第62話 ご褒美? ……いや、お仕置き?
「……で、アタシと悠可に言うことは?」
「ですですっ、言うことあると思いますっ!」
退院し、我が愛しの4SLDKに戻ってきてすぐ。
眼前には、金剛力士像の二対、阿吽像のごとく並び立つシルヴァちゃんと悠可ちゃん。
俺は当然の反応として、意識せず正座し、土下座の姿勢を取っていた。
夏の部屋着のショートパンツから伸びる二人のおみ足が、なんとも眩しすぎる。
これならいくらでも土下座できちゃうね!
「本当すいませんでした……」
「はぁ……まったく、大事にならなかったからいいものを。どうしてちゃんと事前に相談しないんだし」
「ごめんなさい……」
「ですですっ! ちゃんと相談してくれてたら、わたしだって一端の戦力としてお手伝いできたかもなのにっ! ていうか、あの『SEEKs』と会うなら、言ってほしかったですっ!」
「申し訳ないです……」
浴びせられる言葉の数々に、俺は土下座したままひたすら平謝りする。
最近美女に謝罪してばかりな気がするなぁ……でもネチっこいクソ上司に責任転嫁されて謝罪させられるのとかに比べたら、正直ご褒美だよね!
海外旅行から帰ってすぐ、小淵沢さんとお会いし、あまり日を置かずに深淵級ダンジョンの探索に同行させてもらったけれど、俺はこの件をしっかり二人に話していなかった。
なにもかも俺の軽率さがいけないのは間違いないんだけど……なんというか。
上手くいく保証のない仕事に取りかかろうとしているときに『俺、これからこんなことやるぜ!』みたいに堂々と宣言できるほど、自分に自信がないと言いますか。これは上手くいくな、とわかってから報告したくなる性分と言いますか。
案の定、今回は皆に心配をかけたうえ、最終的にSEEKsの皆さんにもご迷惑をおかけしてしまったわけで。
後から聞いた話だと、気を失った俺を隊員の方々が簡易担架で運び、小淵沢さんが中心となって護衛しながら、ダンジョン外まで運び出してくださったらしい。
『ダンジョンデリバリー』として依頼を請け負ったにもかかわらず、逆に運んでもらうという体たらくで……本当、自分まだまだです。
ちなみに、寺田総隊長の手術も無事成功したらしい。
現役復帰までには少し時間がかかるそうだが、あの人のことだ、すぐにリハビリを終えてまたカッコいい雄姿を見せてくれることだろう。
「で? 本当に体調は大丈夫なんでしょうね?」
「ですですっ。一晩入院しただけって楓乃姉さま言ってましたけど、どこも問題ないんですかっ!?」
今度は一転して、俺の身体を慮る二人。
このツンなままデレみが混じる感じ、中毒性あるよなぁ。
「軽い打撲ぐらいで、全然大丈夫です……点滴もしてもらったので、むしろいつもより体調がいいぐらいで……」
正座のまま、自分の状態を説明する。
一晩ぐっすり病院のベッドで寝て、ほぼ全快したと言ってよかった。
これも後から聞いた話だけれど、俺自身、どうやらダンジョン内にいる間に《超回復》を使用していたらしく、外に出た頃には身体的外傷はほとんど回復していたそうだ。無意識、グッジョブ。
「ったく……本当、世話の焼けるヤツだし」
「まったくもうです! 大地さんったらっ!!」
「申し開きのしようもございません……」
また深く頭を垂れ、俺は謝る。
そして、顔を上げると。
「んしょ」「えいっ」
と。
なぜかシルヴァちゃんと悠可ちゃんが、俺の両太ももにそれぞれ乗っかってきた。
「……え。これなにしてんの?」
「「お仕置き(ですっ)」」
「えっとぉ……」
これの……どこがお仕置きなのでしょう?
控えめに言って、ただのご褒美なんですけど?
「アンタ、『石抱き』って拷問知ってる?」
「……石田家?」
「クイ〇シー一家じゃないっつの!」
さすがシルヴァちゃん、ツッコミのキレが違う。
「『石抱き』っていうのは、簡単に言うとギザギザの板の上に正座して、その太ももの上に重い岩の板を載せていくっていう拷問。重くなってくると、ギザギザがスネをゴリゴリに痛めつけてきてヤバいんだから。時代劇とかで見たことないの?」
「あ、あーなんかわかったかも」
「その、岩の板の役割をするのがわたしたちですっ! どうですか、重たいでしょ!?」
「え、ええぇ……」
「さすがにギザギザ板はヤバすぎだから、今回は硬いフローリングで勘弁してやるわ」
言って、シルヴァちゃんと悠可ちゃんは正対したまま、もっきゅもっきゅと俺の太ももの上で体勢を整えた。
お二人とも大胆にも、太ももを跨ぐような形でもも上に着座している。
……いいのこれ? 当たっちゃってますよ? なにがとは言いませんが。
太ももをぶるぶる揺らしたくなるゼ……!
「本気できつくなったら言いなさいよね。アタシたちだって鬼じゃないし」
「ですですっ! 段々と力を抜いて、どんどん重くなっていきますからねっ、お覚悟を、ですっ!」
つーん、という感じのシルヴァちゃんと、ふんす、と鼻息荒く言う悠可ちゃん。
……ここまでカワイイとね、もうね、おじさんイタズラしたくてしょーがなくなっちゃうよね。
というわけで、俺は体の位置を直すようなフリをして、自らの太ももを少ーしだけ揺らしてみた。ぶるっとね!
「ぁんっ」「ひゃぁ!?」
一際大きい声を上げたのは悠可ちゃんである。
人の太ももの上で、なんちゅー敏感リアクション!
まったくけしからん!!
「……だ、大地アンタ、ちゃんと反省してるんでしょうね……?」
「し、してますとも」
顔を真っ赤にしたシルヴァちゃんが、疑いのジト目を向けてくる。
ツンデレ美女のジト目は最高だぜ!
「だ、大地さん……あの、その……やめて、ほしいけど……やめて、ほしくない……わ、わかんないっ」
「ぶふっ」
半ば蕩けたような表情で、目を泳がせながらボソボソとこぼす悠可ちゃん。
鼻血が、込み上げてくる……!
「いや、その、もうそろそろやめ――」
「あんっ!」「ぅく……っ!」
「っ!?」
このままではおふざけで済まなくなるな、と思い足を崩そうとしたら、その動きがお二人の大切なトコロをさらに刺激してしまったらしく、艶っぽいお声が同時に響く。
しかも、お二人とも同時に我が身にしな垂れかかってくるというおまけ付き。
うん、もう下半身が爆発しそうです。
「「は、はぁ……はぁ……っ」」
ほぼゼロ距離で、両側の耳に吐息がかかる。
しかし、二人同時に寄りかかっているような状況のせいで、俺は身動きを取ることができない。
両足を無暗に動かすと、下手したら二人が後ろに転倒して、頭を打ってしまうかもしれないからだ。
……いやこれ、マジでどんな生殺し!?
こすれて、こすって、いやこすられて!?
あれ、なにこれ、すんごいお仕置きじゃん!?
MUSUKOがMUZUMUZUのGICHIGICHIでもうツラいです!!
生でダラダラいかせてぇ!!!!
……と。
そんな感じで俺は、我が身の健康を、再確認しましたとさ。
拷問を終えて立ち上がったとき、先に立ち上がっているナニかがあったのはヒミツだぜッ!!
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