんと覚えていてくれたなんて」


 集約してくれたのか、ツッチーさんが淀みなくプレゼントの送り主を伝えてくれる。


 皆さん、本当に、マジで、ありがとう……恐縮っす。

 どこかでちゃんと、お礼をしないと。


 海富先輩にも、SEEKsの皆さんにも、灰村さんにも、必ず。


 あとツッチーさん、マジでハイパー気が利く。すごすぎっす。 


「それじゃ、全員揃ったところで……さっそくはじめましょうか!」

「「「「はーいっ」」」」


 皆、それぞれにドリンクを手に取り、笑顔で着席する。

 そして、楓乃さんの合図で全員がグラスを掲げた。


「大地さん、誕生日おめでとうございます!」

「大地、マジおめでと」

「おめでとうございます、大地さんっ!!」

「あ、ありがとうございます」


 楓乃さん、シルヴァちゃん、悠可ちゃんがそれぞれ笑顔を向けてくれる。

 華やか極まりないゼ……!


 差し出されるグラスそれぞれに、こつんと乾杯していく。


「ありがとうございます!」

「まだアタシは酒飲めないけどねっ」

「今日はわたし、日本酒に挑戦したいですっ!」


 丁寧に乾杯をする、たったそれだけのことを、三人は本当に嬉しそうにしてくれる。その笑みを見て、俺もどんどん嬉しくなる。


「いただきます!」


 乾杯のあとは、各々で料理を堪能し、おしゃべりして、あっという間にほろ酔い気分となっていった。

 ツッチーさんにもらった日本酒も、癖がなくて本当にすいすい飲める。水みてぇだもの。


「俺ももう三十歳、かぁ……」


 改めて、目の前にある光景を眺めてみる。


 相変わらず、天上の美女たちが天使の様な笑顔を浮かべている。

 俺と同じ空間で、楽しそうにしてくれている。


「……三十代は、いい人生になりそうな気がするな」


 俺は、小さくつぶやいた。

 まぁ、すでにかなり幸せ者なんですが。


 手元のお猪口ちょこを傾けて、噛みしめるように飲み干した。


◇◇◇


「それじゃ、そろそろ“アレ”、いきますか……」

「「ごくり」」


 女性陣が企画してくれた俺の誕生日パーティーも、いよいよフィナーレのイベント――『誰のプレゼントが一番か』を残すのみとなっていた。


 皆、すでにかなり酔っぱらっており(なぜか未成年であるシルヴァちゃんもノンアルドリンクでベロ酔いしている。なんで?)、テンションが若干おかしい。


「はぁ……」


 かく言う俺も、なかなかにへべれけである。

 酒気を帯びたため息が、リビングの片隅に消えていく。


 楓乃さん、シルヴァちゃん、悠可ちゃん三人のプレゼントに、俺なんかが順位をつけなければならないなんて……憂鬱以外の何物でもない。


 どうして、人は競うことをやめられないのでしょう……みんな違ってみんないいのに。


「京田さん、安心してください。私が厳正なる審査を、しっかりサポートさせていただきますので」

「ツッチーさん……」

「私に耳打ちしてくだされば、各人が結果に傷つかないよう、やんわりと柔らかい言葉に変換し、お伝えします。調整役として、ぜひ頼っていただければ」

「それは……あ、ありがとうございます?」


 そんな風にして、ツッチーさんが手厚いサポートを約束してくれるが……根本的なところでは、あんまり意味がないような気もする。


「できれば、優劣なんてつけたくないんですけど……はぁ」

「仕方ありませんよ。彼女たちがそれを望んでいるんですから」


 冷静な感じで、ツッチーさんが言う。

 かなり飲んでいたと思ったけど、大丈夫なんだろうか?


「ちなみにですけど、やんわり伝えるってどんな感じですかね?」

「一例ですが、もし大地さん的に『嬉しいけどもう一声!』というような場合は、意訳して『そんなんじゃ満足できないぜ。さぁ、生まれたままの姿になって飛び込んでこい』とお伝えします」

「それのどこが意訳じゃい!」


 ふざける気満々だぞこの人。


「それではっ、わたしからいかせていただきますっ!」

「「いぇーぱちぱち」」


 と、俺がツッチーさんの悪ふざけモードを認識したところで、元気よく悠可ちゃんが立ち上がった。

 ドレスから露出した肌がほんのり赤く染まっており、なんだろう、うん。


 要するに、えちえちです。


「えーっとですねぇ、わたしのプレゼントはと言うとですねぇ……えへへ」

「ぶふぉッ!?」


 と。

 ふわふわした感じで話し出したと思ったら、急に。


 悠可ちゃんは、ドレスを肩から脱ぎだした。


 ちーん。見えちゃったゾ。


「ダメダメダメ! 悠可ちゃん、ダメって言ったでしょ『プレゼントはわ・た・し』パターンはぁぁっ!!」

「バカ悠可ぁ! アルコールで頭やられちゃってんじゃないのぉぉ!?」


 危機的状況を見て取った楓乃さん、シルヴァちゃんが目にも止まらぬ早さで動く。

 まるでバーゲンセールに飛び込む主婦のように、一気に悠可ちゃんを取り囲み、俺の視線を遮断する。


「ふ、ふぁ? ……あぁ、わたしったら、もうっ! ご、ごめんなさいですっ!!」

「別室! 別室で着替えなさいっつの!」 

「ふあーいっ!」


 やんややんやと、悠可ちゃんの身体を隠しながらリビングを一度退場する三人。

 ふぅ……一瞬の出来事だったけど、脳裏に焼き付いて離れない。


 あの、美しい桜色の花びらが。

 ……ダンジョンで見たときよりも、何倍も鮮明だった!!


 TA()つとこTA()つゼ!!


「まさか、私が出るまでもなく初っ端で露出してくるとは……さすがトップアイドル、早着替えなどで脱ぎ慣れていますね」

「解説どーもです……」


 隣で冷静な分析を語っているツッチーさん。

 さすが、女性のおっぱいを一揉みするだけでカップ数を当てるという特技を持つ女。


「よし、こうなったら私も雇用主である京田さんのために、プレゼントを渡すドキドキ中の彼女たちのおっぱいの状態を確認するお役目を承りましょう」

「ちょっとなに言ってるかわかんないです」


 やはり酔っているのか、頭のおかしなことを言うツッチーさん。

 ここにさらに酔っている三人が絡むと思うと。


 かなり、先が思いやられるなぁ……。



この作品をお読みいただき、ありがとうございます。

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