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第51話 金髪お姉さんと再会を誓い、帰国


「自分らぁ、必ずまた来んねんで! ウチも暇んなったら、すぐ飛んでく!」

「千紗都さん……っ!」


 カリフォルニア空港にて。

 人々が行き交う中、千紗都さんと悠可ちゃんが熱い抱擁を交わし、お互いの背中を励まし合うように叩いている。


 三泊四日、俺にとってのはじめての海外旅行は、あっと言う間に終わってしまった。

 初日にダンジョンに入り、プールで遊び、ゴールデンゲートブリッジを見て写真を撮り、カリフォルニアの街並みに感動し「マジでフル〇ウスじゃん!」と叫んでいたら、もう帰国便の時間が迫っていた。

 あぁ、楽しいと時間が溶けるのは本当に早い……。仕事の時間なんてイヤになるほど長く感じるのに。人生とはかくもままならぬものよ……。


「みんな、ホンマにおおきにな。また必ず会うんやで。約束やで」


 言いながら灰村さんは、一人一人と力強く握手を交わし、肩をべしべしと叩いて別れの挨拶をしている。力が強すぎるのか、挨拶を終えたシルヴァちゃんが苦悶の表情で肩を押さえている。どんだけ力込めてんのよ。


「おう、大地くん」

「灰村さん」


 最後、俺の前に立った灰村さんは、ふんす、と息を吐いて胸を張った。

 ……すっごい。

 なにがとは言わないけど、相変わらずすっごい。


「ほれ、大地くん。キミともハグや」

「え、えぇ、な、なぜ?」

「大地くん自分、ずーっとずーっとウチの乳見てたやん」

「っ!?」

「もうね、はじめてエロ本()うた中学生みたいな目しとったもん。このまま日本返したら、キミ、股間から爆発して死んでまうんちゃうかな思って」


 そう言い、手を広げる灰村さん。

 ななななにをおっしゃっているんですかこの方はこんなタイミングで。


「ほれ、ボインボインやから、体感してみぃ。後生やろうし、な? ほれほれ」


 茶化すように言いながら、灰村さんは自らの両手で、左右の胸を下から支えるようにして強調した。

 デカい、デカすぎるぞ、灰村BIGOPA……っ!!


「「「…………っ」」」


 背後から、女性陣の激しいジト目を感じる……が。

 これは別れの挨拶、また会いましょうのハグ、あくまでもフランクな、決して下心のない、健全な交流……(なぜだ、なぜ言葉を重ねれば重ねるほどウソ臭くなる!?)!!


「じゃ、じゃあ……」

「ほい、よしよし。お姉さんとこ、また来るんやでー」


 というわけで。

 あくまでも控えめに、腰を引きつつ、ソフトなハグをさせていただいた。


 う、うおぉぉぉ……

 この雲を抱きしめるような、埋まるような、とにかく至福の感覚……健全な男にとっては……毒だ!


 理性が吹っ飛ばされる!!


「皆さん、そろそろお時間です。行きましょう」


 と、そこで。

 チケットの受取などをしてくれていたツッチーさんが、冷静極まりない声を差し込んでくれた。おかげで理性を取り戻し、灰村さんから身体を離した。


 ふ、ふぅ……危うくオオカミになってしまうところだったゼ。


「おーツッチー、自分も身体気ぃつけて、元気にやるんやで。嫌んなったらウチんトコぃ」

「ありがとうございます。今は理想的な労働環境で、適切な収入をもらっているので、ご心配なく」


 灰村さんの言葉に対して、ツッチーさんは微笑んでそう返す。

 あぁ、ツッチーさんにそう言ってもらえて、良かった。


「なんや、見た感じより甲斐性あるんやんけ。気張りや、大地くん」

「いたっ」


 大笑いしながら、ばちん、と俺の肩を叩いた灰村さん。

 この人もどこまでも、明朗快活な人だなぁ。


「ほいじゃ、またな! おおきに!」


 そうして俺たちは、帰国の便に乗り込んでいった。

 灰村さんとの再会を誓って。


◇◇◇


 成田空港からタクシーに乗り、家への帰路を走る中。


「ダンジョン省に私の方から、連絡入れておきました」


 後部座席、隣に座る楓乃さんが、ふと教えてくれる。

 なんと素早い。相変わらず仕事ができる人だ。


「ありがとうございます。仕事早いっすね……」

「そ、そんなことないですよ。嬉しいですけど」


 素直に礼を言うと、楓乃さんははにかんで笑った。

 か、かわええ……。

 というか楓乃さん、まさか政府関係者にコネクションがあるとかなのだろうか?


「いえ、普通にダンジョン省公式のSNSから、DMしただけです。でも、やっぱり『新卒メットチャンネル』はダンジョン省でも話題になっているみたいで、丁寧な返信をいただきました。ほら、見てください」

「失礼します」


 言って、楓乃さんはスマホの画面を見せてくれた。

 どれどれ……


 楓乃さんは、俺のアイデアを先方へ端的に説明しつつ『SEEKs(シークス)の探索に協力させていただけませんか?』といった文面を送ってくれていた。

 それに対する、ダンジョン省のお返事は。


 端的に言うと――『一度お話しませんか?』といった内容だった。


 ダンジョン省は、まだまだ新設されたばかりの機関であるためか、SNSなどを積極的に運用し、情報提供などを広く受け付けている。

 そのアンテナに、上手く引っ掛かることができたようだった。


「先方的には、オンラインでもオフラインでもどちらでも構わないと言ってくれていますけど……大地さん的には、どうですか?」


 うかがうように、楓乃さんは俺の顔を覗き込んだ。

 この上目遣い、相変わらずの破壊力だぜ……!


 じゃなくて。


「……俺としては、やっぱり一度は面と向かって話しておきたいですね」

「ですよね! ふふ、よかった。意見が合った」


 俺が意見を述べると、楓乃さんは嬉しそうに笑ってくれた。

 くぅぅ、いちいちかわええのぉ……!


「それじゃ、私の方から返信しておきますね。日程と時間の候補日も送ってしまおうと思いますが、大地さんの都合的にはどうですか?」

「俺はいつでも大丈夫です! 楓乃さんの日程優先で投げていただければ」

「ありがとうございます」


 と、すぐに返信の文面を作りはじめてくれる楓乃さん。

 本当に、俺の周りの女性陣はハイスペックすぎる……。


「わ、すぐ返信来ました」


 と。

 どうやら楓乃さんのメッセージに、すぐに返答が来たらしかった。

 ダンジョン省の方々もさすが、仕事が早い。


「……一週間後の正午、国立国会図書館の食堂でお会いしましょう――とのことです」

「……なんで食堂?」


 こうして。

 一週間後、俺はダンジョン省の人と。

 国会図書館の食堂で、お会いすることになった。


 ……マジ、なんで食堂?



この作品をお読みいただき、ありがとうございます。

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ありがとうございます!!

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