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第64話 誕プレ大作戦 楓乃編 #楓乃視点


 今日は久しぶりの、女子だけでのお出かけ。

 横浜で、シルヴァちゃんと悠可ちゃんと一緒に、大地さんへの誕生日プレゼントを買いに来た。


 相変わらず、横浜駅は人が多くて入り組んで、まるでダンジョンみたい。


 大地さんはついこの間、SEEKs(シークス)との合同任務で、新生した深淵級アビスダンジョンに潜入した。

 そこで任務中(初仕事って言った方がいいのかな?)に、失神してしまった。


 ドラゴンすら投げ飛ばした、あの大地さんが、だ。

 幸い身体に異常はなく、点滴をして一日の入院で済んだ。


 でも……すごく心配だった。

 だって、ダンジョンからSEEKsの隊員さんに担がれて出てきたとき、自分で自分の血の気が引いていくのがすごくわかったし。

 あ、倒れるって自分で思ったから、その場でしゃがんで深呼吸して、気持ちを落ち着かせた。


 ダンジョンでは絶対無敵だと思っていた大地さんが、まさか……って、そう思ったら気が気じゃなかった。


 これは後から聞いた話だけれど、深淵級でしか起こらない『迷宮変動ダンジョン・ドリフト』という現象が発生して、SEEKsの寺田総隊長が内部で大ケガをしてしまった。


 さらに極めつけは、ダンジョン・ゴーレムという岩の巨人みたいな魔物モンスターが出現して、皆の脱出を阻んだそう。

 そんな常軌を逸した相手に、仕事で疲弊した身体で大地さんは立ち向かった。


 そして――――ちゃんと、帰ってきた。


 大地さんは回復してから『はじめての仕事をしたあとだったので、精神的な疲労がたまってたみたいです。失神したのもそのせいだと思うので、あまり心配しないでください』って、苦笑いしながら説明してくれた。


 私は、その笑顔を見て、胸がきゅっと苦しくなって、なぜだか泣きそうになってしまった。

 ……病み上がりの大地さんに心労をかけちゃいけないって思って、なんとか涙はこらえたけれど。


 話を聞いただけじゃ全然、実際に大変な思いをした大地さんの苦労は想像できないし、軽率にわかったような口もききたくない。


 だけど、正直……もうダンジョンに潜ってほしくない、ってぐらいに感じた。

 お願いだから、危ない目に遭わないでって……。


 でもやっぱり、大地さんからダンジョンを取り上げるようなこともしたくない。大地さんにとってダンジョンは、一生続けていく趣味とかライフワークみたいな、もうそういうレベルのものだと思うから。


「ダメだダメだ、なに一人で暗くなってんの、私」


 かぶりを振って、頭にもたげていた嫌な気分をかき消す。

 いつまでもマイナスの感情を引きずってはいられない。すでに大地さんだって、前を向いているんだから。


 私も、切り替えなくっちゃ。

 だからこそ、今回の誕生日プレゼントは絶対喜んでほしい。


「さて、今の大地さんはなにを欲しがってるかな……」


 雑踏を抜けて、壁際に寄ってつぶやく。


 はじめは『三人で相談して買おう』ということになっていたのだけれど、あーでもないこーでもないと話し合っているうちに、『だったら誰のが一番喜ばれるか勝負!』ということになった。


 んー、そうは言ったものの、私はあまり自信がなかった……。


 シルヴァちゃんと悠可ちゃん、二人の輝きを見ていると、つくづく自分は所詮一般人なんだって、いつも痛感させられる。

 そういう気持ちになる度に、ネガティブでマイナス思考な自分が顔を出してイヤになる。


 大地さんにも、何度も『楓乃さんが必要です』って、言ってもらっているのに……はぁ、本当よくないぞ、楓乃。


 ちゃんと、大地さんがくれた言葉を信じないと。


「……大地さんから……もらった、言葉……」


 そこでふと、一つのアイデアが浮かぶ。

 私なりの、誕生日プレゼント。


 ――自分の直感を、信じてみよう。


 私は一度スマホで地図アプリを開き、横浜駅周辺の『文房具屋』を調べた。


「よし、できる限り回らなくちゃ!」


 決意表明の意味も込めて言い、私は駆け出した。

 大地さんの喜ぶ顔を、想像しながら。



この作品をお読みいただき、ありがとうございます。

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