第67話 誕生日パーティー、第一部
「「「大地(さんっ)、誕生日おめでとう(ございます)っ!!」」」
食品の買い出しから帰り、玄関を開けると。
突然クラッカーを鳴らされ、盛大に出迎えられた。
「は……はい?」
眼前には、ドレスに着飾った女性陣三人が、少し照れくさそうに立っていた。
俺は思わず後ずさり、玄関扉に寄りかかる。
す、すげぇ破壊力だ……!
「今日は九月二十八日。大地さんの、三十歳の誕生日ですよ!」
「え……そ、そうでしたっけ?」
一番身長のある楓乃さんが、一歩進み出る。
楓乃さんは大胆に肩を露出した、紺色のドレス姿だ。布地には落ち感があり、照明によって身体のラインがくっきりと浮かび上がっている。
胸からくびれ、腰からおしりにかけての陰影がエロすぎて夜が明けるまで頬ずりしてたい!
「大地、アンタまさか自分の誕生日忘れてんの? ベタすぎ、マジおっさんじゃん」
「あ、あはは……」
次はシルヴァちゃんである。
光沢がかった銀髪を引き立たせるようにか、モノトーンのゴシック調ドレスを、まるで女王のように着こなしている。
ただ、ウエストをキュッと絞るようなデザインのため、どでかいOPAがくっきりもっこりで下半身に毒である。ヘッドドレスがアクセントになっていてエモさ倍増!
「大地さんっ、三十歳はサッカー選手としては一番いい時期ですよっ! フィジカルと経験値が両立して、円熟味も出るタイミングですからっ!!」
「だ、だねっ」
今度は悠可ちゃんが、子犬のようにぽやぽやしながら近づいてくる。
悠可ちゃんは天性のアイドル性を活かした、王道のフリルドレスだ。青空をまとったような水色が、透き通るような彼女の肌によく似合っている。
しかぁーし! V字に入った胸元の切れ込みから慎ましやかなOPAが覗いており、大変けしからんっ!! お手々突っ込んじゃうでしょうが!!
あぁもうみんなしてっ!
キんレィィィィッ!
カんワェェェェッ!!
エんロカんワウィィィィッッ!!!!
……やば。
陽キャみたいにテンションが爆上ってしまった。
「じゃ、改めて――」
「「「誕生日、おめでとー!!」」」
と。
三人全員が、同時に俺に抱き着いてきた。
腰が抜けそうになり、俺はぐっと膝に力を入れて踏ん張る。
はぇぇ……女の子特有の甘い匂いと、シルクのような髪の毛が頬を撫でる。
極めつけは、柔らかく脳髄を震わせるぽよりんぽよりんなOPAの感触。
ノドの奥が、締め付けられる。
あぁ、あぁ……!!
俺、もうこのまま天国へ行ってもいい……!!
「……本当、ありがとうございます。三人に祝ってもらえて、俺……」
自分を包む甘やかな香り、熱、温もりが、胸の奥にまで浸透してくる気がする。
少し前まで、俺は自分が社会にあまり必要とされていない人間だと感じていた。
今もそこまで、社会貢献ができているかと問われれば、正直自信はない。
でも……でも。
この三人が俺を必要としてくれているなら、それでいい気がした。
「本当に……本当に、ありがとうございます」
俺は若干感極まってしまい、顔を見られたくなくて、三人に向かって深く頭を下げた。
いくら彼女たちに頭を下げても、きっとこの感謝の百分の一も伝えられないと思うけど。
「大地さん、私たちからの誕生日プレゼント、受け取ってくれますか?」
「えっ? プレゼントまであるんですか!?」
こんなに良い思いをさせてくれた上に、プレゼントまで!?
幸せすぎて申し訳なくなってきます!
「当たり前っしょ。誕生日なんだから」
「ですですっ、わたしたちそれぞれ、違うプレゼントを準備したんですからっ!」
楓乃さんに続いて、シルヴァちゃんと悠可ちゃんがキラキラ笑顔で言ってくる。
プレゼントが、三つも……!
俺、明日死ぬんか!?
「ちなみに、誰からのプレゼントが一番嬉しいか、決めてもらいますからね?」
「え?」
と。
なぜかその言葉を境に、不穏な空気が漂いだす。
ギラギラと、三人の視線が交差する。
まるでそれは、にらみ合いだ。
え、どうして選ばなくちゃいけないの?
争いはなにも生まないと思うよ?
「「「誰が一番大地さんを喜ばせるか、勝負です!」」」
あぁ……。
天国から地獄とはこのことか。
俺の額を、冷や汗が流れたのがわかった。
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