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第48話 はじめての海外と、金髪お姉さん


「到着ーーーーっ! はぁ、長かった」

「長かったですねっ!」


 空港のゲートをくぐった第一声を、シルヴァちゃんが元気よく発する。その背に続いた悠可ちゃんが、嬉しそうに同意する。二人の様子を楓乃さんが、微笑ましいという表情で眺めていた。


 今し方、俺たちが到着したのは――サンフランシスコ国際空港。


 ご存じアメリカ、カリフォルニア州はサンフランシスコに到着、である。

 あわててググったけど、かの有名なゴールデンゲートブリッジがあり、坂の多い港町だそう。

 有名な観光スポットだと、アル・カポネなどが収監されたアルカトラズ島や、誰も一度は映像で見たことがあるあのハリウッドサインなどもあるそうだ。ぜひ見てみたい。

 あと確かフル〇ウスの舞台だよね?(俺の中では洋ドラの元祖)


 ちなみに俺は飛行機に酔い、具合が悪い。

 飛行機にははじめて乗ったんだけれど、ずっと宙に浮いてると思うと常に気持ちが落ち着かず、気分が悪くなってしまった。飛行機こわいお。


「大地さん、大丈夫ですか?」

「え、ええ……うぐ」

「無理しないで。私の肩使ってください」

「すいません……」


 宙に浮いているのだと思い続けていたら、なんだか飛行機の床が揺れているような感覚になり、ふらふらしてきて平衡感覚が狂ってしまった。何度でも言う。飛行機こわいお。


「皆さん。先方と連絡が取れましたので行きましょう。もう空港内までいらっしゃってくれているそうです」

「おっけー。ありがとツッチー」


 今回の海外遠征には、ツッチーさんも同行してくれている。

 俺が海外未経験で英語も話せずまったく使いものにならないため、ツッチーさんが色々と手続きや手配を引き受けてくれた。

 ツッチーさんは仕事で何度も海外に行っているため、手慣れたもの。もう俺は足を向けて眠れません。


「ヘーーーーーイ!! 悠可ーーーーーーー!!」


 と、そこで。

 日本語と英語の中間のような発音で、悠可ちゃんを呼ぶ声が聞こえた。空港を利用中の周囲の人がざわつく。


 声のした方を見ると。


「……っ!?」


 爆裂ダイナマイトボディの金髪お姉さんが、こちらに向けて手を振っていた。

 む、胸がとてつもなく大きい! ボーリング玉ですよあれはもはやっ!!

 もうOPAじゃなくて、BIGOPA!! ビバ、ビゴパ!!(なんのこっちゃ)


千紗都ちさとさんっ!」

「おぉ悠可ぁ。ホンマ久しぶりやなぁ! 大きなってぇ」

「会いたかったですっ!」


 金髪のお姉さんへと駆け寄り、抱擁を交わす悠可ちゃん。

 お相手は、彼女の元マネージャー、灰村はいむら千紗都ちさとさんだ。


 今回のメインの目的は、悠可ちゃんと灰村さんの再会だった。


「よしよぉし。ウチがおらんとなぁんもできひんかった悠可が、こんな立派んなってなぁ。オバハンも嬉しいよ。ホンマおおきに。」

「立派だなんて……すごくいい仲間に出会えたおかげです」

「ほな、そのええ仲間とやら、紹介してもらってもええ?」

「はいっ!」


 抱擁を解きながら、そんな会話を交わす悠可ちゃんと灰村さん。

 俺たちは自己紹介をするために、横一列に並んだ。なんて律義さ。


「こちらが、紅坂シルヴァちゃん。動画内だと『十三日の銀曜日』さんですね」

「銀髪のホッケーマスクの子か! かわええやん! おおきに!」

「よ、よろしく」


 悠可ちゃんからの紹介に頷き、千紗都さんは陽気に握手を求めてきた。シルヴァちゃんが差し出した手を、むぎゅっと握る。あのシルヴァちゃんが、押しの強さに困惑気味である。


「次は、山下楓乃さん。動画内だと『キツネドレス』さんです。わたし的、憧れのお姉さんです!」

「ほう、あの妙にエんロい子か。スタイルええねんなぁ。おおきに!」

「よ、よろしくお願いします」


 続いては楓乃さんが握手する。

 次は俺の番だ。


「で、この人が京田大地さん。動画内では『新卒メット』さんその人です」

「ふーん。なんや、思ってたんとちゃうな。もっとこうゴツい感じのメンズを想像しとったわ。それにしても、悠可の好みがこういう感じやったとはなぁ。電話する度に『大地さんが~~』『大地さんと~~』って、もううるさくてしゃーないねんこの子」

「わわっ、千紗都さんっ! 言わないでって言ったのにっ!!」


 悠可ちゃんを指でつつきながら、そんな風に言う灰村さん。ゴツくなくてすいません……。


「ま、ええわ。おおきに」

「はい。よろしくです」


 言って、俺は千紗都さんと握手した。

 近くで見ると、なおのことBIGOPAの主張がハンパじゃない。なんかもう一周回ってエロくない感じすらある。ってことは触ってもいいのかも?(なわけない)


「じゃ、最後は連絡役してくれとったマネージャーの人やんな。ツッチーやったっけ? おおきに!」

「業界内でも有名だったあの灰村さんにお会いできて光栄です。よろしくお願いいたします」

「堅っ苦しいんはなしやで、ツッチー。ウチも日本にいた頃はただの裏方なんやから、対等に仲良くしたってや」


 言って、灰村さんはツッチーさんと肩を組んだ。ちょっとツッチーさんが嬉しそうなのが可愛らしかった。ツッチーさんがどんどん人間らしさを取り戻していて嬉しい限りである。


「さぁて、ほなさっそく行こか」

「え? ホテルですか?」

「ちゃうで! 自分らなに寝ぼけたこと言うてんねん!」


 と。

 まずはホテルに行くものだとばかり思っていた俺たちに対し、さっそく段取りを無視しにかかる灰村さん。

 いったい、どこへ行こうというのだろう。


「まずはアメリカのダンジョン潜らな、はじまらんやろっ!」


 ニカっと、灰村さんは景気よく笑った。

 その言葉に、年甲斐もなく俺は――


 ワクワクしてしまった。


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